2-104【家族】
◇家族◇
ドサリ――と、地面に倒れたのは、ダークエルフの騎士……ジェイルだった。
俺は、コイツを殴った血だらけの左腕を、そのまま天に突き上げた。
勝利のポーズだよ……馬鹿野郎。
「へへ……お、っと……」
だが、俺にも限界が来たようで、フラフラと足元が覚束ない。
思い出されるのは、魔力と体力は並行すべしという言葉……ジルさんの教えだったな。
その魔力が、底を尽きたんだ。
ぐらり――と、俺は後ろに倒れていく。
もう、意識朦朧だわ。
あーやばい。頭打つかもしれん。
とか思った俺だったが……なにか……柔らかいものに支えられた。
「――ミオくんっ!!」
「――ミオっ!」
抱きしめるように、俺を優しくて抱き留める二人の女性。
ミーティアと、ジルさんだ。
「――は、ははは……ジルさん、動けたんすか?」
「馬鹿者……喋るな……」
「ジルリーネ……ミオくんは」
「平気ですお嬢様。左腕は……治療が必要ですが、その他は魔力が無くなっただけです……ご安心を……――!?」
ジルさんの身体が強張る。
前方を見ているな……俺も。
「……――!う、噓だろ……?」
俺は無理矢理身体を起こし、それを見た。
それは……ジェイルだ。ジェイルが立ち上がっている。
俺の何倍もダメージを受けて、身体が穴だらけなはずなのに……内臓だってボロボロのはずだ。
「……ぐふっ……かはっ……俺は、命令を……!」
なんなんだよ、その命令をした奴は。
……そこまでして従わなければ駄目なのかよ!
「ジェイル……もうよせっ!それ以上は、マナが崩壊するぞ!」
マナ?崩壊?
魔力の事か?
「ジル、面白い男を見つけたな……まだ、子供だが……そいつなら、きっと……」
「――よ、よせっ!ジェイル……!」
な、なんだ……?
何をしようと……――
俺もジルさんもミーティアもが、固唾を飲んだ。
しかし、ジェイルは――
「がふっ――」
血反吐を吐き……ぐらり――と、今度は前方にぶっ倒れた。
動かない……まさか、し……死んだのか?
いや、俺はそこまでは……そんなつもり。
「安心しろミオ……お前と同じ、魔力が無くなったんだ。ミオの攻撃を防ぐのに、ほとんどの魔力を割いたんだよ……」
そ、そうか……死んでないなら、それでいいや。
俺だって、人殺しになる為に転生したわけじゃ……ないんだからな。
あー駄目だ……安心したら……意識が……もう……
「――ミオくん!!」
「――ミオ!」
聞こえてるよ、ちゃんと……ミーティア……ジルさん……サンキューな。
◇
家族――俺にとっての光だ。
あの影の中で、それを掴めたのは……いつも首から掛けている、お守りのお陰だ。
三歳の時に貰った誕生日プレゼント……【キール貝】を首飾りにしたものだ。
ちゃんとお守りとして機能してたよ、レイン姉さん……ありがとうな。
家族の事を、ジルさんの事を……あいつが痛めつけなかったら。
きっと俺は、あの男によって誰かのもとに連れてかれていたと思う。
失敗だよ、あんたの……俺は前世で出来なかった事を、今世で実践しただけなんだ。
ああ、そうだよ……家族は、大事にしないとな。




