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初めての起動



「ふぁ……眠い。まだ7時?寝よっと。」

「もう7時。起きて。」

「んー?乙音…?」

「そう。早く起きて?」

「眠いんだ―」

バンっ

「いった……」

「起きた?起きてないならもう―」

「起きた起きたって……」

「起きたならいい。」

「相変わらず横暴……」

「何か言った?」

「なんでもなーい。」

「そう。」



このめちゃくちゃ横暴なのは川元乙音(かわもとおとね)。俺…春田大翔(はるたたいしょう)の幼馴染。見た目と少し話した程度なら儚い印象になるんだけど実際は見ての通りだから……もっと優しい幼馴染がいたら良かったのに。



「翔?何を考えてるの?」

「なんにも考えてないけど?」

「本当?」

「本当だけど。」

「私は優しいから。」

「は?」


何を言ってるんだろう?この女王様は。


「どうせ私がもっと優しかったらって考えてた。」

「気のせいじゃない?」

「そう?」

「そうだけど。」

「翔は私が気づかないとでも思ってる?」

「思ってないけどさ…」

「こんなに可愛い幼馴染がいて不満を感じるのは贅沢だから。」

「……」


こんなのでも物静か…??とか小さくて守りたくなる雰囲気……??と見た目が良いとかなんとかでモテてるのが不思議だよね。まぁ、見た目が良いのは分かるけどさ。見た目だけは。



「今度は何?」

「世間って変だなって思ってただけだよ。」

「安心して。翔の方が変だから。」

「どこが安心出来るの?」

「変な翔でも私は認めてあげるから。」

「俺はそもそも変じゃないし。乙音の方が変でしょ。」

「私は変じゃない。少し独特なだけ。」

「俺は変わらないと思うけどねー?」

「そう思ってるのは翔だけ。」

「そんなわけないけどもう良いや。」


確実に乙音は変だけどそんなことはどうでも良いや。そろそろ気になってたことを聞かないとね。



「それで、なんで乙音が俺の部屋にいるの?鍵は?」

「リノムが開けてくれた。」

「リノムが?なんで?」

「私に言われても知らない。」


リノム。俺の身の回りのことをしてくれている生活サポート型のヒューマノイド。命令したことをしてくれるからありがたい……はずなんだけどなんで勝手に鍵を開けてるの?



「リノムー」

『如何されましたか?』


リノムは俺が名前を呼ぶとすぐに俺の部屋に現れた。


「なんで鍵勝手に開けてるの?なんか変なのが入ってきてるんだけど。」

『変なのとは何のことを言っておられるのでしょうか?』

「乙音。」

『乙音様のことをそのように言うのはいけませんよ。』

「リノムの言うとおり。変なのは翔。」

『乙音様も大翔様のことを変というのはよろしくありませんよ。』


リノムって平等ではあるんだよね。あれ?俺のものなのに平等っておかしくない??



「分かった。」

「分かってないでしょ。」

「私は分かったって言ってるのに翔が変えない。リノムどう思う?」

『大翔様よろしくありませんよ。』

「分かったよ、変ってのは撤回するけどそれはそれとしてなんで鍵開けたの?」

『何か問題がございましたか?』

「いや、別に無いけど……これまでの10何年の間にこんなことなかったよね?急にどうしたの?」

『乙音様が大翔様にご用事があると私に強く仰られましたので。』


用事?何かあったかな?うーん…


そうこうしてると乙音が少し呆れたような声で言葉を発してきた。


「忘れてる?」

「うん。」

「これを見ても分からない?」


あれは…HWP。そういえば今日からだったね。完全に忘れてた。



「思い出した?」

「思い出したよ。でも10時からじゃないの?」

「始まるのが10時からってだけ。設定はもう触れる。」

「もうするの?」

「する。」

「そうですか……」

「そう。私はもう帰るけど準備忘れないで。」

「大丈夫大丈夫。ご飯食べたら準備するよ。」

「それなら良い。それじゃあ。」

「うん。またあとでね。」

「うん。」



Holy War in Parallel Worlds…通称HWP。今日からサービス開始のフルダイブ型のVRMMORPG。詳しくは知らないけど乙音と一緒にすることになってるゲームだね。面白かったら良いけどどうだろうね?



「リノム、いつも通り何かあったら起こしてね。」

『勿論にございます。現実のことはお気になさらずにお楽しみくださいませ。』

「ありがとね。それじゃ。」



そう言いながら俺はゴーグルをつけてベッドに寝転がる。このゴーグルが無いとVRというかフルダイブが出来ないんだよね。まぁ、逆に言えばこれだけで出来るんだけど。



VR…現代の基礎と言っても良いくらいのもので社会のほぼ全てのことがVRの中だけで完結する。もしも今突然VRが消えたら社会は崩壊するだろうね。そんなことはあり得ないから気にしないで良いんだけど。




古そうなジョッキとかテーブル、酒樽があってファンタジーの酒場みたいな場所だね。ファンタジーの雰囲気を感じられて良い場所だとは思うけど何なんだろ?



『始まりの酒場へようこそ。私どもはあなた様を歓迎いたします。』

「AI?」

『私はチュートリアルAI、皆様の基礎設定についての説明及びサポートをさせていただくAIにございます。』



見た目は天使かな?多分だけど。チュートリアルAI……チュートリアルだけを担当するAIは珍しいね。基本的にはもっと色々なことを1体で担当するものなんだけど。



「そっか。ちょっと気になったんだけど聞いてもいい?」

『ご自由にお聞きくださいませ。』

「お酒って飲んでいいの?酒場みたいだけど。」

『飲酒に関しましては20歳以上の方のみ可能となっております。あなた様のご年齢はおいくつでしょうか?』



法律的にそうだとは思ってたけどつまらない。法律的には飲酒や喫煙はVR内部だとしても20歳以上にしか許可されていない。VRの開発側には20歳未満の者へのお酒及び煙草の提供を防ぐ義務が存在する。だからこそ俺は生まれてこの方飲酒も喫煙も経験はない。



「17だよ。ジュースはないの?」

『言っていただければご用意いたします。』

「それじゃあサイダー貰える?」

『どうぞ。』

「ありがと。」


現実と何も変わらないように見えるけどやっぱりここはVR…仮想現実なんだね。何も無いところから急に取り出してる。分かってることだけどね。



「それでここでは何をするの?」

『キャラメイクやキャラクターの初期設定、それからご希望の方には戦闘に関するチュートリアルを致します。』

「キャラメイクって何か注意事項はあるの?他のゲームだと性別とか弄れないけど。」

『基本的には他のゲームと変わりはございません。』

「それなら設定画面もらえる?適当にするからさ。」

『どうぞ。注意事項としては1度設定を完了し、この酒場からご退出致しますと暫くの間は変更することが出来ません。』

「全く変えられないの?それとしばらくって?」

『ゲーム内の物で髪型を変えるなどは可能ですが他のことは基本的には不可能にございます。期間につきましてはこちらでも分かりかねますのでお答えすることが出来ません。』

「分かったよ。」



期間が分からない…プレイヤー次第ってことかな?まぁ、他のゲームでもよくあることだから新鮮ではないかな。



いつも通り銀色で肩まである髪にして、眼の色を水色…他は現実と同じだね。乙音に弄られそうだけど仕方ないね。変える気なんてないし。



「初期設定って何があるの?」

『名前、種族、ステータスポイント及びスキルポイントの使用にございます。』

「え、名前以外って何なの?」

『種族はどの種族になるか決めることにございます。種族によっては難易度や可能なことが限られる可能性がございます。しかし運営といたしましてはどの種族も平等に扱うことを基本方針と致しております。』



行動が制限される可能性があるのに乙音と話してない……ま、もしも変なのを選んだとしてもこのゲームに誘ってきた乙音が何も言ってきてないのが悪いよね。俺は悪くないし好きなのを選ぶようにしよっと。



「2つのポイントは何なの?」

『ステータスポイントは使用することでキャラクターを成長させることが可能となります。』

「使用するとってどんな感じに使うものなの?割り振るのか1つのレベルを上げるみたいなことなのか。」

『筋力・防御・敏捷・知能・器用・魅力の6つに振り分けることになります。』


6つだけ…俺はもう少し色々あった方が好きなんだけど……複雑にしすぎるのも良くないのかな?ま、こういうゲームの初心者には難しくなるのは確実だからそうなのかも?



「レベルみたいなのってないの?」

『レベルは別に存在致します。レベルの上昇時にステータス及びスキルポイントは入手することが可能となっております。』

「スキルポイントの方は何なの?」

『スキルの習得及び成長をすることが可能となるものでございます。』

「ポイントを使わないと手に入ったり成長したりしないの?するなら使いたくないんだけど。」

『基本的にはポイント以外で入手及び成長することはございません。』

「そっか。今のポイントっていくつなの?」

『ステータスポイントは30、スキルポイントは15にございます。』

「ステータスは?」

『メニューからご確認することが可能となっております。現在でしたら私の方から表示することも可能ですがどうなさいますか?』

「自分で見れるなら良いかな。」

『承知いたしました。』



名前:未設定

種族:未設定

所属:なし

レベル:0


筋力:10

防御:10

敏捷:10

知能:10

器用:10

魅力:10


スキル:なし


称号:なし


ステータスポイント:30

スキルポイント:15



何もないね。それにしても平均的?器用貧乏?な数値だね。



「とりあえず名前からつければいいの?」

『あなた様のご自由にしていただいて構いません。』

「問題は無いんだね?」

『ございません。』

「分かったよ。それじゃあショウで。次は何が良いの?」

『種族をお決めになることをお勧め致します。』

「何があるの?」

『人間・犬獣人・熊獣人・猫獣人・エルフ・ドワーフ・天使の7種類にございます。』

「それぞれどんな特徴があるの?」

『人間は平均型となっております。他はそれぞれ1つのステータスが高い代わりに他のステータスが低い種族でございます。』

「獣人は何が何なの?」

『犬獣人が筋力、熊獣人が防御、猫獣人が敏捷となっております。』

「天使は魅力?」

『その通りにございます。』

「オススメはあるの?」

『運営といたしましてはどの種族も平等になるように努力しております。しかし、同時に目指す方針が決まっておられない方につきましては人間を選ぶことをお勧め致しております。』



なんか平等ってことを強調してるね。どうでもいいけど。人間はなんかつまらない。乙音は多分戦えるやつだろうし……うん。



「天使にするよ。」

『開始後に変更することは出来ませんが本当に天使でよろしいでしょうか?』

「いいよ。」

『承知しました。ステータスをご確認ください。』



名前:ショウ

種族:天使

所属:なし

レベル:0


筋力:8

防御:8

敏捷:8

知能:8

器用:8

魅力:20


スキル:なし


称号:なし


ステータスポイント:30

スキルポイント:15



他が少し下がって魅力が上がってるね。言ってた通りだから特に何もないけど。



「ステータスポイント振るよ?」

『お間違いのないようにお気をつけくださいませ。』

「うん。」



名前:ショウ

種族:天使

所属:なし

レベル:0


筋力:10

防御:10

敏捷:10

知能:10

器用:10

魅力:40


スキル:なし


称号:なし


ステータスポイント:0

スキルポイント:15



よく分からないしとりあえずは魅力を伸ばして、他は初期の状態に戻すことにしよっと。



「スキルは何かオススメあるの?」

『特にございません。スキルポイントは比較的簡単に振り直すことが出来ますので今は気楽にご使用くださいませ。』

「分かったよ。」



名前:ショウ

種族:天使

所属:なし

レベル:0


筋力:10

防御:10

敏捷:10

知能:10

器用:10

魅力:40


スキル:投擲 1

    収集 1

    値引き 1


称号:なし


ステータスポイント:0

スキルポイント:4

 使用ポイント:投擲 3 収集 3 値引き 5



説明はゲームが始まってから確認するけど、とりあえず最低限の戦闘用として投擲。その投擲の弾を集めるための収集。それと天使は魅力に優れてるんだから値引きとか良さそうだよねってことで値引き。もしも役に立たなくても振り直せるみたいだし……何よりも乙音が何とかしてくれるよね。俺を誘ったのは乙音だし。



「設定ってこのくらい?」

『その通りにございます。』

「それなら時間までジュース飲んでるね。10分くらいだから良いよね?」

『問題ございませんよ。ご自由にお過ごしくださいませ。』



やっと終わった。現実ならサイダーも温くなってると思うけどここはVRだからね。キンキンに冷えててありがたいね。



「あ、美味しい。」

『それでしたら私共も嬉しく思います。』

「うん。ありがと。」



もうそろそろ10時だね。じゃあ準備しよっと。



「もう行けるの?」

『問題ございませんよ。』

「それなら行ってくるね。」

『あなた様の武運長久、そして、世界をお救いいただけることをお祈りいたしております。』



AIがそう言った瞬間俺の視界は光に包まれ、酒場からワープするのであった。



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