1-60【親の心子知らず】
◇親の心子知らず◇
俺の気持ちは伝えた。
噓偽りのない、子供ならではの気持ちだ。
でもさ、親は子の気持ちなんて分からないし、子供もそうさ、親の気持ちなんか分からない。
「――お前たちの気持ちは分かった」
「父さん!」
「……パパ」
俺とクラウ姉さんが顔を見合わせる。
それにしても、クラウ姉さんはどうして行動する気になったんだろうな。
ルドルフ父さんの答えに、俺は気を緩めてしまっていた。
クラウ姉さんの行動の謎に疑問を持ってしまったその瞬間――
「――ぅわっ!」
「パ、パパ……!!」
父さんは、俺とクラウ姉さんを両脇に抱えて、凄い形相で怒っていた。
ああ、激怒していたんだ。
「……レギン」
「は、はい……」
「騒動が落ち着くまで、子供たちを部屋から出すな。いいな?」
「……でも、あなた――」
「いいなっ!!」
「……はい、あなた……」
俺とクラウ姉さん、ついでにレイン姉さんも部屋に投げ入れられた。
簡単に行かせてもらえると考えた俺がバカだったよ。
でも、そうだよな……誰が好き好んで、盗賊の所に息子と娘を行かせるかよ。
考えなくても分かるんだよな……親ならさ。
「――と、父さんっ!!」
「黙りなさい!!」
キィ――と、無情にも扉は閉められて、普段は掛けない鍵までされてしまった。
くそっ……どうする……!時間は無いのにっ!
「ふ、二人とも落ち着いて?ね……?」
レイン姉さんは俺たちを宥めてくれる。
俺、たち?……そう思って、クラウ姉さんを見ると。
「……」
めちゃくちゃ扉を睨んでいた。
扉というか、扉の先のルドルフ父さんだろうけど。
「パパがあんな男だと思わなかったわ……これだから男って、どこでも同じなのね……まったく、信じられないわ。軽蔑するわっ!」
おいおいおい……もしかして、それが素か?
クラウ姉さんの、前世の素なのか?
「ク、クラウ姉さん?」
「クラウ……?」
扉の向こうのルドルフへ向けた言葉だろうけど、その言葉は当然レイン姉さんにも丸聞こえだ。
「――あ」
やってしまった。そんな顔だ。
目を大きく見開いて、俺とレイン姉さんを交互に見る。
しかし、逃げ切ろうと何かを考えているのか、指で頬をポリポリと掻き、一言。
「……パ、パパ……怖いね」
いやー。これは無理だと思う。
俺なら聞かなかった振りをしてあげられるけど……レイン姉さんはな。
「――ク、クラウ……あなたって……――い、意外とおしゃべりだったのね」
ズルッ――と、こけそうになる。心の中でな。
行けた……のか?これは。
「……そ、そうよ。だって、ミオの友達だから……」
「そうよね!ミオのお友達だものねっ!助けたいわよねっ!」
レイン姉さんはクラウ姉さんの手を取って激しく同意する。
うん……そうだけどさ。それでいいのかい?レイン姉さん。




