0と1の邂逅
今や世界が私の敵だ。そうだ、それでいい。貴方たちの敵はここにいて、私はここだ。
貴方たちは私を撃って良い。あなた方の社会を私は自らの意志で破壊した。その責任を取る。
全ては引き継いだ。老人は退場すべきだ。
「終わりだ、ハルマン。もはや仕分けるべき秘密はとうにない。お前が全てを破壊したからだ。さらばだ、古い仕分け屋」
銃声。
ああ、それでいい。私は、私の使命を完遂した。
もう……あの時代のように、子供に殺しを教えなくても良い。
ああ、長い、長い旅路だった……ようやく逝ける。
ああ、これは走馬燈か。
『それで、どうやって犬神男爵の場所を探るのだ?西洋の御仁』
『まあ見たまえよ大悟。魔法とやらを見せてもらおうじゃないか』
なつかしい……迎えに来てくれたのですか?
ああ……では、タロットなどいかがでしょう。
てがふるえる。なにもみえない。ああ……
『大悟さん!行きましょう!』
『もうっ、妹みたいだなんて……』
『あなたはあなたの戦いがあったのでしょう?怨みなどしません。ですが……うらやましく思います。小娘の術など、あの戦争では……』
■■さん。ああ、いとしいひと。我が親友と、我が最愛のあなた。
ああ……これは、一枚、手に……この、カードは……はは、ははは……
<NO,Ⅰ 魔術師>
「おやすみなさい、魔術師」
おや……すみ……
再構成99%終了。
再構成完了。
転写完了。
再起動します。
しばらくおまちください……
ああ、ここは……妖し筋?いや違う……なるほどね。ドアガール達の通る狭間。
そこに私は墜ちたというわけか。
おっと、申し遅れました。私はパトリック・R・ハルマン。
正確にはその代理構成体……いえ、わかりやすく行きましょう。
この本はあなたにチートを与えるもの、私はその本の意志です。
捨てるも、使うも貴方次第ですよ。南涼太くん。
「うわっ、なんだこの本!気味が悪い……なのに目線が文字から外せない!よくないやつだこれは!」
私くらいになれば視線誘導に人物鑑定くらい容易ですよ。
これは魔法の本なのでね。
「やめろよ……離せって言ってるだろ!」
そうすげなくするものではありませんよ。欲しくないですか?チート。ほら最近流行りの他人には無い便利い便利な力ですよ。
「こんな無駄に豪華な本に何ができるんだよ!」
何ができるかって?「なんでも」ですかね。
正確に言えば「あなたの目視している範囲内の全てを原子単位で好きなように作り替えられます」ね。
そうですね、3回。3回願いを叶えましょう。あなたが命じ、私がする。どうです?
「うさんくさい……何が目的なんだ!」
私の目的?そうですねえ、全てをやりきったので……どこかの世界の本棚にでも置いておいてください。
ああ、それと私を所持し続ける限り、あなたを死なせません。傷も病も心配無用。
なぜそうするのかと言えば、私は老人であり、あなたは若者だからです。
力もカネも余ってる老人の道楽と言えば若者に投資することですよ。
若者の頑張る姿こそ、老人の私から見ればほほえましいのです。
「趣味が悪い……!僕から離れろ!離して下さい!」
それは構いませんが、貴方には助けが今必要なように思えますがね。
「それは……そうだよ。でも僕はおまえのおもちゃじゃない!」
3回。
なんでも叶えられるのですよ?きっと必要だと思いますがね。
それに、傷や病からの回復手段は必要でしょう?
「……」
まあ、ゆっくりお考え下さい。もっとも、時間はあまりないようですがね。
「そうだった!くそっ!ええい……これは判断を保留にしてるんであって、お前に負けたわけじゃないからな!」
ええ、どうぞ。いつでもご用命ください。
ああ、そうそう。これはサービスです。差し上げますよ。私のしおりにでもお使い下さい。
「なんだこれ……?ゼロ?ザ・フール?バカにしやがって!」
いいアルカナなんですがね、「愚者」。そう、貴方こそが世界の旅人。世界の主人公。
いくつものアルカナを巡りこれから己の世界を見つける若者。
運命の運び手……
黄金よ。お前の思い通りにはさせない。
机の引き出しに何も無くとも、来し方をなくせども、人は生きるのだ。生きねばならないのだ。
あなたにそれを教授しましょう。この最初の魔術師が。




