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第006章 〈入学、初授業・Ⅱ〉

2075/4/1 a.m.10:02 仮想模倣室第12ルーム


悠真と生徒たちは必死に明後の攻撃を避けていた。光弾銃から放たれる弾は、弾というより槍といったほうがいいようなサイズだ。その光槍は、まるで意思を持つように生徒たちを追う。反応速度、動体視力、瞬発力、すべてが試される。悠真は最小限の動きで回避を続けている。視界の端で、他の生徒が次々に光の槍に弾かれて戦闘不能になっていく。


(集中しろ……!)

最後の一本が放たれる。

それをギリギリでかわし、足元の床を焦がすように滑り込む。

__ピピピピ


終了の音が鳴る。


「ほう、残ったか。五分間生き残ったのは……神岐悠真、だけか。」

教官の目がわずかに細まる。


「お前、やっぱ面白ぇな。…さすがあの人の息子だ。」


悠真は息を整えながら、にやりと笑った。


「ありがとうございます、先生。ところで、あの人って、父さんについて何か知っているんですか?」 


「まぁ、いずれ教える。」


ルームから1年1組の教室に行ったのち、明後は各々の成績を発表した。

「今回、ほとんどの人が二分程度で倒れていた。今のままじゃダメダメだな。ま、それでも優秀なやつはいたよ。これから読み上げていく。


出席番号2番、天野 美由紀

出席番号4番、伊上 始

出席番号9番、神岐 悠真

出席番号12番、鈴木 舞

出席番号19番、柳田 史郎


この五名が四分以上耐えられた者だ。特に悠真は最後まで生き残っていた。みんな見習うように。」


発表が終わった後、明後先生は残りの時間を自己紹介の時間とした。一人ずつやるのではなく、各々気になる人と会話を行っていく方式のようだ。


そして、見事一位を取った我らが主人公悠真はというと。


「なぁなぁ!どうやったんだ?Aランクから5分も逃げ回るなんて!」


「ダチになってくれねぇか?あんたすごいぜ!」


見事大量のクラスメイトに囲われた、全21人のうち10人以上に。

「あはは、なんというか、まぁ訓練してたんだよ。」

何とかやり過ごしつつ、寄ってこなかったクラスメイト、特にさっき名前を呼ばれた四人の様子をうかがった、美由紀と舞の二人は女子に囲まれ、聞いたこともないような単語を使って話している。始と史郎は二人で話し込んでいるように見えた。


その日の午後、授業がすべて終わったあと――

悠真は校舎裏の人工林に足を運んでいた。訓練用の空きスペースとして整備された場所で、生徒の多くはここで自主練を行う。明日の授業は先生によれば生徒同士での1対1の戦いのようだ。

(……結局、最後まで残ったのは俺だけ。でも、あれじゃ通用しない。)

明後の攻撃を避け続けただけ_反撃すらできなかった。

勝負として見れば完敗だった。

手をかざし、小さく炎を灯す。

淡い橙色の火が風に揺れた。

(ゼロさん……俺、もっと強くなれるかな。)


「何してるの?」


背後から声がして、悠真は振り返る。

そこに立っていたのは、 昼の模擬戦で三番目に長く残っていた生徒、鈴木舞だった。


「君こそ、こんなところで何してるんですか?」

「んー、興味があって。だって君、面白い動きしてたから。」

「面白い……?」

「うん。避け方が機械みたいだった。無駄がなくて、人じゃないみたいに。」


悠真は思わず目を逸らした。


「……かもしれませんね。」


美由紀は肩をすくめて笑う。


「ま、いいけど。あたしは“風”の能力。明日、試合で当たったら手加減してよ?」


「努力はしてみます。」


「うわー、何その返し、マジで先生そっくり!」


そう言って、舞は笑いながら人工林を去っていった。


残された悠真は炎を握り、夜風の中で目を閉じた。

(もっと、頑張らないと)


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