第400話 神域と神域
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「──ふむ。難しいな」
「何をやってるのですか、リオン?」
自領の一つである神迷宮都市アルヴァアインの自宅の屋敷の居間で作業を行なっていると、横合いからリーゼロッテに声を掛けられた。
「いや、昨日の仕事でふと思い付いたことがあって実現できるか試しているんだが、想像以上に難しくてな」
「そうでしたか……杖、ですか?」
「ああ。神杖ガンバンテインだ。まぁ、コレが本題というわけではないんだが」
ソファに座ったまま手に持つ神器〈魔源災戦の賢神杖〉に意識を集中する。
同時にユニークスキル【無限源喰の世界龍】の内包スキル【創生ノ神戯】の派生スキル【世界創星】を発動させ、ガンバンテインとユニークスキル【魔賢戦神】に干渉していく。
昨日の〈生廃の魔王〉の再封印作業の際、俺は【世界創星】を用いてヴィクトリアの神域の封印の力により生み出された封印箱と俺の神域の時間の力に干渉し、二つの力を融合させた。
この時の一件で、自他の神域の力を融合できるならば、自分の神域の力と神器を融合させることも可能ではないかと考えた。
実際、少し前の皇太后ベアトリクスの救出時に手に入れた神器ブローズグハッダは、俺の中にあったスキルを取り込んで、その存在を改変させていた。
俺が今試行しているのとは逆のパターンではあるが、神器のみで実現できたならば可能性はあると考えている。
多数ある神器の中でもガンバンテインを選んだのは、普段持ち歩かない杖型なのと、一番成功する可能性があると直感したからだ。
「見た目では特に変化はありませんね」
隣に座ったリーゼロッテが俺の手元のガンバンテインを覗き込む。
残念ながら現状はただの杖型神器が俺の手の中にあるだけだ。
【強欲神皇】でガンバンテインを分解・吸収して能力を奪うのは、今やってることの趣旨とは違う。
そもそも神器に【強奪権限】が通じるか分からないけどな。
「まぁ、取っ掛かりさえ掴めない状況だから、それまでは変化は見られないだろう。ん?」
「どうしました?」
「……これは。なるほど。リーゼか」
「はい?」
これまで全く手応えがなかったが、リーゼロッテが隣に座った瞬間ガンバンテインの構成に揺らぎを感じた。
一体何が原因かを一瞬考え、すぐにリーゼロッテが所持している特殊系スキル【星霊女王】に思い至った。
俺のユニークスキル【世界と精霊の星主】の【星王伴侶】によってリーゼロッテに与えられたスキルであり、その効果の中には俺と彼女が互いに近くにいる場合に双方の全能力を強化するというものがある。
存在自体は頭にあったが、全能力強化はあくまでもオマケの効果なのと、数多のスキルや称号による創造補正がかかっている状況で今更強化一つ入るだけで変わるとは思わなかったので、無意識に選択肢から外していた。
そんな解決策となったリーゼロッテが偶然此処を通りかかるとは……これも運気の高さ故か。
「杖が変化するぞ」
リーゼロッテにも分かるように伝えると、不壊であるはずの神器の構成が崩れ、魔力粒子とは異なる粒子へと変化する。
ガンバンテインは神器だし、そのまま神力、神力粒子と言うべきか。
ガンバンテインを構成していた神力が俺の中の魂へと入っていき、魂の中にある【魔賢戦神】と一体化していった。
[ユニークスキル【無限源喰の世界龍】の【創生ノ神戯】が神器〈魔源災戦の賢神杖〉とユニークスキル【魔賢戦神】へ干渉します]
[神器〈魔源災戦の賢神杖〉が◼️◼️◼️へと変化しました]
[◼️◼️◼️がユニークスキル【魔賢戦神】へと流入します]
[神器〈魔源災戦の賢神杖〉を構成する◼️◼️◼️によるユニークスキル【魔賢戦神】の存在改変に成功しました]
[ユニークスキル【魔賢戦神】の能力が変化します]
[ユニークスキル【魔賢戦神】の【神焉槍顕現】が【黄昏ノ神焉槍】へ変化しました]
[ユニークスキル【魔賢戦神】の【情報賢能】が【主神ノ賢能】へ変化しました]
[ユニークスキル【魔賢戦神】の【天地駆ける神馬の蹄】が【賢魔ノ戦神杖】へ変化しました]
[ユニークスキル【魔賢戦神】の【情報蒐集地図】が【世界俯瞰ノ神覚】へ変化しました]
[ユニークスキル【魔賢戦神】の【複製する黄金の腕環】が【神望ノ黄金腕環】へ変化しました]
[ユニークスキル【魔賢戦神】の【運命の戦乙女の祝福】が【運命逆天ノ戦乙女】へ変化しました]
[ユニークスキル【魔賢戦神】の【不滅の勇者の祝福】が【神世不滅ノ勇者】へ変化しました]
ふむ。内包スキル一つ一つの能力名は大きく変わったが、効果自体はそこまで大きく変わっていないようだ。
【天地駆ける神馬の蹄】だけは一見すると跡形も無く消えているが、後釜である【賢魔ノ戦神杖】にある身体強化能力の中に含まれていた。
そのままの形というわけではないが、ちゃんと活かされているようで何よりだ。
「ガンバンテイン自体を具現化させることも可能、と」
意思一つで手元に神杖ガンバンテインが具現化された。
ユニークスキルに取り込まれたことによって、元々のガンバンテインが持っていた殆どの能力はこうして具現化させずとも行使可能になった。
唯一の例外は【死ノ災厄神刃】のみで、この力を行使する際には能力の発動媒体として神杖ガンバンテインを具現化させる必要がある。
実質的に杖ではなく大鎌として使うようになったと言うべきだろう。
「成功したようですね」
「ああ。これもリーゼのおかげだ」
「そうですよ、ちゃんと感謝してください。何のことか分かりませんが」
「だろうな」
リーゼロッテの物言いに苦笑しつつガンバンテインの具現化を解く。
総戦闘力に変化はないが、神杖ガンバンテインを取り出さなけば使えなかった能力が無手のままでも使えるようになったことで利便性が大きく向上し、実質的に戦闘力が上がったと言っても過言ではない。
〈勇者〉としても〈魔王〉としても様々な面において役立ってくれそうだ。




