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ep20.計画通りの運命

 地下は薄暗いが、よく見ると宿屋のように並んだ扉が複数あり、どれも荒れて傷がついていた。表のカフェとは別世界のような荒廃っぷりだ。まあ、地下はならず者たちの溜まり場だからな。


「とりあえず……調べておくか」


 慎重に扉を開けていくと、やはり荒れた部屋が多く、バーのようなカウンターがある部屋もあった。酒瓶がそこかしこに転がっている。

 表向きはカフェだが、地下では酒を売っていたのか。


 こういう場面に出くわすたびに、ゲームの設定外にも生活があったということを実感する。


「ユウリ、これ……見つけた」


「何だ?」


 ヴィオが持ってきたのは、計画書だった。

 見たところ、これは魔族側の計画書ではなく、シグマの書いたものだろう。「ルルを死亡させ、歴史を計画通りに進める」ことが主目的として書かれていたからだ。

 そして、そこにはもう一つ、重大な記載がなされていた。


「計画通りにルルを死亡させられない場合は、シナリオが狂い、もっと酷い結末になるだろう」と。


「ユウリさん、どういうことでしょうか……」


 ルルが不安げに俺の顔を見る。

 そうだな……この結末とはおそらく「サービス終了」もとい、「サ終」ことか?

それとも、終わりのシナリオのことを指している?

 一応、いつサ終になってもいいようにと、最近は終わりのシナリオも用意していた。それはあまりいいシナリオとはいえず、戦争によって魔族も妖精族も滅ぶというもの。応援してくれたユーザーにとっては、衝撃であり許しがたい展開であると俺は思う。もちろんこの世界にとっても、だ。

 しかし、あのクソ上司がどうせ終わるならと、絶望ばかりを詰め込んできた。


「もっと酷い、か」


 そもそも、ルル以前にヴィオだってシナリオを少し曲げているが……ヴィオは本来、病気を治すイベントはもっと後に起きるはずだった。しかし俺はそれを無理矢理捻じ曲げ、規定の日よりも早く薬を持って行っている。

 ――シナリオ的にはそこまで影響がないということか?

 ルルは死という重い分岐がある。エルダの行動も大きく変わっているしな。


「これは後で考えるよ。ルルは心配しないで」


 計画書をくしゃ、とまるめてポケットにしまう。


「来て!ユウリ!これ……やばくない?」


 ミリアの呼ぶ声で部屋へ行くと、そこはまるで研究室のように改造されており、不気味な薬品がぽこぽこと音を立てている。


 「これ……毒だ。魔法のままならない雑魚兵にここで作った毒を持たせていたのか」


 本来街に毒を撒くのはエルダのはずだった。だがそのエルダがいなくなった今、ここで作った毒を街に撒くというのがシグマの計画だったのだろう。


「無力化できるか?ルル」


「はい!それくらいなら、心得があります」


 ルルは杖を振りかざし、呪文を唱えると辺りは白い光に包まれて、禍々しい色の液体は透明に変わった。


「毒を浄化しました。これで、もう無毒化されましたよ」


「ありがとう」


「こちらこそ、ですよ。ユウリさんのおかげですから」


「ほんとにゃ~!占い師さまよりすごいにゃね!にゃはは」


シャムムが後ろからいきなり抱きついてくる。


「ちょっと!いつのまにあんたも参加してるのよ。てかなにベタベタしてんの?離れなさい!」


「にゃ〜〜!」


 ミリアがシャムムを引き剥がすが、シャムムはなかなか離れようとしなかった。


「シャムムはもう占い師さまよりユウリがいいにゃ♪」


「はぁ〜〜!?いいわよ、あんたはシグマのアホとつるんでなさいよ!そのうちもっかい成敗するから!」


「いやにゃ〜!!」


「大体、信用できるわけないでしょ!?」


「じゃあ、シグマについて知ってることなんでも言うにゃ♪シグマは毒魔法だけめちゃくちゃ習得してたにゃ。でもそのことは誰にも言うなって……。別に練習することは悪いことじゃないにゃ?でも秘密。なんでかにゃ〜って」


「あいつ……もしかしたら、一人で計画を遂行するかもしれないぞ。ルルを奪えないとわかったからには、街に出て毒だけでも撒くかもしれない」


「にゃ!?街に毒を……?なんでにゃ!?それは嫌にゃ!」


「探しに行くぞ!シナリオ通りに進めるつもりなら……おそらくは……街の時計台か」


 シナリオだと、時計台の上から魔法で毒をばら撒かれる。そこへ向かった可能性は高い。


「行こう」


 まだ、残業代も貰ってなかったしな。


「……ありがてぇ。あいつを止めてくだせぇ……この街が毒に侵されたら、俺たちは行くところがなくなっちまうからよ……」


 雑魚兵が地面から呻く声がする。ここで働かされていたであろう、低級の魔族だ。

 俺は少し同情する。


「ああ、もちろんだ」


 俺はルルをちらりと見る。もう不安げな表情はしていない。それと同時に、今日を乗り切ればルルは死なない。早く安心させてあげたいという気持ちが湧く。


 俺は地下の暗闇の中、ルルの手をそっと取った。



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