1-47【一人にしてくんない?】
◇一人にしてくんない?◇
放課後。いや……何限目とかそう言う決まりがないから放課後って言っていいのか謎だけど、とにかく授業終わだり。
俺はポロッサ先生に真面目な挨拶をして、教室を出た。
今の学校、実は三校舎目だったりする。
初代のボロ小屋のような校舎は、出来た翌年にハリケーンでぶっ飛んだ。二代目は去年、大量発生した虫が校舎に巣を作ってしまい、毒を持っていた事から、苦肉の策として、焼き払ったよ。
虫が出てくることは無くなって、村も無事だったからいいものの、もっと何かあったんじゃないかと思ったけどな。
俺は、学校を出て一人で裏山に向かう。
言っただろ?俺は考えることがいろいろできたってさ。
でも、そのタイミングがなぁ。
俺は不意に振り返り、後ろから来た少女に声をかける。
「――なに?アイシア、またついてくんの?」
「……だ、だってぇ!ミオ、またこそこそしてるから!」
“また”とは失礼な。これでも慎重かつ大胆に行動をしているんだ。因みに、その大胆な時に限って、このアイシアがついてくるんだよなぁ。
「僕だって一人の時間は欲しいんだよ……家に帰れば、お姉ちゃんが二人に妹までいるんだからさ」
そうだよな。全くと言って良いほどプライベートがないんだ。
――え?妹……?そうだよ。ご想像の通りだ。
産まれたのはあの後……夫婦の情事に巻き込まれた俺が寝ている時の子だよ。多分な。
後で紹介するけど、転生者ではないらしいぞ。
たま~にやって来る【女神イエシアス】が調べて行ったからな。
【女神イエシアス】とクラウお姉ちゃんは、今でもたまに会っているっぽいよ。
俺は気付かれなかったフリを続けているから、あれ以降、イエシアスとは話してないけどさ。
そんなクラウお姉ちゃんとも、関係は良好だよ。
別に転生者って勘付かれている訳でもなければ、何かを疑っている素振りもない。
俺だけが知っているって言うのも、なんか気が引けるけどさ……
「……で、いつまでついてくんの?」
「――え?か、帰るまでに決まっているじゃない!」
はぁ……そうなんだよ。
この子、アイシア・ロクッサは、依存体質って言うか。
もう一人、俺とアイシアの同級生がいるんだけど、その男友達はすんげぇ自由人で、直ぐいなくなったりするんだけどな。
アイシアは、常に俺につきまとってくるんだ。
正直言って、悪い気はしないよ。
前世の俺は女っ気のおの字もなかったけど、今世では女系家族と言ってもいい構成であり、こんな女の子の幼馴染まで出来てるんだ。
普通は言うこと無いよな、普通は。
「――悪いけどさ、先に帰ってよ」
「え、やだ……」
くっそ……可愛い、そんな困った顔しないでくれ。
困ってるのは俺の方なんだ。
俺は――自分の能力が知りたいだけなんだよ。
今まではさ、こんなに自由な時間は無かった。持てなかったんだ。
十歳になって、こうして自由時間が出来て、ようやく異世界が始まったと思っていたのに。
何だろう、ミオ・スクルーズの人生には……常に誰かが付いて回るのだろうか?




