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2-102【極光の天駆】



極光(きょっこう)天駆(てんく)


 俺が手を伸ばしたのは……光。

 俺にとっての光は……家族なんだ。


「――うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 何もない真っ暗な空間。

 その影の中で、俺は手を伸ばす。

 何もない場所でもあろうとも、(つか)み取ってやる!


「――貴様っ……この状況で何をっ!!(さか)しい真似はやめろっ!」


「うるっっせぇぇ!妹に手ぇ出すようなクソったれな奴に!俺を……止められるかぁぁぁぁ!!」


 初めから、持っているんだ。俺にはある、こいつは捨てたんだろ?

 前世の俺と……同じようにさ。


 だから、今世では……絶対に手離さないっ!!





 ミオくんが……影に飲み込まれて行ってしまった。


「ミ、ミオ……くん……どう、しよ…う」


 私は歩き出そうとするが、身体が震えて動けない。

 ちらりと、涙目の視界に(うつ)るジルリーネが、()ってでもその位置に行こうとしていて、私は無力なんだと(さと)った。


 何も出来ない、何もしてあげられない。

 理由も分からず、いきなり襲われて……それでも、ジルリーネの為に怒ってくれたミオくん。


「……ミオ……影には……光をっ……」


「ジルリーネ……」


 自分の兄であるジェイルに痛めつけられ、ボロボロのジルリーネ。

 向かう先の影は、陽炎(かげろう)のように揺らめいて……


「え……?」


 聞こえる……彼の声だ。

 叫んでいる……(うった)えている。

 誰に?あの男に……自分自身に。


 その時だった。

 彼が沈んでいった遊具の影が――()ぜたのは。


 カッ――!!と、まばゆい光は影から伸びていた。


「な――なにっ……?」


 不思議(ふしぎ)だった。

 こんなにも不可思議(ふかしぎ)な現象を目の当たりにして……怖くてもおかしくない筈なのに。

 怖さどころか……(あたた)かさを感じたの。

 本当に、(あたた)かくて(あたた)かくて……恐怖とは別の涙が出そうだった。


「――ぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおっっ!!」


 小さい絶叫は、徐々に大きくなり。

 やがて、天に上る光柱と共に……現れたんだ。


「おらあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


「――ぐっ……!!」


 ――影から飛び出て来たっ!ミオくん!!そして騎士の男、ジェイル。

 地面に叩きつけられたのは、ジェイルだけだ……それじゃあ、ミオくんは!?


「――え?」


 私が見上げるミオくんが、浮いて……いる?

 両手と両足に、虹のような衣を(まと)い……その衣は少しずつ透過していき。

 やがて消えた。しかしミオくんは……


「浮いた……まま?」


 浮いているんだ。

 空に、天に……それこそ、天使のように。


「くっ……この力は……っ!!」


 ジェイルもミオくんを見上げる。

 どうやら彼も混乱しているようだった。


「終わりにしようぜ……このイケメン騎士さんよぉっ!!」


 ミオくんは、一言そう言うと……ジェイルに向かって――天を、駆けたんだ。


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