第019章 〈冥界狼王・Ⅱ〉
2075/4/6 p.m.3:48 男子寮仮想ルーム
悠真の螺旋突・回を受けた始は倒れていなかった。
「感で腹に骨を…!」
間一髪で防御した始はさらに骨を動かし悠真の腕を捕まえる。
「捕まえたぜ!」
「まずい。」
ドガァン!!!
再度大剣を振り回し、悠真を殴る。
「残念だったな。バーチャルと割り切ればこれぐらい、どうってことねぇぜ!」
悠真は痛覚を我慢して自分の腕が壊れる覚悟で拘束を引きちぎり、転がりながら避けた。
「無理やり引きちぎりやがったか。」
「なぁ始、らちが明かねぇ。こうなったら必殺技のぶつけ合いで決着付けようぜ!」
「うっしゃ!乗ったぜ!」
二人は互いに構えをとる。悠真は右足に圧縮火炎を纏い、回転を開始させる。始は大剣を投げ捨て、全身の骨鎧を膨れ上がらせる。さらに骨の触手を複数本生やす。
「火炎ノ纏・螺旋脚!!」
「鎧骨・殲滅戦車!!」
悠真は跳躍し、突撃してくる始を蹴る。二人の力が拮抗する。しかし
「こっちはまだ攻撃できるぜ?」
始は骨の触手を悠真に突き刺す。
「何か忘れてないか?」
「なんだと!?」
触手が到着する寸前、悠真は呟く。
「爆雷」
「まさか!!」
火炎突をうけた腹に爆発が生じる。
それにより始がバランスを崩す。
その巨体が、月光の下で大きくよろめいた。
「ぐ、あああっ!」
複数仕掛けた爆雷の衝撃が腹部内部で連鎖的に弾ける。骨装甲が内側からひび割れ、装甲の一部が夜空へと砕け散った。
「しまっ――」
悠真は着地と同時に体勢を立て直しす。
「今だ!」
右脚にまとっていた火炎が、さらに回転数を増す。
「弾け飛べぇ!」
渦を巻く火炎の蹴りが、始の胸部装甲へと叩き込まれる。
ドォンッ!!
衝突の衝撃で地面が抉れ、月夜の仮想空間に粉塵が舞い上がった。
「ぐ、は……!」
始が後方へ吹き飛び、数回転したのち、地面に仰向けで倒れる。
骨鎧は解除され、始の姿は人間のものへと戻っていた。
[伊上 始、行動不能により神岐 悠真の勝利。]
無機質なアナウンスが響く。
「……っ、はぁ……はぁ……」
悠真は膝に手をつき、荒い息を整える。
「くっそ……強くなりすぎだろ、お前……」
始は仰向けのまま、悔しそうに笑った。
「最後まで油断できなかったぞ。爆雷複数個仕掛けられんのかよ、えげつねぇ……」
「そっちこそ、防御力おかしいって。ああでもしないと突破できないよ。」
悠真は手を差し出す。始は一瞬だけ驚いた顔をしてから、その手を掴んだ。
「……ありがとな。いい勝負だった。」
「おう。次は負けねぇぞ。」
二人は軽く拳を合わせる。
その瞬間――
ぞくり、と。
悠真の背筋を、あの悪寒が走った。
「……?」
悠真は反射的に振り返る。
そこには、何もない。
ただ月光に照らされた訓練場と、揺れもしない影だけ。
「どうした?」
「……いや。やっぱり影がな。」
だが、悠真の視界の端で影が、一瞬だけ“歪んだ”。
まるで、生き物が息を潜めたかのように。
(……やっぱり、いる。)
仮想ルームの外へ出る直前、悠真はもう一度だけ、背後を見た。
影は何事もなかったかのように、静止していた。
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「潜入させた者から、候補者は全部で28人、そのうち継承者と思われるのは5人です。」
「そうか、ほかに火検体として使えそうな者、逸脱変換者はいないか?」
「一人、居りますが彼は…」
「かまわない。あいつには後で事故だとでも言っておけ。あいつはもういらん。」
「ハッ」
「さて、君はどう役立ってくれるのかね?騎士、そして…」
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〈能力紹介〉「冥界狼王」
人狼に変身できる能力、返信すると一時的に死んだような状態になり、痛みが減少、さらに一度のみ即死攻撃を無効化できる。
人狼状態では自身の骨を操ったり、骨を召喚したりして攻撃ができる。




