1-48【子供ながらに】
◇子供ながらに◇
現在、学校の裏山へ向かう最中だ。
静かで誰もいない、家族に監視されない場所。
十歳の俺のお気に入りの場所だ。
だがしかし、隣には幼馴染が。
「……」
「えへへっ」
はぁ……めっちゃいい笑顔すんじゃん。
俺とは真逆だよ。
「帰んない?」
「え?ミオが帰るなら帰るよ?」
そうじゃなくてさ……一人で帰ってほしい訳よ。
どうにか分かってくれないかなぁ。
「やだっ!」
――ま、まだ言ってねぇよ!先読みすんな!!
「は、ははは……」
「えへへ……」
心底楽しそうだね?俺は辛いけど。
は?……我儘だって?だってそうでしょうが!
異世界だぞっ!?ようやく一人になれる時間が持てたんだ、色々試したいだろ!!
十年我慢したんだ、こんなド田舎で十年過ごして、転生の醍醐味も何も感じないまま十年だぞ!?
「あー!!」
俺は突然、どーでもいい方向に指をさし、アイシアの視線を誘導しようとした。
「――効かないよーだ。そんなの」
ぐっ……見向きもしねぇ!そこまで俺といたいの!?
男冥利に尽きるけど、今は勘弁しないか?
「やーだよ♪」
だからまだ言ってねぇって!!もうなんなんだよ!!くそ、子供ながらに難しい人生だ!
こうなったら、振り払ってでも逃げ出して――
「――ミオ」
「「……――!!」」
背後からクールな声がかけられる。
小さい声だけど、芯のある透き通った声音。
俺とアイシア、二人が肩をビクつかせる相手……それは。
「……ク、クラウ姉さん……」
「ク、クラウさん……」
十三歳になった俺の次姉……クラウ・スクルーズだ。
クラウ姉さんは、長い金髪を後ろで束ねている。
ロングポニーテールだ。多分、六年は切ってないんじゃないか?
「こんな所で何をしてるの?もしかして……エッチなこと?」
「え~!?」
「し、してない!!してないよクラウ姉さん!!アイシアも赤くならないでよ!」
十歳の少年少女に何を言うんだよマセガキ。
いや……転生者だったわ……俺と一緒だ。
それでも、今世は俺の大切な家族だ。前世でどこの誰だったかなんて関係ない。
この人は――クラウ・スクルーズ。俺の大切なお姉ちゃんだ。
「そう?なら帰るよ。レインお姉ちゃんが……友達連れてくるってさ」
「――は?」
なんだと……?また?
そうか……またあの男か。ははは……冗談キツイぜクラウ姉さん。
悪いね、俺はそれどころじゃないんだ――とでも言うと思ったか!!
「――アイシア、今すぐ帰ろう。今すぐだ!」
絶ってぇ邪魔したるかんなぁ……許さんかんなぁぁ!!
どこぞの男になんぞ、レイン姉さんは渡さんかんなぁぁぁぁぁ!!




