表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜  作者: 黒城白爵
第十五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

456/461

第441話 白き世界と黒き星



 ◆◇◆◇◆◇



「──此処は?」



 薄れていた意識が再び覚醒すると、目の前には真っ白な世界が広がっていた。

 地面も空も純白に染まっていて、天地を隔てる境界線が認識しづらい。

 白い以外に何も無い世界を見渡していると、唯一の異なる色を見つけた。



「黒……月、いや星みたいだな」



 俺の真上の空にあったので気付くのが遅れたが、そこには月ぐらいの大きさの黒い真円が浮かんでいた。

 漆黒の月、漆黒の太陽、漆黒の星。

 呼び名は何でもいいが、そう表現するしかないモノが、白い世界に異物として強い存在感を示している。

 その黒き星を見ていると妙に心が落ち着くのに気付くと、その正体にも思い至った。



「……ハハッ、そうか。なるほど、なるほど。気が長いことだ。あれから少しは成長したじゃないか」



 嘲笑と共に侮蔑の言葉を吐き捨てながら背後に振り返る。

 密かに近付いていた気配が動きを止める。

 肉眼では視認できず、並大抵の力でも姿を認識出来ないが、俺の言葉を受けて揺らいだ魂の動きを何故か感じ取ることができた。



「姿を現したらどうだ? それとも、言葉を重ねずにいきなりはじめるか?」



 意識を失う前から漆黒に染まったままの右手を空間へと向け、発動済みの【強奪権限(グリーディア)】の力を行使する。

 奇怪な音を鳴らしながら空間が乱れ、そこに隠れていた存在が姿を現した。

 姿を現す前と変わらず白一色の世界に同化しながらも、今は強い存在感を示しているのは白い触手の群れだった。

 【強奪権限】の超過稼働能力オーバー・アクティベート・スキル貪欲なる解奪手グリードリィ・デモリッション】によって触手の構成が崩れ去り、玉虫色の光の粒子を散らしながら俺の手に吸収されていく。

 強奪の力が触手の根元へ向かって侵食していくが、途中で触手が切り離された。


 白き触手が切り離された先の空間が歪むと、白き景色の一部が人型に隆起して、そこに潜んでいた存在が顕現する。

 そこにいたのは、髪や瞳、肌といった肉体だけでなく、身に纏う装束も含めた全てが純白の人間に似た容姿をした女だった。

 唯一の異物として、女の豊かな胸元には俺の神器〈未完成の銀鍵〉が埋まっている。

 俺との帰属状態は保たれているが、全く反応が無いので俺に主導権はないみたいだ。

 そんな銀鍵の主導権を握る相手は、控えめに言っても絶世の美女と言える容姿をしているが、その美しい貌には様々な感情が凝縮されたかのような、邪悪さを感じられる笑みが浮かんでいた。



「久しいな、邪神。それとも〈創造神〉と言うべきか? あるいは、プローヴァの方がいいか?」


「女神様と呼びなさい、クロガネ・リオン。この不敬者め」



 無駄に綺麗な貌を不快そうに歪めるコイツの正体は、前の異世界を支配していた主神であり、前世の俺が倒した邪神だった。

 また、俺が先ほどまでいた転生先の世界における、神々によって封印された旧神の一柱〈創造神〉でもある。

 そして、俺に第二の人生を与えて異世界に転生させた謎の存在、プローヴァの正体でもあった。



「その名で呼ばれるのも懐かしいな。俺も性根の腐った腐れ女神と呼ぶべきだったか? でも長いから以前と同じように簡潔に邪神と呼んでやろう。懐かしくて涙が出るだろう?」



 俺の発言が気に障ったらしく、不意を突くように上空から純白の槍が飛来する。

 手に持ったままだったエクスカリバーで白槍を弾くと、横薙ぎに払った動きから上段の構えへと繋げ、目の前の邪神に向けてエクスカリバーを振り下ろした。

 エクスカリバーから放たれた光の斬撃に呑まれる前に邪神の姿が消え、少し離れた場所に再び現れる。

 自分の身に起きた変化と周囲の様子からもしやと思っていたが、邪神の今の転移と先ほどの槍から確信を得た。



「〈強欲〉の力を持つ俺からスキルを奪ったか。まぁ、最初から〈創造〉の力でそのように作られていたなら不可能ではないか」


「フフッ、アハハハハハハッ!! 相変わらず察しが良いわね。生まれ変わってもなお変わらないキサマのその力が憎らしいッ!!」



 邪神が向ける指先から世界を滅ぼす雷撃が放たれる。

 光の速さで迫る雷霆を、神殺しの力を維持しているエクスカリバーで叩っ斬った。

 先ほどの白槍の正体は、色こそ異なるがユニークスキル【魔賢戦神(オーディン)】の【黄昏ノ神焉槍(グングニル)】だ。

 転移は【天空至上の雷霆神(ゼウス)】の【瞬身ノ神戯(ヘルメス)】で、今放たれた雷霆は【界滅ノ神霆(ケラウノス)】だろう。

 俺が所持していたスキルの九割以上の力が感じられず、それらの力は邪神が使用できるようだ。


 今の俺が使えるユニークスキルの中で、これまで通りに力が使えるのは【強欲神皇(マモン)】だけ。

 他には【世界と精霊の星主(オーヴェロン)】も使えるが、【星羅万象(アストラル・ルーラー)】と【創星ノ杯】が使えなくなっているので、これまでのようには使えない。

 ユニークスキル以外だと、【大勇者(アーク・ブレイヴァー)】や【超越者(オーバーロード)】といった一部のジョブスキルの存在は感じられる。

 〈権能〉は全て使用可能で、各種称号も全て効果を発揮しているみたいだ。

 此度の巨塔への大遠征で行なったスキル融合で獲得したスキルの内、【強欲神ノ黄金神星煌躰グリードリィ・シン・エーテルボディ】と【強欲神ノ虚空神星権圏グリードリィ・シン・エーテルライン】などは俺の中に変わらず存在しているが、【死天使の月鍵眼(サリエル)】は消えていた。

 【強欲神の武蒐術】【叡智蒐神星髄(ヴェーダ)】【祈祷蒐星(ブリハスパティ)】は使えることなども踏まえると、〈強欲〉の文字や〈蒐〉などの〈強欲〉を彷彿とさせる概念が含まれているスキルは奪われていないらしい。

 ただ、〈強欲〉と関係なさそうな【神焉ノ救星主(ラグナロク)】も奪われていないので、他にも法則がありそうだ。



「ふむ。創造神の力で作った仕込み(バックドア)だからか、俺の根源たる〈強欲〉以外には通じるみたいだな」



 転生時に与えられたスキル群を用意したのは目の前の邪神(プローヴァ)だ。

 それらのスキル群の中に、後々俺から力を奪うためのバックドアが仕込まれていたと考えるのが自然だろう。

 状況的にも、初期ユニークスキル三つの中でも【造物主(デミウルゴス)】と【魔賢戦神】にバックドアが仕込まれてるのはほぼ確定だ。


 〈造物主〉という言葉は〈創造神〉に等しい意味を持つ。

 〈創造神〉が前の異世界の邪神のことだと気付いたのもあって、ユニークスキルである【造物主】が邪神と関係がある可能性に思い至った。

 ユニークスキルとは魂との関わりが深いスキルなので、邪神の魂が【造物主】というユニークスキルに成り代わっていてもおかしくはない。

 追放されたとはいえ、仮にも〈創造〉の〈権能〉を持つ神なのだから不可能ではないだろう。

 実際、転生後は何故か魂の動きを感じ取れるのもあって、レベル百を目前に控えて、【造物主】から魂らしき動きと邪神の気配を時折感じ取っていた。

 初期ユニークスキルの一つが邪神ならば、それを創造し与えたプローヴァが邪神に関係している存在だと疑うのは当然だった。

 黒と白の比率こそ違うが、此処がプローヴァと会った場所だと気付いた瞬間、〈創造神〉=【造物主】=邪神=プローヴァの図式が完成した。


 同じく初期ユニークスキルの【強欲神皇】に関しては、レベル百になってもなお最後の内包スキルは解放されていない。

 初期ユニークスキルで【強欲神皇】だけは奪われていないことから、邪神の〈創造〉の力でも干渉するのは容易でなかったのが窺える。

 全ての力は封印出来なかったのか、邪神が脅威を感じるのは最後の内包スキルだけだったので一つの力に注力したのかは知らないが、邪神が警戒するこの力の完全解放を目指すのが現状打破に繋がりそうだ。



「害虫のようにしぶとく生きていたのは復讐のためか?」



 次々と放たれてくる白いグングニルの連続射出に対処しながら情報を集める。

 情報収集以外にも、今の手札で次元的に閉ざされたこの異界と元いた世界を繋げるための時間を稼ぐ目的もある。

 この異界は【強欲神皇】の【発掘自在】も通じないほどに強固な世界なので、思ったよりも時間が掛かりそうだ。



「オマエにワタシの世界を奪われた。だから今度はワタシがオマエの世界を奪ってあげるわ。クロガネ・リオンという存在を奪う形でね」


「……なるほど。流石は神のいない別の世界に渡り主神面していただけはある。世界に寄生した次は個人に寄生するとは、寄生虫らしい発想じゃないか」



 目の前の邪神の肉体は生身の肉体ではない。

 【魔賢戦神】の内包スキル【神望ノ黄金腕環(ドラウプニル)】の【化身顕現(アヴァター)】で生み出された仮初の肉体だ。

 転生する俺の身体は用意出来たのに、自分自身の肉体を〈創造神〉の権能で創造していないことから、〈創造神〉の権能も万能というわけではないのだろう。

 俺の身体を乗っ取ろうとしているのも意趣返しだけが目的ではなく、死んで魂だけの状態で存在が不安定だからと考えれば不思議ではない。

 今も銀鍵を依代の核にして顕現しているようだし、かなり切実に生身の肉体を欲しているのかもしれないな。



「主を追って世界を越えて来るとは……本当に忌々しい」



 数多のグングニルを捌いても刃毀れ一つしないエクスカリバーを憎々し気に睨んでいた邪神が、片手を天に掲げる。

 白い空の至るところが人型に浮かび上がり、翼を持つ騎士のカタチを模っていく。

 奪った【神世不滅ノ勇者(エインヘリアル)】の【英霊顕現】で純白の英霊騎士が無数に生成される。

 魂だけになっても消滅しなかった死に損ないとはいえ、神性存在(デウスデア)である邪神が生み出した英霊騎士なので、一体あたりの性能(スペック)は思ったよりも高い。

 正確には分からないが、大体レベル九十ぐらいの戦士の身体能力はありそうだ。

 あの数も脅威だし、削れるところは削っていくとしよう。



「満たせ──【強奪権限】」



 白き世界を対象に領域系超過稼働能力【災界顕現(ワールド・ディザイア)】を展開する。

 領域内の自分以外の全てから体力や魔力、能力を奪う力を解放した途端、頭上の黒い星が僅かに大きくなった。

 やはり、あの黒い星は俺自身の力を表しているみたいだな。

 となると、この世界が白い理由にも察しがつく。

 邪神の目的を加味すると、此処は俺の肉体の支配権を握る場所に違いない。

 頭上の星のサイズから、今の俺の支配率は約一パーセントってところか。


 神器や肉体といった実体があることから精神世界というわけではないはずだ。

 おそらくは肉体を乗っ取る儀式場や聖域みたいな場所なのだろう。

 つまり、この世界で相手の力を削り切った者が全てを手に入れるというわけだ。

 この場所で勝利すれば今度こそ確実に邪神にトドメを刺せそうだな。

 殺到してくる万を超える数の英霊騎士達を見据えつつ、エクスカリバー以外の神器の能力も解放していった。




 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ