1-24【ミラージュ・ライソーン】
◇ミラージュ・ライソーン◇
「――あ!ミラージュちゃん!!やっと来たよ~」
レインお姉ちゃんが立ち上がって、布の鞄を持つ。
中身はほとんど空だ、何故なら勉強道具が無いから。
他の生徒も同じなはずだけどな。
月に一度しか来ない商人を待って、勉学を遅らせられないと思っているのだろうか。
今までしてこなかったのだから、毛ほども変わらないと思うがねぇ。
「よっ!レインちゃん、お待たせだよっ」
お、おお……なんてボーイッシュな女の子!思った通りの活発そうな声に対し、ショートカットの髪形にへそ出しの短いシャツ、太腿ばっちりのショーパンは見事としか言えん。
いや、待て……冷静になろう。相手は八歳だ。
八歳の幼女相手に、俺は何を評論家ぶっているのか……そうだよな、冷静になればなるほど……キモくない?
「もう登校?の時間なんだね~……」
「そうだよ……って、お!?お~、この子がレインちゃんの弟君か~!可愛いねぇ……!」
ミラージュ、だっけ?俺を見るそのつり目は、好奇心そのものだ。
何というか、恥ずかしいって……俺は天使の笑顔で、お姉さまの親友さんに挨拶をする。
「……こん、にひ……」
嚙んだ。初対面で嚙んだんだけど。
し、仕方ないだろ!家族以外とまともに会話なんてしてこなかったんだから!!
あ?そうだよ!前世の俺と一緒だよ!!文句あっか此畜生!
「あはは!お顔真っ赤だよ~!」
すいません。シャイって事で勘弁して。
おっと……レインお姉ちゃん?
「駄目だよ~、ミオはとっっても恥ずかしがり屋さんなんだからねっ」
「え~、そうなの~?」
そうなんです。そう言う事にしておいて……お願いします。
俺は必死に笑いながら、このミラージュって子との初対面を終えたのだった。
レインお姉ちゃんが学校に行った後、俺はクラウお姉ちゃんと共にママンのお手伝いをしていた。
まぁ、俺は何もしてないんだけどさ。する努力はしてるつもり……でも結局。
「あ~ほらっ、やっぱりこんなに散らかして……もうっ」
ママンに呆れられてしまった。
本当は片付けをしているつもりなんだ……思うように動くようになった身体だけど、まだ繊細?な動きには慣れない。
積木を元の箱の中に戻そうとするんだが、これが中々難しい。
ん?そうだよ……ちゃんと誕プレで貰った積木で遊んでるんだよ!いい子だろ!?笑いたきゃ笑えっ!中身が三十過ぎたおっさんの積木遊び……滑稽だろ……?
それでも、ママンを喜ばせようと思って片付けてたつもりなんだが……積木は転がるわ、箱は崩すわで……ハッキリ言って自分でもクソむかついた。
だから持ってる積木投げちゃうじゃん。そこを見られた。
「ママ。私がやるからいいよ」
お、クラウお姉ちゃんが代わりに片付けてくれるらしい。
しかしなんだ……この前の川での一件から、クラウお姉ちゃんがやけにくっ付いてくる。なんだこれ?




