1-70【イベントステージ3】
◇イベントステージ3◇
クラウ姉さんが壁際に走り、盗賊親分と盗賊A・B・Cはそれを追うように取り囲む。
涎を拭う盗賊A、股間を押さえる盗賊B、「うふぁふぁ」と笑う盗賊C――おい盗賊B、お前興奮しすぎだろ!
「嬢ちゃん。一人で来た自分と、そこのガキを恨むんだな……せいぜい天国を見せてやるよ……気持ちのいいなぁ」
「……」
クラウ姉さんは真顔だ、恐怖で表情が固まっている。
と、盗賊たちはそう思っているかもしれないが……俺には分かる。
あの顔は怒っている時だ……激怒なんだよ、まったく。
だから、俺は予定通りに身構える。
クラウ姉さんも、行動を移すはずだ。
◇
『――ミオ、私が盗賊に何かされそうになっても、絶対に行動したら駄目、助けるのはガルスくんで、私じゃないからね』
『で、でもそれじゃあクラウ姉さんが』
『大丈夫。私は自衛できるから……いいわね?』
『わ、わかった……信じる』
『そう。いい子ね……ちゅっ』
そう言って、おでこにキスをしたんだ。
そんな優しいキス、出来んのかよ……まるで大人だな。
あ、中身は大人なのか。
◇
「おいおい……なんだよ嬢ちゃん、固まっちまってよぉ」
「硬くすんのは俺等だけでいいんだぜぇ?」
「うへ、ひひひ……」
「うふぁふぁふぁふぁふぁ!!」
とうとう盗賊Bまで言動が限界になってやがる。
クラウ姉さん、いったいそこからどうする気なんだよ。
俺は、納屋に開いた穴から半分だけ顔を突っ込んで、いつでも行けるように準備をしていた。そ、外から見たら変な格好だよな。
盗賊がこちらを向く気配はないな、完全にクラウ姉さんに夢中になっている。
これはチャンスだ。このままガルスの背後に回って、縄を解いて一緒に脱出だ。
「……さて、俺は最後でいいぞ。こんな小さな身体には、俺のは入んねぇだろうからなぁ、がっはっは!!」
「へへへ……広げておきますよ、親分」
「うひ……ギンギンだぜぇ」
「うふぁふぁふぁふぁふぁ!!」
そしてついに、クラウ姉さんがキレた。
いや、当然だろこれは。
「――ホント……男って最低ね」
「「「あ?」」」
「うふぁ?」
「……下品な事ばかり、言動も馬鹿丸出しで……今時、高校生でもそんなスクールカーストの低い会話はしないわよっ……この、低レベルの発情猿どもっ!!」
お、おいおいおい……情報を隠す気あんの!?俺、聞いてるぞ!?
クラウ姉さんは、地球人にしか分からないような事を多々言い出して、盗賊たちを煽りだした。
盗賊たちも、馬鹿にされている事だけは分かるのか、顔色を変えた。
「……なんだか知らねぇが、生意気な事は言ったよなぁ?」
マズイ!早くしねぇと……!
俺は穴に突入し、ガルスのもとに駆けだす。
盗賊に囲まれるクラウ姉さん。
そのクラウ姉さんに煽られて怒る盗賊。
幼馴染を救出しようと、駆ける俺。
そして、ピンチに見えるだけのクラウ姉さんを、本当にピンチだと思っている、ただ一人の純粋な少年、ガルスが。
突然もがもがと暴れ出し、嚙まされていた布を自力で外し。
――そして、意を決して……叫んだ。
「――ぷはっ!……逃げて!クラウさーーーーん!!」
「「!!」」
「「「「!!」」」」
俺、クラウ姉さん。
盗賊親分、盗賊A・B・Cの視線は、自然と叫んだガルスの方に向き。
そして当然、ガルスの背後にいた俺も……無残にも盗賊たちと、バッチリと目が合うのだった。




