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第395話 神剣ブローズグハッダ



 ◆◇◆◇◆◇



 前後には吸血鬼の騎士達。左右には無人の牢屋。

 四方八方を囲まれているわけではないため、使用する力が限られていても対処するのは簡単だ。

 全身の皮膚を動かし、目に見えないほどの傷口を無数に作り出すと、そこから血の霧を生じさせる。



「な、なんだ?」


「前が見えない!」


「これは、グハッ!?」


「か、身体が……ッ!?」



 俺の所持スキルの中でも屈指の吸血鬼らしい力である特殊系スキル【煌血の大君主】。

 その能力【君主権限】という血液への支配能力を用いて自らの血を霧状に放出し、目眩しと同時に吸血鬼の騎士達の体内へと血を流入させた。

 そこから更に、【君主権限】と同じ内包スキルである【支配ノ血】を発動させて騎士達を支配していった。



「ふむ。同時に支配するのはこれが限界か。なら、残りはいらないな」



 俺を包囲していた騎士達の七割を支配したところで、それ以上は支配経路(パス)を構築できなくなった。

 【支配ノ血】でこんな風に大人数を同時支配したことはなかったので知らなかったが、どうやら支配できる数には上限があったようだ。

 もしかすると数で引っ掛かったのではなく、支配する全ての対象の強さの総量の方に上限があるのかもしれない。


 普段は使う機会のない能力だし、支配する対象も大量に必要なので検証は気が向いたらでいいだろう。

 指を鳴らすと、支配下に置けなかった騎士達は身体の内側から生成された血の結晶によって全て絶命した。



「行け」



 支配した騎士達を神器を体内に有しているカイウスへと差し向ける。

 その光景を前にして、カイウスは先ほどの俺と同じように全身から血を放出すると、それらの血を剣状に変化させた。

 形成された無数の血剣が射出され、躊躇いなく騎士達を穴だらけにしていった。


 血鬼神器〈血濡れの鬼剣(ブローズグハッダ)〉。

 元になった四血神器を分割した後に〈世界〉から贈られたであろうその名に相応しく、辺りを血に染め上げていた。

 射出された血剣がそのまま此方に飛来してきたので、手元に血の槍を生み出して全て打ち落としていく。

 更に失った手駒を補填するため、自分の血から下僕を生み出す。



「──煌血装(ブルート)血戦ノ竜公騎聖(アルカード)〉」



 黒血製の鎧を身に纏った黒い長髪の槍使いの偉丈夫を生成し、カイウスへと向かわせる。



「──煌血装〈支配ノ鮮血女王(カーミラ)〉」



 続けて、黒血製のドレスを纏う紅い長髪の妖艶な美女も生み出し、カイウスが放つ血剣の弾幕に対処させる。

 【煌血の大君主】の内包スキル【煌血魔皇サングイス・インペラトル】により生成さたこの二体は、それぞれ一体ずつしか生み出せない代わりに、その性能(スペック)は上級Sランクの冒険者に匹敵する。

 その二体に向けて、同じ内包スキル【煌血聖皇(ルクス・インペラトル)】を行使して更に性能を強化していった。


 黄金の燐光を纏ったアルカードが血剣の弾幕を潜り抜けてカイウスに肉迫し、その手に携えた紅き聖槍を彼へと突き出す。

 その一撃はカイウスの手に生み出された長剣──神器ブローズグハッダの本体によって防がれた。

 そこから返す刃でアルカードの首が刎ねられるが、アルカードは血で作られた具現体なので死というモノは存在しない。

 そのため、首無しの状態のままカイウスを拘束すべく飛び掛からせる。

 だが、振り解くように勢いよく振るわれた手刀によってバラバラに破壊されてしまった。



「凄まじい身体能力だな。それも神器の能力か?」


「その通りだ」



 そう言葉を返すと、今度は神剣片手にカイウスが逆に距離を詰めてきた。

 変わらず放たれ続けてくる血剣を同じく血剣を飛ばして相殺していたカーミラが、分厚い血の壁を形成してカイウスの妨害を行う。

 その壁は一瞬で破壊され、大量の血の触手で攻撃しようとしたカーミラも一撃で斬り伏せられた。

 スペック上は上級Sランク相当だとはいえ、ユニークスキルなどの固有能力は持たないため、戦士系の神器持ちには敵わないようだ。

 まぁ、狭い場所なのも瞬殺された理由なのだが、単純にカイウスが使う神器ブローズグハッダの能力が優秀なのが一番の理由だろうけど。



「興味深い力を持つ奴だな。ユニークスキルか?」


「ある意味ではあっているが、攻撃しないのか?」



 カーミラを破壊した後、俺の目の前で立ち止まったカイウスは神剣の剣尖を向けたまま言葉を重ねてきた。



「降伏しろ。その力をスキュアクスのために使うならば生かしてやる」


「全ての血鬼神器を渡すなら考えてやろう」


「そうか……では、敵として対処する」



 神剣が振るわれる先は俺の足。

 先ほど騎士達に生きたまま捕らえるよう指示を出していたし、おそらくは手足を斬り落として無力化するつもりなのだろう。

 色々と俺から聞き出したいことがあるんだろうが、もう勝った気でいるとは笑えるな。



「何?」



 無表情だったカイウスの顔が驚愕の表情へと変わる。

 紅色の豪奢な神剣が、妖しく煌く濃紫色の刀に受け止められる。

 やはり、神器には神器で対処するしかないようだ。



「それは、神器かッ!」


「ご名答。遊びはこのあたりにして、そろそろ本番といこうか」



 神器〈財顕討葬の神刀(エディステラ)〉を久しぶりに鞘から解き放つと、神剣ごとカイウスを弾き飛ばした。



 

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