第012章 〈冷たく奇妙な男〉
2075/4/2 p.m.6:58 男子寮1階売店
男子寮は地下2階から16階まであり、4階以上が居住施設である。4階から7階が1年生、8階から11階が2年生、12階から16階が3年生に対応している。
余談だが部屋は学年が上がるごとに豪華になる。
1階から3階には大規模売店、医療施設、フリマなどがある。
地下には銭湯、訓練施設もある。
アンダーガーデンから帰った後、悠真はやることもないので売店でぶらぶらしていると、美味しそうなメロンパンを見つけた。最後の一つ、多分人気だろう。
「お、美味そうやな。」
「ちょまって!おねがい!最後の一つなんだ!」
一年生に見える男子生徒に止められた。顔を見たことがないのでおそらく別のクラスの人だろう。
「えぇ、まぁいいけどさ。」
「ありがとう!これまじでうまいんだよ!」
「は、はぁ。」
奇妙なやつだ、悠真はこの男子生徒に奇妙な感覚を感じた。発言が常に薄っぺらく感じる。まるで嘘をついているように。
「なぁ、お前一年生か?見たことないが。」
「ああ、クラスが違うんだろう。俺は日向白斗、お前は?」
「悠真だ。」
「そうか悠真、せっかくメロンパン譲ってもらったんだ、礼をさせてくれ。」
そう言うと白斗は悠真に何やらリストを渡してきた。
「これは?」
「先輩たちに聞いて回ってあつめたこの学校のうまいものリストだ。中にはこの学校でしか食べられない物もあるぞ!」
「はぁ、ありがとう。」
「それじゃ、ありがとなー!」
白斗はメロンパン片手に走り去った。
(なんだったんだ。)
とりあえず悠真はリストに書いてある饅頭を買って帰った。
甘くてめちゃくちゃうまかった。
リストをよく見てみると甘いものばかりだった。
饅頭を食べ終えた悠真は、売店を出て男子寮のエントランスへ向かっていた。
自動ドアの外は夕方前の中途半端な時間帯で、人の出入りもまばらだ。
「……寒くね?」
思わず腕をさする。
空調のせいにしては、ピンポイントすぎる冷え方だった。
吐いた息が、ほんの一瞬だけ白くなる。
「汗流しすぎたからか……?」
そう自分に言い聞かせた、その時。
「おーい、悠真ー!」
聞き覚えのある軽い声。
振り向くと、さっき別れたはずの白斗が立っていた。
「もう帰ったんじゃなかったのか?」
「いやー、ちょっと忘れ物。……それ、饅頭だろ?」
「ああ。」
「もう食ったのか、早ぇな!」
白斗は笑いながら近づいてくる。
その一歩ごとに、空気が静かに冷えていくのを、悠真は確かに感じた。
「……なぁ。」
「ん?」
「さっきのリスト、なんでくれた?」
白斗の眼が一瞬だけ異様に見えた。
ほんの一拍。
だが、それを悠真は見逃さなかった。
「さあ?気が向いたら、かな。」
「気が向いた?」
「そ、気分だよ、気分。」
軽い口調。
なぜか胸の奥がざらつく。
「悠真さ」
白斗は急に真面目な声で言った。
「今日、地下行ってたろ」
「……なんで分かる?」
「地下帰りのやつは独特なにおいがするんだよ。」
悠真は言葉に詰まる。
(匂い……?)
そんなもの、意識したこともなかった。
「ま、別にいいけどさ」
白斗は肩をすくめ、また笑顔に戻る。
「無理すんなよ。__火、出しすぎると、腹減るだろ?」
「……は?」
「だから糖分、大事だろ?」
その言い方が、あまりに自然で、まるで以前から悠真を知っているように。
悠真は白斗を見据える。
「お前……何者だよ。」
白斗は大げさに両手を広げた。
「ただの一年生だよ?アンダーガーデン所属の、どこにでもいる――」
言葉を切り、少しだけ声を落とす。
「――ただのモブだ。」
冗談めいた口調。
だが、その足元で、床にうっすらと霜が張っていることに、悠真は気づいた。
「……寒いぞ、お前の能力か?」
「おっと、悪い悪い、まぁそんなところだ。」
白斗が一歩引くと、あっさりと冷気は引いた。
「じゃ、またな悠真、次はもっと旨いもの紹介してやるよ、腹減らして会おうぜ。」
「なんだそれ」
「その方が、話しやすい。」
意味深な言葉を残し、白斗は踵を返す。
去り際、振り向きざまに、ぽつりと一言。
「暴走はな。腹が減ってる時に、いちばん起きやすい。」
それだけ言うと、
白斗は人の流れの中へ溶けるように消えた。
『違和感』
それは敵意でも恐怖でもない。
__同じ場所に立っている者だけが感じる、距離感。
悠真は無意識に、ポケットの中のリストを握りしめた。
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〈仕組み紹介〉「学校での食事」
朝食:売店で事前に買うか、自分のスマホに学校のアプリを入れ、そこから注文すれば届く
昼食:学校側で給食が用意してある
夕食:朝食と同じだが、朝食よりも量が多い
全食無料です。味は保証しないが。
〈概念紹介〉「能力暴走」
今更ですがの能力暴走について、この世界では基本的に能力の出力が感情に直結していますが、通常その変換率は40%~60%のところ、何かの拍子で感情が爆発し、変換率が100%を超えると、精神力が弱い人物はその感情に飲まれ、能力が制御不能に暴走してしまうことをさす。




