1-64【村の外では】
◇村の外では◇
村から外に出て一㎞ほどの短い地点に、小さな納屋があった。
中では男たちの阿呆らしいほどの叫び声と、焚火の音がパチパチと鳴っていた。
ここは、村の樵が数年前に建てた納屋だ。
現在は使われていない、ボロもボロ。
しかし、雨風はしのぐ事が出来る……盗賊にとっては、それで充分だった。
「――がっはっはぁ!!てめぇ馬鹿なこと言ってんじゃねぇよ!」
「うははっ!!さーせん親分、オレ馬鹿なもんで!」
「自分で言ってんなよ!ボケぇ!」
「うふぁふぁふぁふぁふぁっ!!」
焚火を囲んで、酒を飲みバカ騒ぎをする四人の男たち。
一番大柄な男、分かりやすい程の親分気質だ。
残りの三人は五十歩百歩と言った所で、その親分に従っているようだった。
そしてその親分の横に、不釣り合いなほどガチガチに強張った少年がいる。
縄で手首を固定され、布を嚙まされている少年……ガルス・レダンだ。
「……」
もうどれくらい泣いたのだろうか。
目は真っ赤に充血し、頬には涙の痕が残っていた。
しかし……今は泣いてはいない。盗賊たちに、泣くなと脅されたからだ。
「――おいガキィ、もう直ぐ行くからなぁ……しっかりと村を案内してくれよぉ?」
「……」
コクコクコクと、首が取れるのではないかと思うほどに頷く。
十歳の少年だ。こうなれば当然の結果とも言える。
ただ、理解はしていないのだろう。
ガルスの中で、盗賊は“ただ盗みをするだけ”だと思っているのだ。
「うふぁふぁ、いい女いますかねぇ」
「どうだろなぁ……楽しみだぜ、もう何カ月ぶりの女を見れるんだからなぁ」
「商人が来ねぇって知った時は怒鳴り散らかしたが、村に行けるんなら別にいい。いっそ俺らの村にしちまおーぜ?」
「がっはっは……そいつはいいなぁ。食いもんも女も、たらふくいただくとしようぜっ!!」
ガルスは後悔していた。
幼馴染、ミオの言う通りにしておけばと……大人に任せればよかったのだと。
(ごめんなさい、ごめんなさい……ごめん母ちゃん……ごめんミオ……ごめんアイシア……ごめんなさい……ごめんっ)
ガルスは死を覚悟していた……ミオは自分を助けには来ない。
話も聞かず自分勝手に行動した自分を、都合よく助けに来てくれるなんて……思えなかったのだ。




