英雄と先輩
僕は今日から騎士になる。この国を守るための大事な仕事だ。
まず初めの仕事がまさかの大蛇退治。
いや、なんで!?新人に任せるか?普通、こんな大仕事。
そんな時、大蛇が真っ二つになった。
そろそろ眼科行こうかなと思ったが、眼の前にはポニーテールをしたきれいな顔立ちの騎士が立っていた。「新人くん?私がおんなじ部屋になったドールだよ。よろしく」
「ああ、えっとルドルフ・ハイン・フィオニアと申します」
どうやら騎士団の先輩だったらしい。でも、この先輩貫禄はあるのに顔が幼いというか若くみえるというか。
「とりあえず案内するからついてきて」
そして僕はこの後騎士団のことを教え込まれ、眠りについた。
憧れた騎士だったが大変なのはここからだった。
「いけない。もうすぐそこまで進軍してきている。ゴデス、すぐに鎧を脱いで逃げなさい。私がここを食い止めるから。さあ、早く!」
「でも、それじゃ先生が!私、先生と離れ離れなんて嫌だよ!私逃げない」
「だめ。あなたにはまだたくさんの寿命が残っているのよ。ここで死んだらこの先の人生がもったいないじゃない。私はもうこの国で騎士としての人生をめいいっぱい楽しんだわ。だからもういいの」
そう言って先生は私の鎧を剥いだ。先生は戦で両親を失った私を拾って立派な騎士に育ててくれた。先生は国で一番腕のいい騎士だった。私に愛情いっぱい注いでくれて、美味しいご飯に、ふかふかのベッドまで与えてくれた。こんな暮らしがずっと続けばいいのにとよく思っていた。あの時、私はそんな先生を見殺しにして逃げた。私と先生が再会したのは先生の体と首が離れたときだった。私はその時から感情が分からなくなってしまった。
「ドール先輩、おきてください。もう朝ですよ。いつもは10時までなら寝せてあげますけど今日は大事なヒーローズセレモニーですよ。今日だけは起こせと言われてるんです。早くおきてください」
僕は新人騎士のルドルフ。毎朝僕はこのドール先輩を起こしている。なぜドール先輩と呼ばれてるのか他の先輩方に聞くと誰も本名を知らないのであだ名のように誰かが付けて呼び始めたみたいだ。何やら感情がなく、人を殺すことに特化している人形のようだかららしい。いつもはなかなかおきてくれない先輩が今日はすんなり起きてくれた。長い髪はまだボサボサで、ルームウェアの首の部分が大きく空いているため反対の肩が見えている。
「おはよう。いい朝だね」
「おはようございます。先輩」
身支度を終えた先輩の隊服にはいつもはついていないおしゃれなブローチが付いていた。先輩のブローチは300年前の英雄がつけていたそれに似ていた。かつてこの国は隣国と戦争をしていた。英雄は最後まで砦を守り抜き、この地域一帯で最強と呼ばれていた騎士だった。この国からすると敵だが、あまりの強さとその功績を称え英雄にされたと聞いている。僕からすればおとぎ話のようなものだ。
今日の行事は珍しく先輩が真面目に出席していた。いつもは少し出席しただけで「帰りたい」とごねだす。先輩は少し寂しそうな顔をして英雄の像を見つめていた。自分の親であるかのように。
「今日はドール先輩大人しいですね」
「だろ?毎年この行事だけすっごく真面目に出席してんだ」
僕はこの行事が初めてだったためこんなに真面目なドール先輩は初めて見た。この時、先輩が人知れず泣いていたことに僕は気づく由もなかった。
夜、ドール先輩は宿舎を抜け出して何処かへ行くことがある。僕は何処に行ってるのかものすごく気になった。その夜僕は先輩について行くことにした。先輩は丘の方へと行く道に入っていく。そこはかつてセレモニーが行われており、英雄の像があるところだった。先輩は像の下に座り込んで話しかけているみたいだ。
「先生があの日私を逃がしてからもう300年ですって。月日は早いものですね。私は先生が逃がした日から何故か不老不死になってしまった。私は人間だったはずなのに。成長するのは剣の腕と髪の毛ばかり。私は少しも老いず、致命傷を負っても一日経てば治ってしまう。痛いことは痛いけどね。今私は元敵国で殺戮人形として過ごしているの。そうよね。私は今感情がないのだもの。料理の味だってわからないし、残忍な殺しだって前はあんなに怖かったはずなのに今では何にも思わない。眼の前の的を殺すだけ。好きとか嫌いとか優しさとか怖さとか全くわからない。というか、最近殺されることもなくなってきた。私も強くなってきているってことなのかな。淋しいね。私には最近新しい後輩ができたんだ。あの顔は何処かあの方の面影があるよ。今度の後輩はね、私を毎日起こして来るんだ。私を起こしてきた隊士は今までいなかったのにね。昨日は久しぶりに先生の夢を見たよ。先生の最期の夢。せっかく先生に夢の中で会えたのに、よりによってあのシーンが出てくるとは。先生のいたずらかな?そろそろ戻るよ。また来る。大好きだよ、先生」
そう言って先輩は宿舎へ帰って行った。まさかドール先輩の先生があの英雄だったなんて。初耳だった。しかも300年!?今何歳なんだ!?色々な疑問が僕の頭の中を飛び回った。
「♪〜♪♫〜♬」
「ママ、その歌なぁに?」
「この歌はね、この国の歌よ。お父様が英雄様と出陣する時に歌うかっこよくて素晴らしいお歌なのよ」
変な夢だ。知らない女の人に膝枕をされていて知らない国家を聞かされている。自分では夢に干渉することができなかった。女の人は自分の母親ではない。そもそも僕はこんな記憶知らないし、父は騎士ではない。この女の人はまるで…まるで…
ジリリリリリリリ!
「うわっ!はぁ、朝か」
不思議な夢だ。何もかも知らないのに、妙な既視感があった。考えれば考えるほど分からない。とりあえず、僕は二段ベッドの上で寝ている先輩を起こした。
「先輩、起きてください。朝練始まっちゃいますよ!」
「い~や~だ!起きたくなぁい!まだ寝るぅ!」
「駄々をこねないでください。おふとん剥ぎますよ!」
「・・・ってゆうか昨日の夜私を尾行してたよね。折角先生と久しぶりに話せたってゆうのに」
「えっ、気づいてたんですか?」
「当たり前だろ。あんな下手な尾行すぐ気づく。気配も痕跡も消さず何が尾行だ。アホ騎士が!」
(嘘でしょ。あれでも精一杯消したのに)
「アホ騎士って…。でも、先輩が元隣国出身で、英雄が師匠であることを僕に話していいんですか?僕が上にチクって処刑されるかもしれないのに」
「大丈夫。君はチクれない。そして、君がこの情報を知っておく分には損はない。ちょっとプラスかもね。チクる方がマイナスかも」
「そうですか。まあ、僕もチクるつもりはなかったんですけど。あっ!そう!僕、先輩に聞きたいことがあったんです!」
「ふ~ん何が知りたいの?」
「先輩って…一体何歳なんですか?昨日の話から推測するに三びゃk…ぷはっ。もうやめてくださいよ」
「じゃ、おやすみ今日も10時にもう一回起こしてね」
僕の推測は先輩の強烈な枕投げで中断させられた。ボフボフしてる間に先輩も布団に潜っちゃったし。
唐突に将来が不安になる僕であった。
拙い文章ではございますが呼んでくれてありがとうございます。これから恋愛展開も多めに入れていくつもりです。それではまた次回。