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3-5【生徒はほぼいません】



◇生徒はほぼいません◇


 程なくして、学校に到着した。

 ガルスとクラウ姉さんは警備という名の修行に出ているので、登校せずだ。


 結果、教室には俺とアイシア……遅れてきた妹コハクとその友達が数人。

 たったのそれだけだった。

 欠席を合わせても、九人だ。

 はい、この【豊穣の村アイズレーン】の学校の生徒数は、九人ですよ。


 最年長が、十七歳のクラウ姉さんだ。

 それから俺やアイシア、ガルスの十四歳。

 コハクたちの十歳が最年少となっている。

 十歳が五人いるだけ、まだマシか?いや、もう麻痺(まひ)してんな。


「はーい、授業始めますよー」


 先生……これは変わらず、ポロッサ・コロロ先生。

 最近、婚期を逃したと……村の井戸の所で号泣していた所を目撃してしまった。

 ごめん先生……普段明るいのに、抱えてんだろうな……色々とさ。





 授業は、基本的に最年少たちの為の物だ。

 俺なんかはもう聞いているだけだ。

 アイシアですら、もう村で勉強するレベルではない。


 村の環境はだいぶレベルアップしたが、学校は全然なのだ。

 だから、転生者であるクラウ姉さんは来ないんだろう。

 自分の身にならないと……分かっているからだ。

 当然俺もそれは分かっている、でも、アイシアがいるからな。

 せめて同じ時間を共にしないとな……って思ったんだよ。


 授業を終え、帰り(ぎわ)

 話し声を聞いてしまう。


 先生の部屋にお客だ。

 深刻な話なのか、すんげぇテンションが低い。

 だが、もう一人は聞き覚えのある声だった。

 と言うか、聞き覚えしかなかったな。


「――お?」


 父さんだ……村長である以上、学校でそういう話もあるのだろう。

 だが、ポロッサ先生と父さんの会話は、今後の子供たちに影響するものだと、俺には当然理解できる。


 だから、聞かなかった事にして……俺は外に出る。

 そこではアイシアが待っていた。


「ごめん、待たせたか?」


「ううん……待つのも楽しいからね」


「――か」


 可愛いかよ!笑顔で言ってくれちゃってさぁ!!


「え?」


「あ~いや、何でもないよ、あはは」


 今日もまた、アイシアと一緒に帰る。のだが……やはり先生の話は気になるな。


 だって……内容は、「もう限界です」だったのだ。

 教師を続けるのが……ではない。

 学校そのものが、もう限界なのだ。


 これはきっと、地球でも同じだよな。

 廃校(はいこう)ってやつなんだろう。

 俺たちはこの村で、八歳から学校に通っていた。

 だが、今のこの村の最年少は十歳、新生児は……いないのだから。


「ねぇミオ……今度ね?」


「え?うん……なに?」


 帰り道……俺とアイシアは普段のように会話をして帰路を行く。

 しかし、アイシアの口から滅多(めった)に出ない名前が出る。


「今度、ミーティアさんが来る時……私も行くけどいいよね?」


 え――っと……それはちょっとなぁ。

 俺の心が持ちそうにないのだが。


「う、う~ん。どうだろうか……僕が決められることじゃないからなぁ」


「……そっか……次はいつ来るの?」


「まだのはずだよ。あと半月はあると思う」


 ミーティアにはミーティアのターンがある、と俺は思うんだ。

 好意を抱かれている以上、もう二人共を邪険にはしない。

 なんたって、アイシアにそれを長年してきてさ……最大限に、後悔したからな。


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― 新着の感想 ―
[一言] 後悔って言うか あれは自分達が結ばれなかったからとか 婚約決めたくせに本人に言わない親のせいだと思う 何を考えていたんだろう? 自分達が愛し合ったから、子供も愛し合う…
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