1-12【お前はもう来るなっ!!】
◇お前はもう来るなっ!!◇
悪い噂はあっと言う間に広がっていく。
広められたレギンの噂を、こんなド田舎の狭い村では信じる者が大半だった。
狭い村の中、娯楽のない退屈な世界だ。
それならば他人の噂話でもして、退屈を紛らわそうと言うのだろう。
しかしそれは、当事者からすれば地獄だ。
ありもしない噂は、尾ひれを何枚も付けて泳いでいった。
長女のレインも、友達と遊べなくなった。
子供たちは関係ないだろうに、世間体とは残酷だ。
そんな中、赤さんの俺は暢気なもので……毎日乳を飲んですくすくだ。
しかし、味が若干変わった感は否めない。
多分、精神的にヤバい……レギンの心が、結構なダメージを受けている。
日に日にやつれているのが目に見えていて、こちらも心が痛い。
そんな時だった。
「おやおや、授乳中でしたか……」
「――っ!」
来やがった。クソったれイケメン。
お前はもう来んじゃねぇよっ!!
お前のせいで、ママンが辛いだろうがっ!!
「ひ、非常識ではありませんか?いきなり上がって来るなんて……オイジーさん」
その通りだ!言ってやれママン!!
そしてその大きな乳房を隠して!!――って、俺がしゃぶりついてるからじゃねーかぁ!!
「声は掛けたんですけどねぇ……しかし、酷いものですね……ルドルフは」
オイジーは部屋で乾かしている洗濯物をジロジロと見ている。
見んじゃねぇよ!誰のせいで外で干せなくなったと思ってんだっ!!
「で、出て行ってくれませんか?……もう来ないでくださいって、この前言いましたよねっ!?」
この前?そんな事があったのか……くそ、俺が寝てた時なのか?それにしても、したり顔でやって来るな……コイツ。
もしかして、そろそろ落とせるとか思ってんじゃねぇだろうなぁ!?
そんな事させる訳ねぇだろっ!赤ん坊の前で堕とされる母親とか、どんな同人展開だ!見たくねぇよそんなの!だから断固として邪魔するからな!思い通りに行くと思うんじゃねぇぞ!!
「ばぶ~」
「どれ……」
「――あ、ちょっと……」
な!!コイツ、俺を抱く気か!?あ、やめろぉぉ!
「ほ~ら、たかいたか~い!」
「――きゃっきゃ!」
なんじゃぁぁぁ!!嫌なのに笑っちまう!!
上に持ち上げられた浮遊感で、声が出ちまうよぉぉ!!
やめろ!何度もたかいたかいをすなっ!!
「きゃっきゃぁ!うぁう~」
「ミオ……」
違うんだ!ママン違うんだよ!信じてくれ!!決してコイツが好きで笑ってるんじゃないから!そんな悲しい顔しないでくれ!そんな、「この人には笑うのね」みたいな顔はやめてくれ!
確かに、ルドルフで笑った記憶が無いのが悲しいが、違うからぁぁぁぁ!!




