1-31【一緒に行ってみる?】
◇一緒に行ってみる?◇
救世主現る!?スポーツ紙とかでたまに見かける見出しだけどさ、今ほどそれが現実に起きたんだと思った事はないぞ。
俺はクラウお姉ちゃんの両手を振り解いて、その救世主こと、ミラージュ・ライソーンの所に駆けた。三歳時の全速力で。
「ミラージュおねーちゃん!」
「――んぉ?おおー、レインちゃんの弟くんじゃ~ん!」
ミラージュもこちらに気付いて、元気よく俺を受け止めてくれた。
そうだとも。必死に飛び込んだよ。
「どうしたのかな?そんなに急いで、転んじゃうよ?」
「えへへ……」
癒されるでしょ~。天使のスマイルだよ~。
「……う、うわぁ」
え!?俺の笑顔が効かない!?――って違うな、ミラージュは俺の後ろを見てる。
クラウお姉ちゃんを見たんだ。
「どーしたのクラウちゃん。そんなに怖い顔してさっ」
「……別に。行くよ、ミオ」
俺は聞こえないフリをして、ミラージュにじゃれつく。
セクハラって言うなよ。頼むから。
「なんだよ~クラウちゃん、どうしていっつもあたしにツンケンするのさ?」
そうなのか?クラウお姉ちゃん、もしかしてミラージュのような子が苦手なのか?
それとも……俺がじゃれているから?
「……ふん」
「あ……」
「……」
行っちゃったよ。俺を置いて。
そこまで嫌なのか?レインお姉ちゃんの友達だぞ?
「どーしよっか?ミオくん」
「どーしよ?」
「あはは、可愛いな~」
ナデナデしてくれるミラージュ。
あれ、何か今までで一番子供らしくないか?
と、そんな事を考えていたら……
「――ミラージュちゃん、お待たせ……ってミオ!?」
レインお姉ちゃんだ。そうか、今日は待ち合わせだったのか。
それにしても、クラウお姉ちゃんは家に帰ったんじゃないのか?
すれ違うと思ったんだがな……レインお姉ちゃんと。
レインお姉ちゃんの様子を見ている限り、そんな事はなさそうだった。
「おはよ」
「うん、おはよ――じゃないよミオ!どうして一人でここに居るの?ダメでしょ!?ミラージュちゃんがいてくれたからいいけど……」
おお、ノリツッコミした。
レインお姉ちゃんは俺の肩を掴みながら、真剣に言ってくれる。
やっぱりいい子だなぁ。優等生タイプなんだろう。
つーか、二人の姉妹全然性格違うな……顔は似てるけど、ルドルフにもレギンにも性格は似て……いや、クラウのむっつり感は母親似だったわ。
レインお姉ちゃんが特別清楚なんだ、きっと。
ん~っと。と、とりあえず謝っとくか。
「ごめんなさい、おねえちゃんっ」
上目遣いで~。見上げる!
ほら見ろ、キュンとしただろ?
「も、もう……どうしよう、もう学校行かなきゃなのに」
「二日目から遅刻はやばいよね~」
「ど、どうしようか、ミラージュちゃん……?」
なんか……すまん。
せっかく優等生路線で行けそうなのに、遅刻させるかもしれん。
そんな俺の心の中の謝罪など聞こえるまでも無く、ミラージュが言う。
「あ、そうだ!ならさ……一緒に行く?学校に」
「「……え?」」
俺とレインお姉ちゃんが、綺麗にハモって……一緒に学校へ行くことが決まったのだった。




