第021章 〈襲撃・Ⅰ〉
2075/4/8 a.m.3:28 学校正面入口
「ここが能力訓練学校か…」
そこには奇妙な大小二人の人物がいた。
「今回の襲撃が成功すれば、貴重なサンプルを2つも手に入れられる。」
「本当にここでいいのか?ここにはあの最強の時間系『八雲天貴』がいるんだろ?」
「いいんだ。今回はあくまでサンプルの獲得とネクロノミコンの奪取が目的、しかも仕込みは事前にしてある。」
「本当に用意周到だなぁ、うちのボスは。」
二人のうち背の高いほうが学校のバリアに歩み寄る。
「さて、食いつくさせてもらうぞ。」
その手がバリアに触れる。
次の瞬間、バリアが消失した。
-2075/4/8 a.m.3:29 職員室-
襲撃が始まる少し前、部屋の隅の影が、わずかに濃くなっていた。
「山田先生。なんか嫌な予感がします。」
「私もです。佐藤先生。」
そんなことを話している二人は夜勤の教師、山田誠一と佐藤健である。
数十秒後、その違和感は警報となって学校全体を揺らすことになる。
[緊急L3事態発生、外装バリアの消失を確認、端末の指示に従い、速やかに行動を開始してください。]
「なんだと!?」
「警備員は?連絡できますか?」
山田先生がバリアを管理している警備員のほうへ連絡を入れる。
が、繋がらない。
「ぐ、できません!」
「…もう死んだでしょう。校長へは繋がるか?」
「校長はまだ調整をしている頃でしょう。少なくともあと30分はかかります。」
「校長がいない間を狙ってきた、ということでか…」
「だったら、私は敵の確認に行きます。山田先生は生徒の保護を!」
「わかった。」
二人が職員室から出ようとしたとき、影が揺れた。
「はぁ~い、お二人がたぁ♡」
二人の背後の陰から人型のバッタのような怪物が飛び出す。
「な!」
即座に振り返った山田先生の喉を鎌のようなものが切り裂く。
「あ~らら、死んじゃった。」
「お、お前!何者だ!」
「私?そんなことどうでもいいでしょ。それより戦おうよ!死ぬまでさぁ!アハハハハ!!」
「狂ってやがる…」
佐藤先生が能力を発動させる。
「ラット!」
佐藤先生の周辺から無数のネズミが現れ、バッタ人間に襲い掛かる。
「ネズミ?そいつは猫の大好物だよぉ…黒ぉ!!」
影が再び揺れ動く。なかから猫耳セーラーの少女、黒が現れる。
「伊那子ちゃん、そいつ、君だけでも処分できるでしょ?私は影の操作で忙しいんだから。」
「ごめ~ん。こいつ弱そうだから。興味なくしちゃった。どうせランクBに満たない偵察型でしょ?」
ネズミはバッタ人間にまったくダメージを与えられていない。
「な、なめるなよ!襲撃者!」
「だから弱いって言ってるじゃん。」
鎌が再び振り下ろされる。佐藤先生の首が飛ぶ。
ドサ
「あれ、もう壊れた?」
バッタ人間、伊那子が鎌をしまう。
「あーあ、結局一人で殺しちゃったじゃん。呼ばれたから来たのに。」
「ここまで弱いとは思ってなかったもん。」
「おい!大丈夫か!山田!佐藤!」
「あ、新手。」
二人の前に志島明後が立ちはだかる。素の身にはパワードスーツを纏っていた。
「あの雑魚二人?もう殺したけど。」
「そうか、死ね。」
明後が二人へ光弾ライフルを向ける。
「ちょっとは骨がありそうね。黒、もう帰っていいわよ。こいつは私が一人で楽しむから♡」
「はいはい、負けないでねぇ。」
伊那子が構えをとる。その手にはカマキリの鎌のようなものが現れ、背中からは蜘蛛の足のようなものが四本生える。
「かかって来いよ虫野郎。」
「だれがインセクターだってぇ!?」
明後は引き金を引き、光弾を発射する。伊那子はそれを鎌で弾こうとするが、鎌が光に触れた瞬間、凄まじい勢いで鎌が吹き飛ばされる。
「なんて衝撃力!」
「まだまだ行くぜ。」
続けざまに光弾が放たれる。伊那子はそれらを寸前でよけ続ける。
「道具にばっか頼ってんじゃないわよ。」
「あいにく能力が戦闘向きじゃないんでね。」
伊那子が隙を見て明後へ接近する。
「もらった!」
蜘蛛足を突き刺す。
しかし、その攻撃は明後の能力によって防がれる。
「バリアか!」
「ご名答、だがこの距離なら外さんぞ。」
伊那子は蜘蛛の足と両腕を合わせ、防御の姿勢をとる。
しかし、そこへ打ち込まれるのは光弾ではなく。
「うらぁあ!」
バギャシャン!
丸太のような足が振り下ろされる。
蜘蛛の足が弾け、腕の装甲が砕ける。
「ぐおあ!」
「さらにもう一発!」
防御が割れたところへ回し蹴りを叩き込む。
「うはぁ!」
伊那子は吹き飛ばされ壁に激突、崩れ落ちる。
「さて、目的を語ってもらおうか。」
明後が歩み寄る。しかし、
「ぐふぅ、グ、黒ぉぉぉぉ!」
影が揺れ動き伊那子を呑み込んでいく。
「覚えてろ、次は潰してやる!もっとももうすぐで目的は達成できそうだけどね。」
明後は光弾を打ち込むが、影が一歩速く伊那子を回収した。
「逃げられたか。」
明後は端末を取り出し、他の教師へ連絡する。
「敵の推定Aランク一人を逃した。そいつは山田と佐藤を殺している。特徴はバッタ人間、見つけ次第周りの生徒を守りながら逃げろ。」
『『はい』』
死んだ教師たちの死体を一瞥する。
「さて、追うか。」




