1-33【どこにでもいるな……悪ガキ】
◇どこにでもいるな……悪ガキ◇
レインお姉ちゃんに連れられてやって来た学舎だが、どう見てもそれはただの小屋だった。
十人は入れれば御の字と言った狭い空間に、子供が数人と教師とみられる大人が一人。あと俺。
初めは怒られるかとも思ったが、レインお姉ちゃんは怒られるどころか、弟の面倒を見てて偉いねと褒められていた。
その時のレインお姉ちゃんの蒼白振りと言ったら、想像も容易いだろ?
普段は大人しく、将来はおっとり系の清楚美人が確約されたような存在のレインお姉ちゃんだ。
実は登校に遅れそうで、家に帰してる余裕がなかったから連れて来ただけなんて、口が裂けても言えないって。そういう子だもの。
でもって、今は日本で言う国語?の授業中だ。
これはに俺も興味があった。
オヤジ殿やママンが文字を書いている所を見た事が無かったから、この世界の言語が何なのか知りたかったんだ。
聞こえる限りは日本語だし、イントネーションもほとんど通用する。
一部現代語とかが怪しいが、和製英語とかも行けるあたり、この世界は転生者に寛大だ。
レインお姉ちゃんが机に向かい、今の俺はおんぶをされて肩越しに勉強を見る。
周りからクスクスと小さな笑い声が聞こえるが、俺か?笑われてんの。
それともレインお姉ちゃんか?ならぶっとばすぞ。出来ねぇけど。
お。文字を書くな……どれどれ――って、平仮名じゃん……それ。
どう見ても「あ」だ。マジで?平仮名なの?この世界の文字って。
先生と見られる方、ポロッサさんと言うらしい女性は、少し前にこの村に越してきたのだと言う。
こんな村に良く来ましたね。でもそのおかげでレインお姉ちゃんが学校に通えると思えば、あざす!!と声を大にして言いたい。
お……?また笑い声が聞こえるな。
どれどれ……男じゃねぇか。しかも二人。
揃えたように笑いやがって……俺の清楚なお姉ちゃんを笑うんじゃねぇよ、まったく。
「……はぁ~」
お疲れ様、レインお姉ちゃん。今日からが初授業だろ?
ごめんな、邪魔して。あと、俺重いよな。三歳だもんな。
「レインちゃん、お昼どうするの?」
ミラージュもお疲れさまだよ。今日は迷惑をかけた。
「う~ん……どうしよ――」
レインがミラージュに応えようとした瞬間。
「――スクルーズんとこは瘦せた野菜だろぉ!そればっか食ってんだもんなっ!」
「ぎゃははは!そーだよなぁ!?昨日もみっともない野菜だけだったしっ!」
「……あ?」
ごめん。素で声出たわ。
幸いにもレインお姉ちゃんには聞こえなかったようだけど。
おいこらクソガキが、うちの野菜はともかく、レインお姉ちゃんが悪いみたいに言うなや!バカにしてんじゃねぇぞ!!




