1-37【泣き疲れたよ、真っ赤になるほどなぁ】
◇泣き疲れたよ、真っ赤になるほどなぁ◇
俺は目を真っ赤に充血させて、レインお姉ちゃんに連れられて帰宅した。しかし、驚いたのは言うまでもない。
何故ならば……既にいたのだ。家に――クラウお姉ちゃんが。
「……おかえり」
「ただいま~、はぁ疲れた~」
「う、うん……」
レインお姉ちゃんは心底疲れたように俺を降ろし、台所に向かった。
レギンママンに今日の事を知らせに行ったのだろう。
残されたのは、俺とクラウお姉ちゃんだ。
どうする?何て言う?何て言えばいい?
まずは朝の事か、逃げるようにしてたし……謝るか?
「……」
言葉出ない……そもそも、さっき見たのは確かにクラウだったはずだ。
俺が間違うか?こんな可愛いお姉ちゃんをさ。
それに、俺は確実に――見えていたんだ。
クラウ、お前はいったい……誰と一緒にいた?あの影はなんだったんだ?
――って、直接聞ければどれだけいいか。
「……」
ほら見てるよ。クラウお姉ちゃんが見てるって。
「ミオ」
「な、なぁに?」
怒ってるのかな?――お?
撫で……られた?
「学校、楽しかった?」
笑顔じゃん。めっちゃ清々しい笑顔!可愛いなぁ~。
ひいばあちゃんに聞いたのか?俺がレインお姉ちゃんと一緒に学校に行ってた事を。
「たのし……かった!」
「そっか。ならいい……よかったね」
いいのか?今日の朝の態度も許してくれるのか?
俺はミラージュを見かけて、それを口実にクラウお姉ちゃんから逃げたんだぞ?
やばい、自分の愚かさに泣きそうです。
クラウお姉ちゃんは、それだけ言って玄関の方に向かった。
多分ルドルフが帰ってくるんだ。お迎えに行ったんだよ……偉い。
俺は誰もいない事を確認して一人、服の袖でゴシゴシと目を擦った。
◇
程なくして、ルドルフが畑から帰宅した。
なんと驚く事に、今日はリュナさんも一緒だった。
幾ら清い経営者同士だからって、昨日の今日で元カノ連れてくるか?
「……」
ちらり――ほらぁぁぁ。ママンの顔ー!
想像つくでしょそんなのさぁ。昨日の夜、あんなにママンとイチャイチャしといて、リュナさん連れてくるのは馬鹿だろ。
「お!ミオ……どうしたんだ?そんな顔してー、目が真っ赤だぞ!?」
ルドルフは俺を担ぎ上げて、たかいたかいをする。
俺は笑わないよ?意地でも笑わない。
辟易した顔で見下ろして、残念なものを見る目でオヤジ殿を可哀そうに思った。
「はっはっはっ……お父さんが帰って来たのが嬉しいかぁ?」
うん。嬉しいよ。嬉しいから降ろせって。
俺よりも自分の妻を気にしろって……いや、まさか……お前。
俺を利用して修羅場を乗り切ろうとしてんのか?
ああ……そうだわ。手が震えてるもん。
こうなるって分かってたんだな?
まったく……じゃあなんで元カノなんて連れて来たんだよ!!自重しろよ!!




