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第023章 〈襲撃・Ⅲ〉

2075/4/8 a.m.3:39 男子寮内


悠真は助けに駆け付けた教師と合流、生徒たちの救出に向かっていた。悟さんが宿っている如意合金は教師に聖遺物使用がばれるわけには行けないのでゼロさんの破片のほうへ送り返しておいた。


「先生方!来ましたか!」

「おまえたちよく無事だったな。普通のガスマスクじゃあいつらが使う催眠ガスを防げないはず。」

「たまたまYAMOHA社の製品を持ってたんですよ。」

「そうか、あそこの商品は質がいいしな。」


とりあえず教師の一部が地下階層、悠真は残りの教師とともに1階から順番に上っていき、生徒を保護していく。夜なせいもあってか、1から3階の住居ではない施設にいた生徒はごく少数だった。そこのゴキブリはすでに引いており、保護出来た生徒は一階で教師4人がさらなる攻撃に備えて守ることとなった。


「先生、3階の生徒も確認できる限り、全て保護出来ました。」

「よし、では次の階へ。」


悠真の言葉に教師が答える。


「気を付けてください、次からはゴキブリが出てくるはずです。」

「なるほど、全員、警戒を最大に。四階からは居住区だ。」


教師の号令とともに、悠真たちは階段を上がる。

空気が、三階までとは明らかに違っていた。


__静かすぎる。


足音だけが、やけに大きく響く。


「……おかしいな」


白斗が小声で言う。


「数分前まではうじゃうじゃいたのに…俺たちが倒した個体の死体もない。よく考えればさっきまでの階層も死体がなかった。」


眠った生徒たちはいるし、戦闘した跡も残っているが、悠真と白斗が焼いたり凍らせたりしたゴキブリの死体はまったくなかった。


「今は生徒の保護を急ごう。お前たちは五階へ行け。加藤先生、杉山先生、残ってもらえますか。ここにいる生徒を一階に運びましょう。」

「「はい、高橋先生。」」


三人の教師と別れ、残りの教師と悠真は五階へ向かう。

しかし、五階、六階と上がっていってもゴキブリの姿はなく。一階へ生徒を運んでいた教師たちとも合流した。


「そっちはどうだ?」


教師の一人が地下組と連絡をとっている。


「何?巨大な結晶の鳥がゴキブリの死体を吸収した後、影に逃げこんだだと!?生徒たちは無事か!?」


どうやら何かいたらしい。向こう側の教師によると教師は生徒は無事のようだが。教師の表情が険しくなる。


「……巨大な結晶の鳥? 初耳だな、今回の襲撃で確認あされてないよな?」

「はい。そのようなものはありま_」


その言葉の途中で、轟音が鳴り響く。


「っ!」


悠真が反射的に後ろへ下がる。

次の瞬間、廊下の壁の一部が何かによって引き飛ばされる。

割れた窓のガラス片が雨のように降り注ぎ、非常灯だけが赤く点灯する。


「伏せろ!」


「なっ……!」


現れたのは体長3m近くの巨大な水晶の鳥。全身が青く輝き、透き通っている。その中央には心臓に見える異様な黒い破片があった。



「……これが、結晶の鳥……?」


そして、それは全身からまばゆい光を発した。


「ッ!眼が!」


周囲の全員が一瞬視力を失う。

その隙に結晶の鳥は爪で悠真と白斗を掴み、飛び去った。


「おわぁ!?」

「まて!生徒を離せ!」


教師たちが攻撃を仕掛けるが、全てよけられてしまった。


「ぐ、離せ!」


悠真と白斗は結晶の取りに攻撃するが、効果はいまいち薄く、弾かれてしまう。

結晶の鳥は高度を上げる。

夜の闇の中、男子寮がみるみる小さくなっていく。


「くそっ……!」

「悠真、こいつ……やはり狙いは俺たちか!」


白斗の言葉通りだった。

爪は正確に二人をとらえ、他の生徒には見向きもしなかった。


(影、奇襲、それにゴキブリの回収!?俺たちは…)



思考がまとまる前に、空気が裂けた。


バシュン!パリャン!!!


耳鳴りとともに、結晶鳥の右翼が爆ぜ飛ぶ。


「――ッ!?」

「HYUUUAAAAA!」


鳥が悲鳴のような金属音を上げ、空中で大きくバランスを崩す。

その瞬間。


夜空に、一つの人影が立っていた。

全身を覆うのは黒と銀の装甲。

人の形をしているが、明らかに人間ではない圧力。

煙を上げている銃をこちらに向けており、それで結晶鳥の翼を打ち抜いたのだろう。


「……回収対象を確認」


低く、無機質で、それでいて聞き慣れた声。


「――悠真様、日向白斗。」

「え……?」

「この声……!」


次の瞬間、

その存在は音もなく距離を詰め、結晶の鳥の頭部を掴んだ。


「拘束装1号、2号、3号解放、制圧を開始します。」


全身が赤く輝く。

握力だけで、結晶が軋み、砕ける。


「な、何だ……!?悠真、俺の名前も知っていた?お前の知り合いか!?」


結晶鳥は頭を再生させ、必死に地上、影へ逃げようとするが、

ゼロはふくらはぎ辺りから釘のようなものを抜き、結晶鳥へ投げる。


「GYAAA!!」


釘は的中し、結晶鳥は空間ごと固定されたように急停止する。


「逃げられませんよ。」


ゼロの右腕がパカリと開き、内部から日本刀のようなものが飛び出す。


「万象一切切り裂き尽くせ、村正!」


村正、聖遺物であろう日本刀は血を思わせる赤色にそまり、怪しい雰囲気を放つ。


「GRRRAAA!」


しかし、結晶鳥は体から光線を放ち、ゼロを迎え撃つ。


「面倒ですね。」


村正で光線を弾く。


「SHAAAHAAA!!」


結晶鳥は悠真と白斗をゼロの方向へ投げる。


「おわあああ!」

「ぐぅ、くそ!」


ゼロはとっさに二人を受け止めるが、そこへ光線が飛んでくる。ゼロは何とか光線をよける。


「悠真!俺が飛べるもの出すからそれに乗れ!」

「わかった。ゼロさん、俺たちを離して!」

「はい。」


ゼロが二人を離す、白斗は巨大な氷の鷹を召喚する。


「掴まれ!」


悠真は何とか白斗の手をつかみ、氷の鷹に乗る。


「お逃げください。こいつは私が相手します。」


ゼロの声は淡々としていた。


「ゼロさん……!」

「心配は不要です。この程度の相手、すぐに倒しますよ。」


その言葉と同時に、ゼロの背部装甲が展開する。

バシュン、と空気を裂く音。

黒銀の装甲の隙間から、赤く輝く推進光が噴き出した。

「行くぞ白斗!」

「ああ!」


凍の鷹が翼を広げ、一気に高度を下げる。


「GRRRAAA!!」


結晶鳥が咆哮する。その体は周辺の光を吸い込み始める。

ただでさえ薄暗い夜空が、瞬間的に暗転した。


次の瞬間。

眩い光線が無差別に放たれる。


「うわぁ!」


そのうち数本が悠真たちのほうへ撃たれるが、白斗がぎりぎりで躱す。


「全力で逃げるぞ!」

「白斗、回避に専念してくれ、よけきれないものは俺が相殺する。」

「分かった。」


二人は逃走をつづけた。


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