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人間やめてみた  作者: さよなライオン
3/3

ep3 九死に一生

 精霊というのは、この世界のどこにでも存在しているが、契約するまで人間の目では見えない魔力生物のことだと定義されている。姿形は自由自在に変えられるが、普段は常に同じ格好のことが多い。人魚みたいなやつとか、火の擬人化みたいなやつとか、動物型とかいろいろだ。(ちなみに、アーシェラは岩でできた人形みたいな見た目をしていることが多い。どうせなら露出の多いびじょっびじょの美女がよかったぜ。なんや岩の塊って、炎とか水は高望みかもしれんけど五十歩譲って動物系、百歩譲って岩石系の中でもきれいな鉱石とかがよかった)




 これらの精霊と契約すると実態として見えるようになり、触れられるようになり、会話ができるようになる。だが、精霊は実体を維持するのにかなりの魔力を使う。理由はわかっていないが、連続活動時間にせいげんがあるので、普段は実体化させないで好きにさせておいて、必要な時に召喚して、仕事をしてもらうというのが一般的だ。まあ、精霊が何で契約してくれているのかも全く分かっていないし、謎が多い生き物なのだ。


 話がそれたね。それで、この本には、契約精霊が並行世界の住人だという証拠と、その精霊を主人の肉体の内部にとどめる方法について書いてあった。時間がないので証拠のほうは割愛。



 肉体の内部にとどめる方法はいたって単純で、アルモヘレナ考案の魔法陣を召喚者の肉体に刻み込むだけだ。チョークとかで書いてもいいし、刺青でもいい。活動時間中に消えなければ何でもいいらしい。もし消えると、その瞬間に体内召喚が解除されるらしい。でもこれは朗報だったりする。黒い奴の具体的な倒し方がわかったかもしれないからだ。俺の予想通りあいつがアルモヘレナ化してるとしたら体のどこかに魔法陣があるはずだ。それをぶっ壊してしまえばいいだけだから相当作戦は立てやすくなる。


 

 それから、この体内召喚のメリットは大きく二つ。一つ目は精霊が実体を維持する必要がないので使える魔力が大幅に増えること。二つ目は思考も共有されるので、連携さえ取れれば魔法を最大効率で叩き込めるということだ。計算上は精霊鎧なんかよりはるかに大幅なパワーアップが期待できる。


 だが、とんでもないデメリットも存在する。そしてこのデメリットがアルモヘレナが大暴走した直接の原因であり、体内召喚が禁忌とされる所以でもある。



 まず、俺たちが生きている世界を現実世界としよう。精霊として呼び出す別の世界線の自分がいる世界を並行世界とする。この現実世界と並行世界は決して交わることはない、交わってはいけない世界である。


 しかし、並行世界の自分を呼び出して、現実世界の自分と重ねるとどうなる?重なった人は二つの世界が唯一交わる場所になる。本来交わらないはずの二つが一つになるのだから、とんでもないエネルギーが発生することになる。このエネルギーに個人が耐え切れるはずもなく、体内召喚から一日ほどで自我を保てなくなり、大暴走の末に肉体が崩壊するのだ。体内召喚を試みたアルモヘレナは暴走前にこの理論を『アルモヘレナの重なる扉』と名付けた。


 


 「おい、ナイフもって来たぞ。ナイフはナイフでもペティナイフだからな。お前の皮膚も果物みたいに剥けるぞ^^なんちゃてなぁ。・・・・おーい、ライアン?」



「精霊鎧はやめだ。こっちを使う、読んで準備しろ。」



 手短に用件を伝え、上着を脱ぎ始める。



「・・・・・・・・・成功したとして、暴走する奴が二人に増えるだけだぞ。」


「対策は考えてある、そのための生命変換だ。暴走しても、俺の肉体の魔力がすっからかんになれば肉体は崩壊する。そうすれば暴走しようがない。どうだ、完璧な作戦だろ。」



「お前の体内には魔力生物である俺が存在してるんだぞ。魔臓がいかれても俺の魔力で生きながらえるじゃねーか?」



 というか、読むの早すぎない?こいつさては速読の天才だな。



「その前に解放するさ。俺の肉体が三時間半もつように、生命変換魔法を計算して調整した。だから、三時間でケリがつかなかったら、お前を解放する。俺が死ぬ前に召喚解除する時間ぐらいはあるはずだ。‥‥‥ああ、それから暴走のことは心配しなくていい。アルモヘレナによれば、一日は自我が保てるらしいからな。暴走の前に決着がつく。大丈夫だ、心配事はそんなにない。前例がないから弱気になってるだけだ。信じろ。」



 正直、かなり怖い。どれくらい怖いかというとうんこ漏れそうなくらい。だって、自分の死にざまが具体的になってきてるんだもん。黒い奴に殺されるか、魔臓の使い過ぎで死ぬか、どっちかだ。

 


 というか、この二つはまだいい。一人で突っ込んでいって、一人で死ぬだけだから。最悪なのはアーシェラを解放できずに暴走してしまうことだ。一人で死ぬだけじゃない、この国のすべてを巻き添えに死ぬかもしれないんだ。この国には家族がいる、友人がいる、大切な場所がある。いや、あ・っ・た・というべきかもな。それだけは絶対に避けなければならない。




「・・・・・・負けたら一緒にお陀仏、勝てば俺は自由になれるってわけか。そりゃいい、がぜんやる気が出てきたぞ。」



 何こいつ、俺との契約そんなにいやだったの?自由になれるとかいうなよ、相棒だと思ってる俺が寂しいだろうが。




「本通りに魔法陣かいてくれ。ナイフは切っ先だけでいいからな。じゃないと本戦の前に痛みで俺が死ぬ。」




「分かってるって、出来るだけ気ぃつけるから背中向けろや。」




 痛みに耐えること数分、まずは体内召喚用の魔法陣が書き終わった。なんでナイフなんかでやるかって?そりゃ、傷であれば肉が削り取られたりしない限り消えることはないからだ。さっきも言ったが魔法陣が戦闘中に消えたら、その瞬間体内召喚は解除される。そうなったら俺は魔力場内で立つことすらできないだろう。すなわち即死だ。



「脇腹も頼む。」


「横になれ、このままじゃ書けん。」



 背中の時とは違い、だんだん痛みがなくなっていく。たぶん、アドレナリンかなんかのせいだろう。まだ戦闘も始めてないのに高ぶってきて、どうしようもない。



「終わったぞ、お前の死に装束。」


「勝手に決めんな、ボケ。」


 なにが死に装束じゃ。俺はまだ死ぬ気はないぞ。死ぬ覚悟はできてるけど、死ぬのを許容できるわけじゃねえ。


 息一つはいて、目を閉じ、集中する。覚悟が出来たとこで気合を入れる。



「「おし、行くぞ‼」」


 自然と掛け声が重なった。シンクロがもう始まってる。良い兆候だ。


 一度アーシェラの召喚を解除し、再度召喚の呪文を唱える。何度も繰り返してきた呪文だ。万に一つも間違うことはないが、一言一言をゆっくり丁寧に発する。




 「うおお、お、全身が針で刺されてるみてーに痛いぞ。なんだこれ、実験記録にはない反応だ。これ大丈夫か?」


  まずい、意識が飛んだらマジで終わりだ。踏ん張れ、気張れ、俺はこんなところで終わるような、やわな男じゃねえ。ふんがああ!痛みがどうじゃ、こちとら覚悟が違うんじゃ、ボケカス。





















 


 こりゃあ、すげえぜ。全能感という奴だろうか、今なら何でもできる気がする。宇宙にだって行けるし、海だって飲み干せる、女の子に告白することもできそう。最高にhighってやつだ!




 体内召喚は成功した。今、俺とアーシェラは体を共有してるし、思考も共有されてるはずだ。


 肉体の形には特段の変化はないようだが、視界は大きく変わった。まず、極彩色の世界になった。ありとあらゆるものに色がついているように見える。風や、におい、魔力の流れ、強い感情も色になってる。俺からは今、白に近い黄色が出てる。これが精霊が見ている世界なのか。知らなかったわ、世界はこんなにも色であふれているもんなんだな。



 『おっけー、こちらアーシェラ。準備は整った。さあ行こうか。』



 お、やっと意識が共有された。今のタイムラグは何だったんだ?まあ、どうでもいいか。あそこではしゃいでる黒い野郎に借りを返しに行かないとな!





 

エピソードのタイトルにも意味はあります。ネタバレはエピローグで。

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