3. 冬の稽古は見てる方が辛いとか
1話何文字くらいが妥当なのか···
着替えの終わった指導員の人達が整列を始める。
段位の高い人が上座になるように順番に正座していくので、自ずとほぼ年齢順になっていく。まあ、先頭のじいちゃん先生はともかく、間のおじさん達はある意味年齢不詳だから実際は多少前後してるかもしれない。
指導員達と相対するように少年部も並び始める。こちらは、ほぼ学年順だ。
なので、最初の方はさっさと位置につくのだが、後になるほど中々着座してくれない。指導員のおじさん達は厳しそうな表情をしてみせてるが、特に注意するわけでもなく、黙って全員が着座するのを待つ。無言の圧力、と言うより、小さい子供達の様子を眺めて内心癒やされてるのは公然の秘密らしい。
全員が着座したところで、指導員の号令の下、一斉に瞑想をする。
少し前まで騒がしかった体育館もとい道場が静寂に包まれる。
俺は確認のために薄目を開けているが、意味が分からなくても子供達はちゃんと目を瞑っている。エライエライ。
稽古に参加してない保護者の人達まで瞑想しているのは、ちょっと意味が分からないのだが。
瞑想が解かれると、礼をして稽古が開始される。
俺は特に年齢の低いちびっこ達を集めて練習を見る。
膝立ちになって竹刀を水平に持ち、そこに順番に打ち込み稽古をさせる。
単純な練習だけど、繰り返していると子供達のフォームが自然に最適化されていくのは見ていて面白いと思う。中には気の弱い子もいて、最初は怖がりながら打ち込んでくるのだが、休みなく続けていたら、案ずるよりも先に体が動くようになる。
練習に熱中してくれるのはいいことなのだか、距離を空けて飛び込むように打たせているのに、何故かちびっこ達はどんどん前に前に詰まってくる。なので、定期的に中断して引き離さないといけない。
打ち込み練習が終わると、防具を着けての地稽古になる。
地稽古は大人たちが見るので、俺は子供達の防具着けを手伝ったら役目は終わり。
と言いたいのだが、まだ地稽古を許されていないちびっこも数人いるので、その子達に基本を教えたりしなければならない。ちびっこの中の更にちびっこなので長くは集中が続かない。ほどほどに終わらせて後は自由時間とするけど、竹刀を持ったまま遊ぶのは危険なので、手を引いて親元に連れて行く。
ここでようやく俺も稽古に参加できるのだけど、そうはしないで体育館の中をぐるりと見渡す。
今日もアイツは来ているだろうか。
いた。
体育館の隅で周囲の目を気にしながら、コッソリと胴着に着替えている。
俺は近づいて声をかける。
「おっす」
小声で、やあ、と返すそいつは柏木漣。
この道場で、唯一の同学年生だ。