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第二十三章:元に戻るか、このままで生きるか

魔王軍との決戦が終わり、王都にはようやく静寂が戻った。


――だが、俺の心は静まるどころか、嵐のように揺れ続けていた。


「……戻る方法が、見つかった」


俺は、目の前に広がる魔法陣を見下ろしながら、呟いた。


「ついに、ですか」


隣に立つユージンの声は、いつもより静かだった。


「……ああ」


長い間探し続けてきた"元の世界に戻る方法"。

それが今、俺の目の前にある。


魔王の遺した禁呪。それは、異世界転移の魔法陣を発動させるものだった。

術式を完成させれば、俺は元の世界へ戻れる――男の身体に戻れる。


「……」


なのに、俺の心は晴れなかった。


戻るのか、このままで生きるのか――選べ、というのか。


「お前、どうするつもりなんだ?」


低い声が響く。


振り向くと、そこには蒼真がいた。


「お前、ずっと探してただろ? 元の世界に戻る方法を」


「……そうだな」


「なら、帰るのか?」


蒼真は、まっすぐ俺を見つめている。その瞳は、俺の答えを求めるように揺れていた。


「……」


俺は唇を噛む。


「なぁ、蓮」


蒼真が、俺の肩を掴んだ。


「俺は、お前が帰りたいなら、止めない。でも……」


蒼真の声が、かすかに震えていた。


「お前がここに残るなら……俺は、お前と一緒に生きたい」


俺の胸が、締め付けられる。


「……」


「俺は、お前がどんな姿でも、お前が"蓮"でも"レイシア"でも関係ない。お前がここにいるなら、俺はお前のそばにいたい」


「……蒼真」


俺の中で、様々な感情がせめぎ合う。


男に戻り、元の世界へ帰る――それが、最初の目的だった。


でも、今の俺は?


王女として生き、この世界のために戦い、ユージンや蒼真と共に歩んできた。


「俺は……」


俺の言葉に、蒼真がじっと耳を傾ける。


そして、ユージンもまた、静かに見守っていた。


戻るか、このままで生きるか――俺は、決めなければならない。


俺は、ゆっくりと目を閉じ、深く息を吸った。


この世界で過ごした時間を思い出す。

王女としての自分。

剣士としての自分。

そして――蒼真と、ユージンと、この世界で築いた絆。


俺は、どちらの"俺"を選ぶべきなのか?


静寂の中、俺はゆっくりと目を開いた。


そして、俺は――

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