1-51【認めないよ、僕は】
◇認めないよ、僕は◇
レイン姉さんはまだ十五歳だ。嫁に出すのは無理……というのは、異世界には通用しないのだろう。
昔の日本だって幼い子供が嫁に出されていたんだ。そう言う事だって理解はしている。
だがしかし、レイン姉さんは駄目だ!
俺の良心、心のやすらぎ。クラウ姉さんにいじめられる俺の、最大のオアシスなんだよ!!
「――なんか、無性に腹が立つわね……」
――いででででっ!首!クラウ姉さん首!締まってる!!
別にクラウ姉さんの事だって口に出してないのに!女の勘怖いんだがっ!!
「むがぁ~」
「ク、クラウさん……」
ほら、真下のアイシアも呆れてるから。
レイン姉さんを見ようって!だぁぁぁ!く、口に指を入れないで!!自分がされたら嫌でしょ!?
そんな馬鹿な事をしていると、リビングから声が。
「ではさっそく、今日からお願いしようかな。いっぱい作ってくれよ?」
おい――オヤジ殿……今なんつった?
作る?何を?……今日からお願い?それを親が頼むのか……?ああ!?
誰だってそれを聞いたらそう思うだろう?子作りだよなぁぁぁぁぁ!!
「……ひゃっ!ミ、ミオ!?」
俺は、クラウ姉さんの手を舐めた。
普段はされるがままの俺が、やり返したんだ。
もうすごい勢いで舐めたる。
「あ、ちょ……すごっ……」
嫌がれよ!!赤らめてんじゃないよっ!!こっちが恥ずいんだが!!
でも、拘束が緩んだ。チャンスだ!!行け、ミオ!!
「――あんっ!あ、ミオ!!」
「いだっ……!ミオ!?」
俺はアイシアの背を跳び箱のように跳ねて、部屋の扉を開けた。
◇
バン――!!
「ちょっと待ってください!!」
リビングに飛び出た俺は、心の声を出さないように心がけて、冷静に優等生を被った。
「ミオ……部屋に居なさいっていったでしょ?」
「そんなこと聞いてられないよ母さん、オヤ……父さんが変なことを言うから、僕が代わりに言うんだ」
「言うって、何を?」
決まってる。
「そんなこと……決まってるよ!母さんと父さんが認めても、僕は認めない!」
「ミ、ミオ?」
レイン姉さん、そんなキョトンとした顔……やめてくれよ。
俺があなたを思って言おうとしている事を、分かってくれよ。
「……え?」
おめぇもだよ!そこの男!いくら学校の先輩だからって容赦しねぇぞ!!
「――僕は認めない……決して認めませんよ!僕はっ!!」
ビシィィィ――!!と、俺は男、アドルを指差して叫ぶ。
「――レイン姉さんの結婚は、絶対に認めない……!!」
ふっ……言ってやったぜ。
オヤジ殿がだらしないからだぞ。親なんだから、相手を一発殴るくらいの気概を見せないとな。
まぁ、その上で認めないんだが。
――っと……あれ?何で皆、俺を見てるの?そんな驚いた顔でさ?
空気がおかしくない?これじゃあ……俺がなにかへまをしたみたいじゃ……あれ?




