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黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜  作者: 黒城白爵
第十五章

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第418話 キャメロット



 ◆◇◆◇◆◇



 ゴベール地方にあるエクスヴェル公爵領の交易都市である黄金都市アヴァロンに生み出したダンジョン〈キャメロット〉は、都市と同様に〈黄金〉の二つ名を冠している。

 そんな黄金迷宮〈キャメロット〉の外観の黒い塔の外壁には当然の如く黄金の装飾が施されており、砂漠地帯の強い太陽の光を受けて燦然と輝いていた。

 その輝きを浴びながらキャメロットに足を踏み入れると、目の前には魔物が出現しないエントランスエリアが広がっている。

 床の中央に描かれている前世の十三星座を模った巨大な絵は、エントランスを彩ると同時にキャメロットの特徴を表していた。


 エントランスに入ってきた出入り口がある一面を除いた壁には十三の扉が存在していて、それぞれの扉で出現する魔物や環境、攻略難易度などが異なっている。

 扉ごとに得られる物も異なるため、キャメロットの利用者が全ての扉に均等に分かれることはなく、現状ではかなりの偏りがあった。



 第一の星道〈牡羊座(アリエス)〉。

 比較的弱い魔獣系の魔物が出現する扉であり、攻略難易度は低い。

 手に入る素材は魔導具(マジックアイテム)非魔導具に関わらず衣類系に使える物が多く、全ての扉の中でも屈指の利用者数を誇る扉でもあった。

 だが一方で、ボス級魔物はかなり強いため、通常の魔物と同じように考えて挑むと瞬殺──まぁ、死ぬことなくダンジョン外に退場させられるだけだが──されてしまうだろう。


 第二の星道〈牡牛座(トーラス)〉。

 全体的に〈牡羊座〉よりも少し強めの魔獣系魔物が出現する扉で、攻略難易度もその分だけ上がっている。

 入手可能な魔物素材には食料系が多めで、フィールドから採取できる物も野菜など食用可能な物が多いため、この扉も非常に高い人気を誇っている。

 ボス級魔物は総じてタフな上にパワーもあるため、挑戦者達の武具の損耗率が高いイメージがあるが、それでも人気のある扉だった。


 第三の星道〈双子座(ジェミニ)〉。

 扉が冠する名の通り、魔物が必ず二体一組で出現するのが特徴的な扉だ。

 出現する魔物はコンビネーションに長けた種族ばかりで、同数以上の人数で挑んでも地力が高くなければ返り討ちにあってしまうだろう。

 魔物から手に入る素材の種類は様々で、ドロップするアイテムには高品質な物が多いが、採取物に目立った物は無く、一度の戦闘における難易度も高いので人気は今ひとつな印象だ。


 第四の星道〈蟹座(キャンサー)〉。

 耐久性や防御力の高い魔物が出現する扉で、攻撃頻度は低いがその分だけ一撃一撃が致命的な威力を持っている魔物も珍しくない。

 魔物が出現する場所では鉱石や宝石といった価値の高い物が採取でき、頑丈な魔物達を排除できる手段の有無によって難易度が大きく変わるだろう。

 攻略法さえ確立すれば倒せるレベルの魔物も多いので、それなりに人気がある。


 第五の星道〈獅子座(レオ)〉。

 魔獣系魔物のみが出現する扉では最高難易度であり、その分の旨味も大きい扉だ。

 個体ごとの戦闘力が高く、その上で群れを形成する種族もいるため危険度は非常に高い。

 出現する魔獣に関連した魔導具が手に入りやすい扉でもあり、苦労して倒した分の見返りに期待できるため、自らの強さに自信がある強者は此処を選ぶ傾向にあった。


 第六の星道〈乙女座(ヴァルゴ)〉。

 外見的に美しい魔物が出現する扉であり、その身を守るために特殊な能力を持つ種族が多い。

 魔法系の能力に秀でた個体が多いため、魔導具製作に使える素材が比較的手に入りやすい。

 見た目から能力を予測し難く、行使する能力も強力なため攻略難易度は高めだが、素材の希少性から人気は高い。


 第七の星道〈天秤座(リーブラ)〉。

 人型異形型問わず多種多様な天使系魔物が出現する扉で、攻略難易度は非常に高い。

 様々なタイプのアイテムがドロップし、その希少性も高いため需要はあるものの、何が起こったか理解する間もなく退場させられるほどに全体的に魔物が強いので、利用者は少ない。

 キャメロットの使用料の中には復活料──致命傷を負うとダンジョン外に強制退場させ、致命傷を負う直前まで自動治癒するなどの諸費用──が含まれているため決して安くはない。

 そのため、何も得られずに強制退場させられると大損になるので、〈天秤座〉はハイリスクハイリターンな扉として自然と敬遠されるようになっていた。


 第八の星道〈蠍座(スコーピオ)〉。

 (さそり)を冠するだけあって、出現するのは毒を使う魔物が殆どだ。

 毒攻撃以外にも致命的な一撃を繰り出してくる魔物も多く、少しの油断でダンジョン外へ退場させられてしまう。

 その代わり、耐毒アイテムや解毒剤、それらの製作に使う素材が手に入るので、意外と利用者が多い扉でもあった。


 第九の星道〈射手座(サジタリウス)〉。

 遠距離攻撃に秀でた魔物が主に出現し、対抗手段がなければ一方的にやられてしまう扉だ。

 その対抗手段である遠距離攻撃を得意とする者達の独壇場とも言える扉であるためか、他の扉では見られない遠距離アタッカーのみで組まれたパーティーという珍しいモノを目撃することができる。

 素材の種類は様々だが、ドロップする魔導具も遠距離武器のみなので、そういう意味でも遠距離アタッカー達には人気の扉だった。


 第十の星道〈山羊座(カプリコーン)〉。

 出現する魔物の種族が天使系から悪魔系に変わったことを除けば、基本的に〈天秤座〉と変わらない。

 ドロップアイテムの種類も天使系から悪魔系に変わっただけで、ハイリスクハイリターンな点は同じだった。

 そのため、この扉も利用者は少なめだ。


 第十一の星道〈水瓶座(アクエリアス)〉。

 回復手段を持つ魔物が多く出現し、フィールドには薬草などのポーション系の素材が多く群生している。

 積極的に攻撃してくる魔物は少数派であるため、場所にさえ気を付ければ怪我を負うことなく素材採取に集中できるので、戦闘力の低い者達や安全に金を稼ぎたい者達に人気が高い。

 ボス級魔物は強力な回復能力を持っており、その攻略難易度は屈指の難しさなので、ボスに挑もうとする者は滅多にいなかった。

 貴重な回復系魔導具がドロップするよう設定しているのだが、あまり知られていないようだ。


 第十二の星道〈魚座(ピスケス)〉。

 魚という理由から水棲系の魔物のみに出現する魔物を固定した扉で、フィールドの殆どが水場になっている。

 砂漠地帯で魚介類が獲れるとあって需要は非常に高いのだが、水上戦並びに水中戦のノウハウや能力を持つ者が全くいないため、利用者も殆どいない。

 その僅かな利用者も扉を潜ってすぐの第一階層の釣り場に屯っているので、十三番目の扉の次に情報が無い扉だった。


 第十三の星道〈蛇遣座(オフューカス)〉。

 他の十二の全ての扉の最奥にいるボス級魔物を倒すと手に入る鍵を揃えなければ開かず、これまでに達成した者は誰一人としていない。

 そのため、現状では明かせる内容は何も無かった。



「それぞれの扉の特徴を簡単に説明するとこんな感じですね。ここまでで何か気になる点はありますか?」


「素材や魔導具がドロップするって言ってたけど、宝箱からって意味なの?」


「いいえ。倒した魔物をその場に一定時間放置していると、死体をダンジョンが吸収し、代わりに各種アイテムを同じ場所に排出するようになっているんです。その現象をドロップと呼称しているんですよ」


「そういうことなのねー」



 ヴィルヘルミナからの質問に簡潔に答える。

 素材アイテムや魔導具などの戦利品を毎回魔力を使って一から創造するにはコストパフォーマンスが悪いため、死体を回収して再利用することでアイテムを生み出すシステムになっている。

 ドロップアイテムの中でも素材アイテムや殆どの魔導具に関しては、その魔物一体分の死体を構成する魔力を下回る量の魔力で創造することができる。

 一部の魔導具の創造には元の死体以上の魔力が必要だが、他の創造物で不足分を賄えるため、非常に魔力効率の良いシステムになっていた。



「じゃあ、自分で解体は出来ないってことですか?」


「死体になってから解体などの手を加えるとダンジョンによる吸収対象から外れるので、自分で解体したり死体を持ち帰りたいなら、すぐに手を加えれば大丈夫ですよ。代わりに解体済みの素材や魔導具はドロップしませんけどね」


「なるほどー」



 テオドールからの質問にも同じように答えてから、今一度二人の全身に目を向ける。

 二人の全身を包む装備は、昨日のアヴァロン市内観光の最中に立ち寄ったドラウプニル商会アヴァロン支店で買い揃えた物だ。


 ゴベール大砂漠に生息する魔物である白露大蜥蜴ホワイトデュー・リザードの皮を用いて作られた白い革鎧〈ヴァイスアイデクセ〉。

 戦闘にも解体にも使える、自動修復機能が付いている以外はただ頑丈なだけの魔法合金製短剣〈金剛刃刹〉。

 体力と魔力を増強するシンプルな能力の腕環〈ダブルアッパー〉。

 キャメロットの〈蠍座〉に出現する蜘蛛系魔物の糸で作られた、軽くて丈夫な上下一式の衣服〈忍蜘蛛の黒衣〉。

 装着者を守る障壁を一日三回だけ自動展開するネックレス型魔導具〈三守の秘防〉。


 これら五つの共通装備に加えて、ヴィルヘルミナには遠近対応型手甲〈ロングフィスト〉を、テオドールには思念操作型飛剣〈シュヴァルべ〉をそれぞれ買い与えている。

 この二つの武器の価格は共通武器五種の合計よりも高く、金額を裏切らないだけの性能があるので、大半の扉の第一階層の魔物ならば倒すことができるだろう。



「今の説明を聞いて行きたい扉は決まりましたか?」

 

「何処でもいいの?」


「構いませんけど、二人では戦えない扉だったら見学してもらうことになりますね」


「「じゃあ、双子座!」」



 自分達が双子だからかな?

 まぁ、双子座で出現する魔物次第ではテオドールとヴィルヘルミナでも倒せるかもしれないな。

 挑む扉が決まったので、テオドール達を引き連れて双子座の扉へと向かった。



 

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