2-79【街が怖いレイン】
◇街が怖いレイン◇
レイン姉さんに会えた。
たったの数日振りだけど、途轍もなく久しぶりな感じがしたよ。
「――レ、レイン姉さん……苦しいからっ、往来の場所だからっ!」
「あ――ご、ごめんね……嬉しくて」
可愛いんだよな、うちの姉さん。
おっとりしていて優しくて、ザ・お姉ちゃんっ感じ。
ハッキリ言おう。前世での俺の好みのタイプだ。どストライク。
だが残念なことに、血縁関係なので諦めざるえないのだが。
「――それよりもレイン、一人でここに来たのか?」
馬を括り終えたジルさんが、何の気なしに言う。
それはそうと、ジルさんはナチュラルに名前呼びするね……まぁ、最年長だし当然か。格別気にもならないしいいんだけど。
しかし、レイン姉さんはゆっくりと首を振り。
「いいえ……?ミーティアちゃんがいますよ?」
「「え?」」
俺とジルさんは同じ反応だった。
どこに?という事だ。
だって見えないからな。
「……う~ん……あれぇ?」
首を傾げられてもねぇ……あ。もしかして、置いてきた?
俺の視線に気付いたのか、それとも考えに気付いたのか、レイン姉さんは。
「――ふ、ふわぁ~ん!ミオ~~、そんな目でお姉ちゃんを見ないで~!」
え!?俺、どんな目をしてた!?
そんなつもりなかったんだけどぉ!?
「ミ、ミオよ……実の姉にそのような目ができるとは……将来が末恐ろしいぞ」
だからどんな顔だって!?
怖えよ、不安なんだけど!!
「レ、レイン姉さん……僕そんな目なんてしてないよ?ほら、笑顔笑顔っ!」
どんな目か知らないが、笑顔だ笑顔!
笑え~。笑え~。
「……ぐすっ……お姉ちゃんを信じてくれる?」
「うん!信じるよ、あ、もう信じたっ!いや、初めから信じてたさっ!!」
「……それなら、いいんだけど……」
あれれ……レイン姉さん、なんか情緒おかしくないか?
こんなんだったっけ?
まるで迷子の子供のような――
「――いたっ!レインさん……――ってジルリーネに、ミオくん!?」
おや、本当にミーティアさんがいた。
と、言うよりも……今来た感がすげぇけどな。
「いた」って言ったし。
「ミーティアさん、お久し……でもないですけど、こんにちは!」
「う、うん!ミオくん……ようこそ【ステラダ】へ。歓迎するね!ジルリーネも、ご苦労様っ」
「――はい、お嬢様。ただいま戻りました」
深々と頭を下げるジルさん。
なんだか、やっと安心できたって感じだな。
「それにしても、レインさん……もう何度目ですか?迷子になるの……」
やっぱりじゃん。
「――うっ……だ、だってぇ……道が全然覚えられなくてぇ」
悲報。レイン姉さん方向音痴。
そうだったのか……ド田舎の狭い村じゃ迷子なんてならないもんな。
「街が怖いって言うのに、何故かズンズン進んで行くし……いつの間にかいないし……た、大変でしたよ……」
ご苦労様です。ミーティアさん。
と言うか、レイン姉さんが無事でよかったです。
本当にありがとうございました。
言葉にすることなく、俺は頭が上がらない思いで、ミーティアさんにお辞儀をしたのだった。




