第344話 残り一レベル
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[一定条件が達成されました]
[ユニークスキル【強欲神皇】の【拝金蒐戯】が発動します]
[対価を支払うことで新たなスキルを獲得可能です]
[【妖星王眼】【心霊掌握】【深淵の帝言】【環境適応】【天仙気覚】【黄金土壌】【君主の御心】【魔眼強化】【空想具象】【霊地の支配者】【霊地の管理者】【種族の導き手】【星の玉座】【精霊源種】【傲慢なる高潔】【星願祈祷】【比翼の理】【星の愛し子】【精霊を統べる者】【星界の大君主】【精霊王】〈妖精真眼〉と大量の魔力を対価として支払い、ユニークスキル【世界と精霊の星主】を得ることができます]
[新たなスキルを獲得しますか?]
[同意が確認されました]
[対価を支払い新たなスキルを獲得します]
[ユニークスキル【世界と精霊の星主】を獲得しました]
まさか〈精霊王〉の力が神域権能級ユニークスキルになってしまうとはな。
〈精霊王〉の力が強力になること自体は構わないのだが、この展開は予想外だった。
[ユニークスキル【世界と精霊の星主】の内包スキル【星王伴侶】が発動しました]
[個体名:リーゼロッテ・アルフ・リ・ティターナ・フォレス・トーレ・ユグドラシアが取得条件を満たしています]
[対象を【星王伴侶】に決定しますか?]
まだ確認している最中だった内包スキルが自動発動し、その対象にリーゼロッテが自動的に選ばれていた。
彼女の正式なフルネームは彼女のステータスを視た時から知っていたし、彼女自身からも直接教えてもらっていたので驚きはないが、こうして改めて見るとやっぱり長い。
リーゼロッテが普段フルネームを名乗ろうとしないのも分からないでもないな。
[同意が確認されました]
[個体名:リーゼロッテ・アルフ・リ・ティターナ・フォレス・トーレ・ユグドラシアが特殊系スキル【星霊女王】を取得しました]
内包スキルから伝わってくる情報によれば【世界と精霊の星主】の下位互換のような特殊系スキルのようだが、具体的な差異については分からない。
リーゼロッテに尋ねようと思ったが、この封印異空間内にいる本体の俺から外へは連絡が取れなかった。
流石に空間的に遮断された異空間から外部に連絡を取ることはできないようだ。
とはいえ、本体と分身体間の繋がりは維持されたままだったので、この空間の外にいる分身体を経由してならば外部と連絡を取れるみたいだけど。
まぁ、リーゼロッテに詳細を聞くのは後でいいか。
「おや?」
三頭の神狼の顕現状態を解除していると、現在活動させている分身体のうち、ちょうどアナスタシアと話している最中だったランスロットが、彼女から俺の身体に起きている異変について指摘されていた。
【強欲なる識覚領域】を使って本体の顔を確認してみたところ、俺の濃紫色の瞳が黄金色に変化していた。
その理由について一瞬だけ考え、すぐに新たに手に入れたユニークスキルによる影響であることが分かった。
ユニークスキル【世界と精霊の星主】の固有特性〈妖星神眼〉と内包スキル【支配ノ黄金】の存在によって瞳の色彩が自動的に変化していたようだ。
このまま戻らないのかと考えていると、俺の意思に従うように瞳の色が元の濃紫色に戻っていった。
少し調べたところ、千里眼的な力をはじめとした〈妖星神眼〉の力だけを使用するならば元の色のままだったが、【支配ノ黄金】を行使すると強制的に黄金色の瞳に変化することが判明した。
まぁ、能力の行使が見た目で分かってしまうのは難点だが、【支配ノ黄金】は日常的には使用することはない能力なので特に問題はない。
本体や分身体のように既に外見的特徴が知れ渡っているのに目の色を変えると、知り合いに会った際に毎回説明する羽目になりそうなので、それぞれ元の色のままでいいだろう。
ただ、そこまで知り合いがいない分身体に関しては黄金の瞳をデフォルトにしても良いかもしれない。
女性体であるフリッカなどは人と接したのは数える程度だし、ちょうど良さそうだ。
フリッカという女性型分身体には、冠位魔女の一人である〈黄金の魔女〉としての存在感を示す役割がある。
そう考えると、冠している〈黄金〉の名前的にも、黄金の瞳をデフォルトにしておいた方が相応しいかもしれない。
黄金の髪と絶世の美貌も〈黄金の魔女〉の冠位称号によって固定化されていたし、どうせなら瞳も黄金色で固定化するとしよう。
「全部終わったぞ」
『ありがとうな、ご主人。オイラ達の王を解放してくれて』
〈精霊王〉である〈悲嘆の魔王〉からの強制召喚を防ぐために身に付けていた【萬神封ずる奈落の鎖】の漆黒の鎖を解除して、全身の精霊紋を通して六大精霊に話しかけた。
火の大精霊からの感謝の言葉を皮切りに、他の大精霊達からも同様に感謝を告げられていく。
『まさか最後は食べるとは思わなかったわ』
「〈権能〉の所為で剣や魔法だと時間が掛かりそうだったからな。爪で裂く姿を見せるのもどうかと思って、最後は丸呑みにして終わらせたわけだ」
精霊紋は封印していたが、その精霊紋を通して六大精霊達も戦闘の様子は見ていた。
〈悲嘆の魔王〉を丸呑みにして終わらせたのは、無闇に自分達の王がボロボロにされる姿は見たくないだろうという六大精霊達に対する配慮だ。
丸呑みで倒すのが配慮になるかどうかはさておき、おかげで然程時間を掛けずに倒すことができた。
『マスターが次の〈精霊王〉になるとは予想通りだったけど』
『〈精霊王〉の力がユニークスキル化するのは予想外』
「俺だって予想外だったさ。ま、この力の使い方については追々調べていくさ」
人型の獣神形態を解除してから元の姿に戻ると、封印の異空間の出入り口が使用できないように封じていた【天空神ノ光輝】の絶対防御も解除する。
最後に背後を振り返り、忘れ物がないかの確認を済ませてから封印の異空間の外に出た。
「おかえりなさい。無事に倒せたみたいね」
「おかえりなさいませ。リオン様の無事のご帰還をお喜び申し上げます」
ヴィクトリアとシャルロットの二人の有翼美女からの出迎えに対して頷きを返す。
彼女達に続くように魔王討伐を讃える神殿長達からの声に適当に応えていく。
ふと気になったので、たった今出てきたばかりの魔力の渦を振り返りながらヴィクトリアに尋ねた。
「なぁ、ヴィクトリア。この封印の異空間って、封印対象がいなくなったらどうなるんだ?」
「時間経過で消滅すると聞いてるわね」
「それなら貰っていいか?」
「貰う? ああ、アレね。後はこのまま消えるだけだから構わないわよ」
「では遠慮なく。奪い解け──【強奪権限】」
超過稼働能力【貪欲なる解奪手】を発動させて、今は亡き〈境界王〉が生み出した封印の力を吸収していく。
封印の異空間に入るために外側に張られていた侵入防止の光の檻を解除しているので完全なモノではないが、力の一端でも手に入れられれば僥倖だ。
[解奪した力が蓄積されています]
[スキル化、又はアイテム化が可能です]
[どちらかを選択しますか?]
[スキル化が選択されました]
[蓄積された力が結晶化します]
[スキル【境界の欠片】を獲得しました]
[スキル【虚数時界】を獲得しました]
お、どうやら無事に獲得できたようだ。
感覚的に分かったが、やはり入手できたのはオリジナルの封印の力の極一部だけらしい。
「〈境界王〉の力は手に入れられた?」
「一部だけな。封印対象も倒した後だし、完全な状態でもないからこんなものだろう」
「そう。流石にそこまで都合よくはいかないわよね。他に何か収穫はあったかしら?」
「まぁ、色々な。詳しくは後で言うよ。あ、そうそう。魔王を倒したことでレベルが上がって、レベルが九十九になったぞ」
「……本当に?」
「ああ、事実だ」
「おめでとうございます、リオン様」
「ありがとう、シャルロット。漸く超越者まで後一歩まで来たよ」
レベル百になったらヴィクトリアと同じ超越者になれる。
そうなったら、公的に超越者であるヴィクトリアと婚約を結ぶことができる。
今でもアークディア帝国とエリュシュ神教国の上層部には内々に認められているが、やはり他国の超重要人物と婚約するには、ちゃんと公に認められるに限るからな。
「……リオン」
「どうした、ヴィクトリア?」
「早く他の魔王を全滅させてレベルを上げてきなさい」
目が本気なヴィクトリアの言葉に苦笑を返す。
まぁ、確かに早急にレベルを上げるなら大魔王を除いた残りの魔王達を討伐するのが一番早いだろう。
だが、別にそんなに急ぐほどに切実な理由はないので、今のところ全ての魔王を殲滅するつもりはない。
〈太母の魔王〉はランスロットとして倒す予定があるが、他の魔王達については未定だ。
とはいえ、前世で別の異世界にいた時から待たせているとも言えるヴィクトリアをあまり待たせるのも可哀想なので、〈太母の魔王〉以外にも一、二体ぐらいは追加で倒しても良いかもしれない。
そうだな……なんとなく〈侵星の魔王〉でも倒したら良いことが起こりそうなので、この魔王に関しては倒しておくとしようかな?




