表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

188/1304

2-100【覚醒3】



◇覚醒3◇


 俺を敵だって……?バカ言うなよ、俺は初めからお前を敵としか見てねぇよ!

 理由はどうであれ、自分の家族に手を出すような男……俺は許すつもりはないんだからなっ!!


 ああ……もう分かってるだろ?

 俺は、前世で出来なかった事に直面して……怒っているんだ。

 転生して十二年、ここまでキレた事はない。

 なら何故(なぜ)、俺がここまで怒っているかと言うと。


 俺は……前世で家族を(ないがし)ろにしたんだ。

 酒浸(さけびた)りで、家族に暴力を振るう父。

 家事も育児もせず、ギャンブルに逃避した母。

 優秀なくせに、他人を小馬鹿にする弟。


 そんな家族を……俺は前世で捨てたんだ。

 だから死んだ時……転生するなら、それでもいいと簡単に受け入れたんだ。

 別に、毛嫌いするほど仲違いをしたわけじゃない……でも、自分から家族と交流をする事は無かった。


 今世は……運がよかったんだ。

 子供好きの両親に、弟思いの姉二人……可愛い妹。

 転生して出来た新しい家族は、まさしく俺にとっての理想だったんだ。


 だから……だからこそ。

 前世で家族を捨てた俺だからこそ……目の前にいるコイツが許せない!

 関係性は知らないよ。でも、妹であるジルさんを……あそこまでボロボロにした。

 血だらけで、美しい銀髪は泥塗(どろまみ)れだ。


「……許さねぇ……」


 俺の緑色の瞳に(うつ)るジルさんは、今も俺やミーティアを気にしている。

 その視線が、逃げろと言っている。

 だけど……だけど!!


「――ふん。お前に許してもらう必要は無いな……少年。さぁ、黙ってこちらに来い」


「なんだって?……その状況でまだそんな事を言うのかよっ!」


 ジェイルの腕には、超硬化(ちょうこうか)させた木の(むち)が巻きついている。

 根元は、シーソーだった地面だ。

 腕の部分には影もない、どうやって逃れるつもりだよっ!


「確かにお前の魔法は……子供とは思えない精度に予想外の使い方、更には見たことのない様な種類の力……見事だ」


「へっ……そりゃどうもっ!だからって、俺はアンタを……」


「――だが、それだけだ」


 その一言を口にした瞬間……ジェイルが消えた。


「――っ!な……き……」


 消えた!?ど、何処(どこ)に……なんで!

 木の(むち)はそのままの形で残っている。

 だが、ジェイルの姿は一瞬で消え去った。


「くそっ……何処(どこ)にっ!」


 周りを見渡すが、どこにもジェイルの姿はない。

 しかし思い出す……ジルさんの言葉だ。


 「影」だ。


「――下かよっっ!!」


 ほんの一瞬の気配を察知(さっち)して……俺は思い切り跳躍(ちょうやく)した。

 だが……一足遅かった。


 浮かんだ俺の足を目掛けて、真下の俺の影から伸びてくる……腕。


「うわっ……な……!!」


 ガシッ――!


 間に合わなかった!くそ……(つか)まれた!

 影に――引きずり込まれる!!


「ミオくん!!」

「……ミオ……っ」


 くそっ……影には……【無限(むげん)】が使えない。

 俺は必死に足搔(あがき)き、ジェイルの腕を振り払おうとしたが、そこは大人と子供の力の差……(かな)う訳はなかったんだ。


「……こ……の……――っ」


 俺は……影に飲み込まれていくように、その姿を消した。

 残されたのは、瀕死のジルさんと……今にも泣きだしそうなミーティアだけだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ