表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

92/1304

2-4【マジカル・キューブ】



◇マジカル・キューブ◇


「――ミオ君、本当にいいのかい?そいつの値段は……二万ルービスだよ?」


「は……?」


 はい?二万?二万ルービス?

 ルービスはこの国の金の通貨であり、日本円で言えば……どれくらいだろうな。

 うちで売っている野菜の一箱あたりが五千ルービスだったから……一箱の中は二十人分くらい入っているとして……四箱分だから、八十人分の野菜と同じ値段!?

 その小さなキューブが!?


「ミ、ミオ……固まってるけど、大丈夫?」


「はははっ……無理もないね。これは都産(みやこさん)の魔法のアイテム。【マジカル・キューブ】って言うんだよ」


「マ、【マジカル・キューブ】……ですか?」


 なにそれ。(ちな)みに、値段に驚愕(きょうがく)して固まっている俺の代わりにアイシアが聞いてくれている。

 俺はもう硬直だよ……ガッチガチもいい所だ。


「ああ、そうだよ。【マジカル・キューブ】……不思議(ふしぎ)な力が宿っていて、誰でも魔法が使えるようになるんだってさ?」


「……え〜?」


 これアイシアは信じてないな。

 しかし、そう述べたディンさんも疑問形だな。

 これはあれだ、売れると思ってないパターンだ。


「あはははっ。僕も同じだったよ……この村の人間にそれを買う人間はいないと思ってたんだけど、まさか選ぶとはねぇ」


 やっぱりか、それにしても、まさかこの店一番の高級品だったとは。

 それを的確に選ぶとは、なにを選んでんだよ……アイシアさん。


「……欲しいなぁ……あ、でも。う〜んさすがに」


 そ、それを聞いても言えるのか……すげぇなある意味。

 それだけ綺麗ではあるし、女の子なんだな、やっぱり。


 でも自重もしてる、自分の中で戦ってますねコレ。


「ア、アイシア、流石(さすが)にこの値段だと……ねぇ」


 俺だって小遣い制なんだ、いくらド田舎で金の使い道がないからって、子供が数年で貯められる額じゃない。

 あとさ、八十人分の野菜を買った方がマシに感じるよ、俺にはさ。


「ははは、まぁでも……実際これは眉唾(まゆつば)かもしれないしねぇ。でも恩人のミオ君になら……四分の一でいいよ?」


 それでも五千ルービスか。二十人分の野菜たちっ!!

 しかし、手の出ない額ではない……くっ。

 たまには男らしく気前のいい所を見せたい俺も居る……アイシアにだって、素気なくしてきたしなぁ。


「……か……」


 葛藤(かっとう)した末、俺の答えは。


「ミ、ミオ?」


 くそぉっ、俺も男だ!

 少しは幼馴染にカッコいい所を見せたいお年頃なんだよ!

 そして決定打は……近々で金を使う予定がない事だ!


「――か、買います!!」


「――え?」

「えぇっぇぇぇぇぇえ!?」


 ディンさんも、アイシアまでも(おどろ)いている。

 欲しいと言いつつも、まさか本当に買ってくれるとは思わなかったんだろうな。


 まぁそうだよなぁ、もう少ししっかり考えてもよかったか、俺もさ。





「ま、毎度あり。その……しっかりな?」


「……はい」


 儲けたはずの商人に気を遣われてしまった。

 だが、いいんだこれで。

 たまのたまには、アイシアにこれくらいしてやったっていいだろう。

 なんたって……いっつも邪険にしてるんだ、それなのにこうして幼馴染でいてくれてるんだ。感謝だよ――まぁ、うるさい時もあるけどもさ。


「あ、ありがとう!ミオっ!わたし、一生大事にするね!!」


「あ、あぁ……喜んでくれてよかったよ、うん」


 五千ルービスか……貯めるまで何ヶ月かかるかな。

 感激してキューブを見つめるアイシアと、途方(とほう)に暮れそうな俺。


 そこに。


「――いた。ミオ……」


 長く伸びた暗めの金髪に……スラッとした四肢と身体つき、寡黙(かもく)でクールな俺の二番目の姉……俺と同じく転生者であり、この村の警備を担当する武闘派――クラウ・スクルーズの登場だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ねだるんだ 金額を聞いてもねだっちゃうんだ え?実は、お馬鹿すぎて、数字は1、2、たくさんな子なのか? え? 危なすぎるよね?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ