1-20【独特なんだよね、この子】
◇独特なんだよね、この子◇
綺麗な貝殻には紐が付いていた。ほら、貝殻ビキニで紐を通すところだよ。
そこに紐が括りつけられていて、首から掛けられるようにされていた。
サイズは大したこと無くて、三歳児の手のひらに乗るくらいの小さな貝殻だった。
でも、これは確かに綺麗だ。
ランタンの明かりで照らされて、虹色に輝いている。
レインお姉ちゃんがくれたこの貝殻、【キールの貝殻】は、どうやら相当珍しいヤツらしく、しかも虹色は滅多に出ないんだとさ。
おい、誰だ「ガチャ演出みたいだな」と思った奴、正直に手をあげなさい。
うん。俺は思っちゃったよ。
「よかった、似合ってるよ。ミオ」
「ありがてぇ……」
「――え?」
あ!やべっ……心の声が。
「ううん。ありがとう!おねえちゃん!!」
ニパァ――と花が咲くような笑顔で誤魔化す。
「そっか、よかった~……喜んでもらえて」
セーフだ。流石スクルーズ家のアイドルの笑顔。
スクルーズ家の全員に特攻を持っているのだ。
さて、最後は次女のクラウお姉ちゃんだな。
ちらりと見た所、椅子には隠されていないが……箱に入れる程大きくはないという事か?それとも、箱に入りきらなかったから別の場所にあるのか?
「じゃあ最後だ。クラウ、いったい何を用意したんだい?確か、箱はいらないって言ってたが……」
「そうね、クラウ……いったいミオに何をプレゼントするの?」
両親も知らないのか。
クラウ・スクルーズ……スクルーズ家の次女で、俺の二番目のお姉ちゃんだ。
寡黙で大人しく、どことなく不思議な雰囲気を醸し出す女の子。
正直言って、ルドルフにもレギンにも似ていない。
顔はレギンに似ているけどな。性格は全然だ。
「……」
お?どうしたんだ、徐に立ち上がって……姉弟の部屋に置いてあんのかな?いや、でもそれらしいものはなかったけどな。
「……」
え?何?俺の前で止まったんだけど。
オヤジ殿もママンもレインお姉ちゃんも、キョトンとしてこっち見てますけど!
「ミオ……」
「な、なぁに?」
マジで何?プレゼントは?
そんな眠そうな目で見られると、こっちも眠たくな――
「はい、プレゼント――ちゅっ」
は?……は?……はぁ?
何?どうなってんの?目の前に……クラウお姉ちゃんの顔があるんだけど。
「あらあら、おませさんね~」
「ははは、クラウはミオが大好きなんだなぁ」
「……どう?うれし?」
えっと……え?
キスされた?口に?
転生して、始めて意思と身体が統一したかも知んない。
多分、俺の顔と考え……まったく一緒だわ。
「ミオったら、顔真っ赤よ?まるで意味が分かってるみたいね~」
ママン……確かに、意味は知ってるよ。
ママンにもオヤジ殿にも、飽きる程されてるよ。
でもさ、影になって見えなかっただろ?
この子……舌入れて来たぞ!?六歳だよな!?
三歳児に何ともディープなキスをして来たんだがぁ!?
どうなってんだよ!!前世の俺を含めても、ファーストキスだったのにぃぃぃぃぃ!!




