1-38【昨日から大変だったね】
◇昨日から大変だったね◇
疲れたな……昨日から寝不足だし、今日も泣きまくったせいで体力がしんどい。
更にはクラウお姉ちゃんの事で、精神的にも参っていた。
そうだよ……クラウお姉ちゃんは、あそこにいたよな……?
帰り道、暗くなりつつある道……あれは、林だったか?
街灯など一本もない、暗がりの道。そこから伸びた二本の影。
二人いたと思ったんだ。クラウお姉ちゃんと……もう一人。
俺には女に見えた。不思議なオーラを放った、怖いくらいに綺麗な存在。
「……」
多分、俺は今ウトウトしてるんだと思う。
子供の体力のなさ、半パネェ。
だが、疲れた身体とは裏腹に……心は穏やかで冷静だ。
そして思い知らされる。異世界に転生したんだと言う、事実に。
あの女……クラウお姉ちゃんと一緒にいた女。存在感がやばかった。
まるで周りを気にしていない感じ。あれではまるで、周りの誰もが自分に気付いていないような振る舞いだった、それがクラウお姉ちゃんと一緒にいた事で、不安と恐怖がのしかかってくる。
「……」
「あら?ミオ、寝ちゃってるわね」
ママン。まだ起きてるよ、考え事をしてるんだ。
俺は今後、よく考えないといけないんだ。
異世界に転生して、浮かれ気分でやって来たはいいさ、ご愛敬だろう?
でも、俺の家族になってくれたママンもオヤジ殿も、レインお姉ちゃんもクラウお姉ちゃんもさ……三年も過ごせば、どれだけ大切かって分かるよ。
あの女は駄目だ……クラウお姉ちゃんの傍にいさせちゃいけない。
そんな気がしてならないんだよ。だから、俺も覚悟を決めないと。
守るんだ……家族を。
ガタン――!!
「あ~……だから言ったのに~」
「仕方ないでしょう?まだ三歳よ?」
「そうだな。レインが学校に連れて行ったんだろ?疲れたんだよ、きっと。よく寝るさ……なぁミオ」
「いいわよ、私が連れて行くわ……あなたはリュナさんと仲良くしてれば?」
「――お、おいおい……そんなこと言うなよぉ」
「そうよレギン。もうこの人とは何でもないって何度も言ってるじゃない、それに、うちの娘をその子のお嫁さんにするんだ……って言ったのはルドルフよ?」
「……それはそれ。リュナはリュナでしょ?」
「硬いこと言わないの。幼馴染でしょ?」
「――幼馴染だから言ってんでしょ!」
「……みんな。うるさい……ミオが起きちゃう」
「そうだよ~、寝かせてあげようよ~」
俺が完全に寝ちまった後の会話は、まったく覚えていないけど……なんかさ……俺の人生に関わりある事……言われてなかったか?




