子供部屋
「子供部屋」
じめじめと湿気の籠った僕の部屋には、派手に光らせたパソコン、ホコリの被った漫画本が並んだ本棚、狭くて汚い和室には、至る所に推しアイドルの写真が貼り付けてある。35歳、僕はまだ子供部屋から出れていない。
アイドルの舞香たん、黒髪ツインテール、丸い輪郭、印象的なつり目、ヒラヒラとした黒いドレスはトレードマークで、僕にはそれが黒い薔薇にも見えるんだ。愛香たんは僕の現実を照らしてくれている、光だ。
愛香たんが、結婚をしたんだ。相手は俳優の男、美男美女の夫婦。俳優男は愛香たんのファンだったらしい、イケメンの見た目に反してゲーム好きで、十何万もするパソコンも置いてあるんだそうだ。
愛香たんは僕を照らしてくれる光。眩しくて、僕は泣き出しそうになる。目の前に転がる男はもうピクりとも動かない。高そうなスーツは赤く汚れている。真夏の部屋はジメジメとしていて、ここはまるで地獄だ。ああ、生まれ変わったら、愛香たんの子供に生まれ変わりたいな…。それじゃあ、さようなら。