1. 冬の雨は冷たくて
初めて書きます。
宜しくお願いします。
土曜の雨は本当にイヤだ。
防具一式を入れた鞄は只でさえ嵩張るのに、竹刀袋が邪魔で傘を上手くさせない。
それに、道場に行く時はいつもサンダルに素足だから、足の裏がグジュグジュしてとにかく不快だ。
しかも、今は冬である。世界は温暖化傾向と言っても、寒いときは寒い。
土曜の夜だけ開かれる剣道教室。
週にたった1回だけの稽古、だから休めない。
休む言い訳を見つけられない。
道場とは言うけど、要は近所の小学校の体育館だ。
その道場に幼少の頃から通っている。
小さかった頃にはたくさんいた同期たちは年経るごとに減っていき、同級生はついにいなくなった。
中学に上がる際に、部活や塾を理由に剣道を辞める先輩たちをたくさん見てきたので、俺も小学校を卒業するまでかな、と漠然と思っていたのだが。
小学5年生になった頃、年少組の世話を任されるようになった。
走り回るガキどもを捕まえて着替えさせたり、準備運動をさせたり、稽古前に並ばせて正座させたりと、とにかく手がかかるし面倒くさい。どうして子供って言うこと聞かないかな。きっと俺もそうだったのだろうけど。
稽古中も、小さい剣士達の打ち込みの練習台として竹刀を構えて立っているだけで時間が過ぎていく。そのため、少年部では自分が練習する時間がなくなったが、代わりにその後の大人の部の稽古に参加させられるようになった。
大人の部は人数は多くないが年齢層の幅は広い。上はヨボヨボのおじいさんから下はまだ若々しいお兄さんまで。でも、ほとんどは30代、40代のおじさん達だ。
学生時代に剣道やっていて、大人になってできた我が子にも剣道を習わせる傍ら、自分の修行を再開した人が多いとか。少年の部ではボランティアで指導も行っている。見た目は少々いかついけど、大体は気の良いおっちゃんである。
中には、現役時代に結構高いレベルの大会にも出ていた人もいて、その人に指導されるときはちょっとピリッとした空気になるけど、声を荒げることもなく、丁寧だか厳しめの稽古をしっかりつけてくれたりする。
そのおかげか、本人のヤル気の度合いと関係なく稽古はちゃんと身についていたようで、毎年どこかの大会に出てはいつもそこそこの成績を上げている。無駄にガタイが大きいのも幸いしているのかもしれない。もっとも、地方の市民大会くらいしか出場したことがないので、全国レベルから見れば全然下の方なんだろうけど。
家にはトロフィーがいくつか置いてあったりするので、ごくたまに遊びに来る同級生にうっかり見られては、アイツは剣道の達人だとか喧嘩も強いとか、根拠のない噂が広がって、何となく周りから畏怖の目で見られている気がする。
実態は、怖いもの知らずのヤンチャくんに絡まれたりしたら、すぐに化けの皮が剥がされそうで内心恐々としている小心者なのだが。
そんな事情もあって、昔からの顔見知りが周りにいる以上、中学に上がっても剣道を続けざるを得なかったのだ。イメージ壊れたら途端にイジられそうだしな。それ以上に、俺が抜けるとガキどもの面倒を見る人手が足りなくなって大変そうだ、というのもあるのだが。
何だかんだ、長くいると居場所ができあがってしまうものである。
居心地がいいかどうかは別として。
そんな訳で、今日も足の裏をビショビショにしながら歩いて道場に向かっている。
暗いし寒いし濡れるし、本当に最悪だけど。
実は、道場に通う理由はもう一つあって
そして、それが一番大きな理由だったりするのだけど
そうじゃないと自分に嘘をついている
だって、それを認めてしまうと、俺は・・・