1-74【これが俺のファーストステップ1】
◇これが俺のファーストステップ1◇
「や、やったのか……?」
「げっ……ミ、ミオ……なぁ、ミオ!」
俺から見たクラウ姉さんの持つ光の剣【クラウソラス】は、盗賊Cの顔面を貫通しているように見えたが、当然の如く血は出ていなかった。
バトル漫画のような展開に興奮する俺は、隣にいるガルスが見えていなかったのだ。
聞こえて無かったんだ……ガルスが、俺を呼んでいる声が。
◇
「……ふぁっ……」
どさり――と、後方に倒れて行った盗賊の男。
私は直ぐに身体を起こして、最後の一人……盗賊のリーダーを見る。
いや……見ようとしたのだけど。
「い、いない……?」
まさか逃げた?子分たちに相手をさせておいて、自分は逃げたと言うの?
ゆっくりと立ち上がり……終わったのかと安堵のため息を吐こうとした、そんな一瞬。
「――わぁぁぁぁあ!!」
「――なっ!!ガ、ガルスっ!!」
「――!!」
私は直ぐに、ミオたちが待っている筈の後方に目をやる。
そこには。
「へへへっ……油断するからだぜぇ?」
盗賊のリーダー。
私が転倒している間に、ミオたちの方に行っていたんだ……!
「くっ……ミオっ!ガルスくんっ!」
「お~っと、嬢ちゃん……一歩でも近付いたら、このガキは殺す……嫌だろう?目の前で殺されるのはよぉ?」
「……卑怯よ」
私は、盗賊相手に何を言っているのだろうか。
自分でも、焦ったのが分かった。
でもそれはきっと――ミオも同じだったんだ。
ちらりと見た私の弟は、私が渡した【クラウソラス】の残滓で作ったナイフを握りしめて、盗賊のリーダーを睨んでいた。
「……ガ、ガルスを離して下さいっ!」
「ほう?なら、お前はどうするんだ?まさか代わりにでもなるのかぁ?」
だ、駄目よ!それは駄目!ミオ、それだけはっ……!
「――はい……僕が、ガルスの代わりになりますっ!だからガルスを解放してくださいっ!」
「……ミ、ミオっ!!」
「がっはっは!!いい度胸だ、そのナイフを投げ捨てて。ゆっくりこっちへ来い……よかったなぁガキ。馬鹿なお前の代わりになってくれるってよぉ?」
「う、うう……ミオ、ごめん……」
「――いいんだよ。だから泣くなって、ガルス」
良くない……良くないわよっ!ミオ、どうするつもりなの?
ミオに何かあったら、私は……!
歩いて行くミオの後ろ姿を見ながら、私は必死に思考を巡らせる。
しかし疲労と、【クラウソラス】を使った魔力の低減のせいで、大切な家族を救う方法すら、まともに考える事が出来なかった。




