2-102【極光の天駆】
◇極光の天駆◇
俺が手を伸ばしたのは……光。
俺にとっての光は……家族なんだ。
「――うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
何もない真っ暗な空間。
その影の中で、俺は手を伸ばす。
何もない場所でもあろうとも、掴み取ってやる!
「――貴様っ……この状況で何をっ!!賢しい真似はやめろっ!」
「うるっっせぇぇ!妹に手ぇ出すようなクソったれな奴に!俺を……止められるかぁぁぁぁ!!」
初めから、持っているんだ。俺にはある、こいつは捨てたんだろ?
前世の俺と……同じようにさ。
だから、今世では……絶対に手離さないっ!!
◇
ミオくんが……影に飲み込まれて行ってしまった。
「ミ、ミオ……くん……どう、しよ…う」
私は歩き出そうとするが、身体が震えて動けない。
ちらりと、涙目の視界に映るジルリーネが、這ってでもその位置に行こうとしていて、私は無力なんだと悟った。
何も出来ない、何もしてあげられない。
理由も分からず、いきなり襲われて……それでも、ジルリーネの為に怒ってくれたミオくん。
「……ミオ……影には……光をっ……」
「ジルリーネ……」
自分の兄であるジェイルに痛めつけられ、ボロボロのジルリーネ。
向かう先の影は、陽炎のように揺らめいて……
「え……?」
聞こえる……彼の声だ。
叫んでいる……訴えている。
誰に?あの男に……自分自身に。
その時だった。
彼が沈んでいった遊具の影が――爆ぜたのは。
カッ――!!と、まばゆい光は影から伸びていた。
「な――なにっ……?」
不思議だった。
こんなにも不可思議な現象を目の当たりにして……怖くてもおかしくない筈なのに。
怖さどころか……暖かさを感じたの。
本当に、暖かくて暖かくて……恐怖とは別の涙が出そうだった。
「――ぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおっっ!!」
小さい絶叫は、徐々に大きくなり。
やがて、天に上る光柱と共に……現れたんだ。
「おらあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「――ぐっ……!!」
――影から飛び出て来たっ!ミオくん!!そして騎士の男、ジェイル。
地面に叩きつけられたのは、ジェイルだけだ……それじゃあ、ミオくんは!?
「――え?」
私が見上げるミオくんが、浮いて……いる?
両手と両足に、虹のような衣を纏い……その衣は少しずつ透過していき。
やがて消えた。しかしミオくんは……
「浮いた……まま?」
浮いているんだ。
空に、天に……それこそ、天使のように。
「くっ……この力は……っ!!」
ジェイルもミオくんを見上げる。
どうやら彼も混乱しているようだった。
「終わりにしようぜ……このイケメン騎士さんよぉっ!!」
ミオくんは、一言そう言うと……ジェイルに向かって――天を、駆けたんだ。




