1-65【さぁ、行こう!】
◇さぁ、行こう!◇
私は、悪い子なのかもしれません。
妹と弟が……危険な場所に向かってしまいました……姉として止めるべきだった、そうも思います。
ですが、二人は本気だった。その意思を何と呼ぶのか、馬鹿な私には分かりません……ただ、その思いを邪魔してはいけないと思ったんです。
大切な家族が、危険に晒される。
恐怖と混乱……その最中でも、クラウとミオは前を向いていた。
大事な友達、大事な家族。
みんなを守るため、何も出来ない私を置いて、行ってしまった……
でも、私には私の出来る事がある。
ミオが言った通り……――来たっ!!
「……レイン。起きているか?」
窓をコンコン――とノックして、お父さんが外から声をかけてくる。
「う、うん、起きてるよ……」
お父さんは疑問に思うはず。ミオはそう言ってた。
「……どうして、窓を塞いでるんだい?」
ほ、本当に言った。ミオの言ったその通りに。
「……ふ、二人が逃げ出さない様によ。二人はふて寝しちゃってるけど、お父さんは……どうかしたの?それとも……二人を、起こす?」
ふて寝をしていると。会話をするつもりなど無いと先手を打つ。
そして念の為、布団をグルグル巻いた物を二つ置いてある。
もしお父さんが無理矢理窓を開けても、ここに居るという事だけは見せれるという訳だ。
「……いや……寝ているならいいんだ。お父さんは」
「分かってるよ……お父さん。二人は私が見てるから、安心して?」
ごめんなさい、お父さん……私は噓を吐きました。
二人は……もういません……盗賊の場所に、行ってしまったの。
「そうか。じゃあ、頼んだよ……レイン」
「……はい」
ごめんなさい。でも、二人はきっと、無事に帰ってくるから……そう約束したから。きっと……絶対。
◇
「――ミオっ!急いで!」
わ、分かってるよ……って、お前がはえぇんだよ!!
俺はぜぇぜぇと息を荒くして、クラウ姉さんの後ろをついて行く。
くそ、これじゃあ金魚のフンだ。
だが決して……「待って」とは言わない。
言ってはいけないんだ。
「すぐ……追いづぐがらぁ……」
あ~、吐きそうだ、畜生。
「気合い入れて。ガルスくんを助けるんでしょ?」
入れてるって。気持ちは充分に入れてるんだ……でも、その気持ちに身体がついて行かないんだよ!子供の身体、体力無さすぎだっ!!
「わ、わかってるよ……」
俺とクラウ姉さんは、既に村を出ている。
街灯など当たり前にない暗い村の中は、静かすぎて怖かったけど、月明りが異常に綺麗だった。日本の都会じゃ見れないよ。
村を出て、舗装などされていない道を全力で走って、一㎞近く走ったんじゃないか?
そしてそこに、明かりを見つけた。小さな小屋?納屋だったかな。
日本で言えば、農作業の機械を数台入れておけるような、少し大きなものだ。
「あれが……アジトね」
チャンス。
「アジト?」
小さなチャンスを、有効活用する。
クラウ姉さんが言った言葉は、この世界には無い筈の言葉だ。
確か英語でもないはず……何処のだっけ、ロシア?
「……あ、えっと……」
ほらな。思った通り焦っただろ。
これで、俺がその言葉を知らないと言う事を、印象付けておこうって思ったんだよ。




