表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/1304

1-60【親の心子知らず】



◇親の心子知らず◇


 俺の気持ちは(つた)えた。

 噓偽(うそいつわ)りのない、子供ならではの気持ちだ。


 でもさ、親は子の気持ちなんて分からないし、子供もそうさ、親の気持ちなんか分からない。


「――お前たちの気持ちは分かった」


「父さん!」

「……パパ」


 俺とクラウ姉さんが顔を見合わせる。

 それにしても、クラウ姉さんはどうして行動する気になったんだろうな。

 ルドルフ父さんの答えに、俺は気を緩めてしまっていた。

 クラウ姉さんの行動の謎に疑問を持ってしまったその瞬間――


「――ぅわっ!」


「パ、パパ……!!」


 父さんは、俺とクラウ姉さんを両脇に抱えて、凄い形相で怒っていた。

 ああ、激怒していたんだ。


「……レギン」


「は、はい……」


騒動(そうどう)が落ち着くまで、子供たちを部屋から出すな。いいな?」


「……でも、あなた――」


「いいなっ!!」


「……はい、あなた……」


 俺とクラウ姉さん、ついでにレイン姉さんも部屋に投げ入れられた。

 簡単に行かせてもらえると考えた俺がバカだったよ。

 でも、そうだよな……誰が好き好んで、盗賊の所に息子と娘を行かせるかよ。

 考えなくても分かるんだよな……親ならさ。


「――と、父さんっ!!」


(だま)りなさい!!」


 キィ――と、無情にも扉は閉められて、普段は掛けない(かぎ)までされてしまった。

 くそっ……どうする……!時間は無いのにっ!


「ふ、二人とも落ち着いて?ね……?」


 レイン姉さんは俺たちを(なだ)めてくれる。

 俺、たち(・・)?……そう思って、クラウ姉さんを見ると。


「……」


 めちゃくちゃ扉を(にら)んでいた。

 扉というか、扉の先のルドルフ父さんだろうけど。


「パパがあんな男だと思わなかったわ……これだから男って、どこでも同じなのね……まったく、信じられないわ。軽蔑(けいべつ)するわっ!」


 おいおいおい……もしかして、それが素か?

 クラウ姉さんの、前世の素なのか?


「ク、クラウ姉さん?」

「クラウ……?」


 扉の向こうのルドルフへ向けた言葉だろうけど、その言葉は当然レイン姉さんにも丸聞こえだ。


「――あ」


 やってしまった。そんな顔だ。

 目を大きく見開いて、俺とレイン姉さんを交互に見る。

 しかし、逃げ切ろうと何かを考えているのか、指で(ほほ)をポリポリと掻き、一言。


「……パ、パパ……怖いね」


 いやー。これは無理だと思う。

 俺なら聞かなかった振りをしてあげられるけど……レイン姉さんはな。


「――ク、クラウ……あなたって……――い、意外とおしゃべりだったのね」


 ズルッ――と、こけそうになる。心の中でな。

 行けた……のか?これは。


「……そ、そうよ。だって、ミオの友達だから……」


「そうよね!ミオのお友達だものねっ!助けたいわよねっ!」


 レイン姉さんはクラウ姉さんの手を取って激しく同意する。

 うん……そうだけどさ。それでいいのかい?レイン姉さん。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] レインねぇさん…………… 街に一人で行くなよ?騙されるぞ?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ