3-7【それは今日から始まる】
◇それは今日から始まる◇
従業員の契約の為に、ミーティアが来ていた。
俺の中では、完全にそう思っていたよ。
でも……それはそれ、これはこれ。だったらしい。
ミーティアは父さんに向けて話を続ける。
何やら、今日から行うようだが……本当にいったい何なんだ?
「――資材は持って来ています。今は村の北口にありますが、運んでもよろしいですか?」
「ええ勿論、構いませんよ。それで場所は……この家の隣、でしたな?」
ミーティアの問いに、父さんは笑顔で答える。
資材?運ぶ?この家の隣?
いったい何の話をしてんのよ?……マジで。
きょとんとする俺に、隣のレイン姉さんがこそこそと耳打ちしてくれる。
「こしょこしょ……ひそひそ」
ふむふむ……なになに?
「――はっ!?」
はぁぁぁぁぁぁ!?
な、なんて?今なんて言った!?
「ごめん姉さん……ワンモア――じゃなくてもう一度お願い」
「え?うん……だから」
レイン姉さんはもう一度、俺に耳打ちをする。
いや、もうそのままでもいいのに。
それにしても、囁きがくすぐったいな。
「――ミーティアさんとジルさんが……この村に住むんだって」
うん。さっきと一緒だった。
――で、二人が?この村に、住む……?それって、移住!?
どうでもいいけどさ、レイン姉さん……昔はミーティアちゃんって呼んでたのに。
いつのまにか、さん付けになってんのな。
なんでだろう。
そして、話を終えたらしいミーティアが。
「あー、レインさん……言っちゃったんですか?」
「あれ……もしかして駄目だったの?ご、ごめんね~?」
レイン姉さんは、ミーティアに向けて両手を合わせて合掌する。
スリスリと、手を擦り……チラッとミーティアを見る。
なんだよ、そのレイン姉さんのリアクション!
可愛いなぁもうっ!!
「――で、ミーティア。この村に住むって……本当なのかい?」
「ええ。そのための資材を運んできたの、お義父さん……ルドルフ村長の許可も得たし……仕事もするからね」
「――仕事?」
ミーティアは……確かまだ、学生だよな?
【ステラダ】のお嬢様学校……現代で言えば高校だな。
「私は、一足先に卒業を許されたのよ?」
あれ?俺、もしかして顔に出てた?
それでも、先に卒業できるって……結構な待遇だな。
「す、凄いんだね……ミーティアは」
感心のつもりだった……のだが。
ジルさんが補足するように言う。
「おいおいミオ……お嬢様は、学年一の成績で卒業の優等生だぞ?勉学も運動も……それから最近は、ゆみ――」
「――ちょっとジルリーネ……いいから!そういうのは言わなくてっ。しーっ」
指を口もとに当てて、恥ずかしそうに言う。
いちいち可愛いな畜生。
それにしても、この村に住んでの仕事?
むむ……やる事あるのか?……じゃなくて、そんな簡単に引っ越しなんて、よくあの会長さんが許したなぁ。
未だに戸惑う俺を見て、ジルさんとミーティアは笑い合う。
「ふふふっ……ミオを驚かせるために、慎重になった甲斐がありましたね、お嬢様」
「そうねっ。ふふっ」
確かに驚いたけどさ。
あと、住むっていったけど……肝心の家は?
「――あ!」
ピーンと来た。資材を運ぶって言ってたな。
あれ~?も、もしかしてこの二人……家を建てるところから始める気なのかっ!?




