2-82【イエシアス襲来2】
◇イエシアス襲来2◇
本音を見せない女神に、いったい私はなにを言えばいいのだろう。
私は本音……つまり毒を吐いている事の方が多いけれど、この女神は常に余裕だ。ムカつくほどに。
「で、目的の……なんだっけ?」
「――チートスキル全持ちのやばいヤツねぇ」
「……」
そんな奴、本当にいるの?
「――更には武器も持ってるわ。星那の【クラウソラス】のようなものをね」
それはやばいわね。あと、前世の名前呼ぶなっての。何回言わせる訳?
能力の事は、そうね……私は持っていないからよく分からないけれど。
武器の事ならある程度は分かる。
「【クラウソラス】くらいの武器を全部って……意味あるの?」
「状況によって戦法を変えられるし、その武器の追加効果が常に発生するのよ?しかも、星那にも分かるでしょう?特典武器は、持っているだけで使用方法が分かるのよ……」
確かに、私も初めから【クラウソラス】の使い方を知っていた。
しかも【クラウソラス】には、光の魔法が使えると言う追加能力?があったりするし。
「……そう言えば、何人いるの?転生者って」
そう考えれば、私以外の転生者が気になる。
この村から出た事がないから、どれくらいの転生者がいるかなんて考えもしなかった。
「転生者?……そうねぇ、この世界だけで、千五百人くらいかしら?……まったく、面倒臭いわよねぇ?」
千五百?それだけの転生者がいるのに、私は一度も会ってないけど。
でも、なんでそんなことになっているのかな、神なら簡単に調べられるんじゃないの?
「……もう結構な範囲を調べたのだけどね~」
それでも見つからないのならそんな奴、初めからいないんじゃないの?
そうだ、ちょっと……カマかけてみようか。
「――勘違いなんじゃないの?ミスをした……誰だっけ?」
「……言ってないわよぉ?誰がやらかしたかなんて……うふふ。引っ掛けようとしてもダーメ♪」
「――ちっ」
そう、そもそも私は知らない。
そのチート能力全持ちの転生者……そしてそれをやらかした女神を。
正直、やらかしそうな女神には心当たりしかないけど。
私を転生させた女神――【女神アイズレーン】。
まさか、この村の名前にまでなった神だとは思わな――思えないけど。
「そういえば、弟君は……?いないわね?」
「――は?」
何でミオ?以前見せたのも、確かミオが三歳の時だけよね?
イエシアスが来た時は極力会わせないようにしてたから、気にかける理由が分からないわ。
たった一度見ただけ……それだけで、どうしてミオを探す必要があるのよ。
「いないわよ。出かけてる」
「あらそう。残念だわ……タイミングが悪かったわねぇ」
イエシアス自体は、今のようにたま~に来るけど、ミオには会っていないし。
ミオが気付く訳ないじゃない……あの子は普通の人間なんだから。
「まぁいいわ。アレの確認も出来たし……」
「は?」
「それじゃあ、また来るわねぇ……」
「あ、ちょっ……」
私が感じた一瞬の疑問に答える事は無く、白い手をひらひらさせて、イエシアスは去っていく。少し歩き…霞のように消えていった。
「本当に……何をしに来たのよ?」
それにしても、千五百人……か。
それだけの転生者が存在していると言うのに、私はこんな所で何をしているんだろう。こんな……ド田舎で。




