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ep5.最強の武器

 「さあ、そろそろ行きましょう。無料召喚、まだでしたよね?何か武器を持たないと」


 ルルはぽんっと手を叩くと、笑顔を作った。


「そうだな」


 助けられるあてもないのに、脈絡もなく「死」を告げた事を俺は後悔していた。


 召喚所に着くと、レンガ作りの建物には葉が生い茂り、宿屋と一体型となったその施設は街の華やかさとは違うひっそりとした雰囲気を放っていた。

 中に入ると、本が積み上げられた部屋の片隅に、後任の召喚士が座っていた。

 薄ピンクの髪の毛に、綺麗な薄ピンクの羽。

 頭にはルルと同じ花飾りをつけている。


「リリ!お店番ありがとう!」


 ルルは後任の召喚士に抱きつく。


「ルル〜。今日も暇だわー。その人は?」


「あっ、ユウリさん。新しい冒険者さんなの。

リリ、無料召喚お願い」


「はーい。待ってましたー。リリが自分で冒険者さんを連れてくるなんて、珍しいねー」


「わ、私がね、召喚の練習をしていたら、間違えてユウリさんを召喚しちゃって……だから、私が案内しているの」


「フーン。そんなのいつもの事じゃないー?ユウリさんと一緒にいたいのー?」


「いっ、いいでしょ!とにかく、早く無料召喚っ!」


「はーいはい。いーきますよーっと」


 リリが杖を振りかざすと杖からは青色の光が放たれ、シンプルな小型の剣が空中に現れる。


「はいっ、こちらですねー。どうぞー」


リリがそれを受け取り、手渡してくれる。


(N……ノーマル武器だ……)


 青色の演出の時点で察しがついていたが、最低ランクの主に合成に使われる武器だ。

 まあ、序盤になら多少は戦闘にも役立つだろう。


「ありがとう、リリ」


「どういたしまして、ですー。これからどうするのです?

やっぱり、メインクエストにいきますかー?

それとも〜?」


 リリはユウリとルルに交互に視線を送ると、ルルがわたわたと思いついたように手を挙げた。


「あっ、あのっ、じゃあ、私がおともしますよ!まだフレンドさんとかいないと思いますし。リリ、お留守番、お願い。ねっ?」


 それは好都合だ。

 ルルの死を回避するためにも、なるべく行動は一緒にしておきたい。


「おー。ルル、そうしよそうしよ〜。最近は元気がなかったのに、元気になった?ユウリさんのおかげ?」


「えっ、なっ、なにを言うんですか!私はいつも元気ですっ!」


 ルルはぱたぱたと羽をまたたかせた。


「じゃあ、いってきます!」


 リリに手を振り、ルルと召喚所を後にする。


 その瞬間——

 突然強い閃光が放たれ、目が眩む。


「何だ!?」


「きゃあっ!!!」


 禍々しい気配が立ち込め、ルルの叫び声が聞こえた。


 強い光に逆らうように目を開けると、そこには妖しげな笑みを湛えた男が立っていた。

 真紅の瞳に、深い闇の色の羽。

 その手には、ぐったりとしたルル——


「やっとあの結界から出てきたか。

まったく、手こずらせやがって。

魔族には召喚の力が必要なの、知ってるよなあ?」


「お前……エルダ!」


「ほう、人間か。俺を知っているとは、俺も有名になったものだ」


 こいつは妖精族を狙う魔族の男だ。

 知っているさ。お前だって、俺が企画を立てたんだから。

 召喚の力のあるルルをずっと狙っていたが、ここでルルを連れ去り、召喚の力を使わせた後。

 ——ルルを殺す奴だ。


「ユウリさん、ルルが……どうしましょう」


 腕にしがみつき、震えるリリ。リリを後ろに下がるよう指示をし、俺は一歩前に出た。


「リリ、落ち着け。俺が何とかする」


 そうだ。俺はすべて、わかっている。

 このシナリオは頭に入っている。

 それならば、回避してやる。


 ルルの死を。


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