１－２５【独占欲？】
◇独占欲？◇
レギンは台所に向かった。夕食の準備だとさ。
でもって俺は、クラウお姉ちゃんの膝の上で人形のように抱かれているよ。
実はママンは今日、いつもの何倍も気合が入っている。
その理由は、漂ってくる香しい匂いが理由だ。
その匂いは荒々しく、非常に血の気のあるものだ。そう、肉だよ。
村唯一の狩人が、猪を捕まえたんだと。
害獣なんて滅多に出ないド田舎に、偶然迷い込んだ動物。
そう言えば、犬や猫も見ないな……鳥すらいないのはおかしくね？
それはさておき、それで野菜と物々交換をしたんだよ。猪と同等の価値にするには、結構な野菜の量だったらしいが、それでも子供たちにお肉を食べさせたかったレギンは、奮発してくれたんだ。
でもさ。俺、聞いちゃったんだよね……ママンが「これでルドルフにスタミナを……うふふ」って言ってるのをさ……これは、もうあれだよな？妹か弟が出来るフラグだよな？
「ミオ。お肉食べれるって……うれし？」
お？クラウお姉ちゃん、俺の両手をにぎにぎして拍手させてくれている。
それって赤ちゃんによくやる、“じょうずじょうず”ってやつかな？
いやいや、俺はもう三歳だぞ、クラウよ……
「おにく？」
「うん。お肉だよ。動物さんだよ」
その言い方だとなんか怖くないか？じゃあ何て言うの？いや知らんよ。
牛とか豚とかさ、この村には居ないんだから。滅多に捕獲できないんだぞ、動物。動物性タンパク質……マジで貴重なんだから、この村。
「おいちいの？」
「……う～ん、多分ね」
なるほどね、クラウお姉ちゃんも食べた事はないのか。って事は、肉なんて相当久しぶりなのでは？スクルーズ家。
でもさ……酪農もしていないこの村、普通に考えてどうやって生きてんのか不思議でならねぇよ。
日本じゃ……考えられないからなやっぱり、俺は専ら宅配サービスで飯食ってたから、ありがたみが分かってないんだと思うけど。
こうして転生して、この村に産まれて、食の何たるかが初めてわかった気がするんだ。
「それじゃあ、私の分もあげるね……」
え？クラウお姉ちゃん、肉食わないの？俺は顔を上げて、次姉の顔を覗く。
そしたらさ……何て言ったと思う？この子……おっそろしいぞ。
「だから……スタミナ付けてね？」
「……」
ぶぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ！！
飲み物口に含んでたら、噴水になってたところだよ！！
クラウ、お前も聞いてたんだな！？ママンの独り言……本当に六歳かお前……つーか性に目覚めるの早すぎなんだよ！！
やめて！やめてくれ！！そんなメスの顔しないで！！
怖い！怖いから！！マ、ママーーーーーーー！！
あなたの娘、あなたにそっくりだよおぉぉぉぉぉ！！遺伝子怖ーーい！！
