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第302話 巨木からのプレゼント



 ◆◇◆◇◆◇



 中継拠点予定地に戻ってきた開拓部隊の者達とヴァルハラクランの団員達の視線を一手に集めながら、【無限宝庫】から取り出したエリアボス〈喰らい増す魔天樹アルボスト・フローヴォア〉の巨体を切り分けていく。

 神刀アメノハバキリから放たれる斬撃波によってフローヴォアの巨大な死骸が割断される様は見応えがあるのか、その度に観衆から感嘆の声が上がる。

 全長百メートルを軽く超えるサイズの死骸はそのままだと使い勝手が悪い。

 暇潰しの玩具として使用するためには、事前に細かく切り分けておく必要がある。



「まぁ、こんなところか。ほら、『いつまでも観てないで解散』だ。団員達は一時間後にまた集まるように。それまでは部隊ごとに反省会や休憩でもしていてくれ」



 今から使う素材以外を【無限宝庫】に収納すると、いつまでも屯っている観衆を【君主の言葉】の力も使って半強制的に解散させた。

 ただし、第一部隊であるエリン達はそのまま此方にやってきた。



「デッカい木だったわね、ご主人様。何処に生えてたの?」


「このエリア帯のボスだよ。事前の説明会で言ってただろ?」


「えっと……」


「カレンちゃんは半分寝てたものね」


「な、なーに言ってるのよセレナさんったら……ちょ、ちょっとだけ寝てたかも?」


「まぁ、団員に戦わせる予定はなかったからいいけどな。説教はエリンに任せた」


「お任せください。以前からの夜更かしに間食の件も含めて徹底的にやります」



 姉からの容赦ない仕置きが決定したカレンが絶望感漂う表情を浮かべている。

 そんな自業自得の狐耳少女から視線を外すと、【無限宝庫】から樹精宝杖フォルヴィアを取り出す。



「綺麗な杖ね。リオンくんが作ったの?」



 フォルヴィアを覗き込むようにして身体を寄せてきたセレナの肩を抱きながら説明する。



「いえ、神刀でエリアボスを倒して手に入れたんですよ。面白い能力があるようなのでエリアボスの素材を使って少し遊ぼうかと」


「……この国でエリアボスの素材で遊ぶとか言うのはリオンぐらいじゃないかな?」


「この世界では、じゃない?」


「確かにそうかも」



 シルヴィアとマルギットが何かを言ってるが、それを無視してフローヴォアの幹の一部へとフォルヴィアを翳す。

 魔法効果を強化する基本能力【魔導天威】は別にどうでもいいとして、第二能力の【樹使生誕】から使ってみるか。



「……なるほど。使用する素材と量によって生み出せるウッドゴーレムの種類が異なるのか。じゃあ先ずは一番下の〈樹木人形(ウッドドール)〉からだ」



 フォルヴィアをフローヴォアの幹の一部へと翳すと、幹の表面が盛り上がって人型の木製ゴーレムが生み出された。

 フォルヴィアだけの力ならば、一応人型だと分かる程度の木製ゴーレムが生み出されるようだが、俺の〈創造の勇者〉の称号補正などがプラスされた結果、一目で人を模したと分かる精巧な木製ゴーレムが形成されていた。

 性能も上がっているようだが、ただ一つ問題があった。



「リオンそっくりですね」


「これがデフォルト設定なのか……取り敢えず基本設定は顔無しにしておこう」


「あっ、何をするんですか」



 俺にそっくりな顔立ちウッドゴーレムのデザインを変更すると、ペタペタとその顔を触っていたリーゼロッテが抗議の声を上げる。

 リーゼロッテの傍では同じように触ろうとしていたマルギットとセレナの姿があった。

 リーゼロッテからの抗議の声と他二人からの抗議の視線をスルーして、他の種類のウッドゴーレム達も創り出していった。



「〈樹木兵士(ウッドソルジャー)〉〈樹木騎士(ウッドナイト)〉〈樹木闘将(ウッドジェネラル)〉〈樹木巨人(ウッドジャイアント)〉。そしてギリギリで〈樹木亜龍(ウッドワーム)〉か。元の素材が大きいから結構作れたな」


「そうですね」



 リーゼロッテ達と共にウッドゴーレム達を見上げる。

 フローヴォアの幹の一部を全て使い切って創り出した六種のウッドゴーレム達。

 ウッドジャイアントとウッドワームの二体は名前の通り巨体サイズであるため、先ほど解散させた者達の視線がまた此方を向いているのが感じられる。

 それらの視線を無視して【情報賢能(ミーミル)】でウッドゴーレム達を解析していく。



「ふむ……使ったのがエリアボスの素材なのと、俺の称号効果が合わさったことで高位のウッドゴーレムは分類上では魔物になるみたいだな」


魔導具(マジックアイテム)のゴーレムと自然発生する魔物のゴーレムのような違いですか?」


「ああ。だから最初から魔力や肉体の自己回復機能や各種能力を持っているようだ」


「下位のウッドゴーレム達は違うのですね」


「ウッドドールからウッドナイトまでは魔導具タイプのゴーレムみたいだ。まぁ、もっと高ランクの素材を使ったり、更に称号補正が増したりすれば魔物タイプになるかもしれないが、そこまでするメリットはないな」



 それに、そこまでしても魔導具タイプしか生み出せない可能性もある。

 下位のウッドゴーレムの魔物タイプのメリットといったら、魔物タイプなので倒したら経験値が得られるのと弱いから倒しやすいぐらいしか思い付かないので試す気はない。



「あ、魔物タイプならアイテムが手に入るかも」

 


 さっそく検証すべく、【強欲神の虚空権手】でアメノハバキリを鞘から抜刀し、高位ウッドゴーレム三種に向かって振り抜いた。



[神器〈龍喰財蒐の神刀〉の能力【財ヲ顕ス強欲ノ刃】が発動しました]

[討伐対象から財物が顕在化(ドロップ)します]

[アイテム〈樹闘将の護符〉を獲得しました]

[アイテム〈樹金魔鎧ディエリヴァ〉を獲得しました]

[アイテム〈樹龍戦斧バオムドラ〉を獲得しました]



 思った通り、魔物タイプである高位ウッドゴーレム達は【財ヲ顕ス強欲ノ刃】の対象に含まれていた。

 能力を軽く調べた感じだと、〈樹闘将の護符〉はカレンに、〈樹金魔鎧ディエリヴァ〉はセレナにちょうど良さそうなのでプレゼントするとしよう。

 【無限宝庫】の収納空間に自動的に収納されていた二つのアイテムを取り出すと、カレンとセレナにそれぞれ渡した。



「というわけでこっちのアミュレットはカレンに。そして、こっちの服はセレナ先輩にプレゼントです」


「やったー! ありがとう、ご主人様!」


「嬉しいけど、本当にいいの?」



 素直に喜びお礼を言うカレンと、リーゼロッテの方をチラッと見ながら尋ねてくるセレナの姿が対象的だな。



「勿論ですよ。リーゼには別に用意する予定ですので」


「そういうことなら。ありがとう、リオンくん」


「どういたしまして」



 俺の言葉を聞いたリーゼロッテからの視線の圧が消えたことに胸を撫で下ろす。

 リーゼロッテには〈黄金の魔女〉の力で作ったアイテムをプレゼントする予定だ。

 まぁ、何にするかは決めていないので、まだ作っていないが。

 それはそれとして。

 先日、前衛三人に渡した〈天賦勇環〉よりランクは劣るが、カレンとセレナの二人が喜んでくれたようで良かった。



[特殊条件〈魔植物大量討伐〉〈魔植物の天敵〉などが達成されました]

[スキル【魔植物種殺し】を取得しました]



 一連のやり取りの裏で来ていた通知に意識を向ける。

 ドロップアイテム以外にも、ダンジョンから帰還後に【魔植物顕現】を使って取得する予定だった特効スキルが思いがけず手に入っていた。

 どうやらエリアボスのフローヴォアを倒しにいく道中で結構な数を倒していたようだ。

 予定した事柄が一つ解決してラッキーではあるのだが、魔物タイプとはいえウッドゴーレムも魔植物に含むのだろうか?

 確かに木製ではあるので、植物系の魔物の範疇と言われたらそれまでだが……。

 疑問が残るが、大量にある予定の一つが無くなったので良しとしよう。



「なるほど。一度倒したら素材の価値や力のようなモノが落ちるみたいだな」


「死骸から同種は生み出せないということですね?」


「そういうことだ。流石にそこまで都合良くはいかないらしい」



 高位ウッドゴーレム三種の死骸、いや残骸?を調べて分かったことを反芻する。

 取り敢えず納得できたので、次は第三能力【樹改工換】で遊ぶとしよう。



「ん……そうか」


「どうしました?」


「いや、なんでもない」


「女ですね」


「間違いないかと」


「百パー間違いない」


「大体女絡みよね」


「うん、女だな」


「まぁ、リオンくんだからね」


「……魔塔の方での仕事の依頼が来ただけだよ」


「そうでしたか。すいません。また女絡みかと思いました」


「いや、気にする必要はないさ」



 魔塔関連なのは事実だが、女絡みの話なのは当たってるしな。

 分身体(ランスロット)を経由しての話だと言えば、リーゼロッテ達も相手がアナスタシアだとすぐに分かっただろうけど。



「そういうわけだから、明日は朝一でセジウムに向かうから此処は任せた」


「分身体でいいのでは?」


「向こうにもリオンとして顔を出す必要があるからな。同時に存在する公式記録を残すわけにはいかない。俺一人なら迷宮から瞬時に抜け出せてもおかしいとは思われないさ」


「転移不可の迷宮から瞬時に抜け出せること自体がおかしいのですが……まぁ確かに、情報を明かすにしてもそっちの方がマシですね」


「だろう? というわけで明日は任せた」


「分かりました。私がやることはあまりありませんが任せてください」



 さて、開拓部隊責任者のクリストフと、ヴァルハラクランの現場隊長的なフェインには話を通しておくか。

 今日一日で小エリアの掃除は大体済んだようだし、明日一日俺が離れても問題ないだろう。

 大体の内容はランスロット経由で知ってるが、明日改めてアナスタシア本人の口から聞くとしよう。



 

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