2-60【豊穣の村2】
◇豊穣の村2◇
『あーはっはっはっはっは!!ざまぁないわね。あたしを馬鹿にした罰よ!』
なんだよ。夢にまで出てくんの?お前。
あぁそっか、気を失う前に……お前を思い出したんだよ。
お前みたいなポンコツをしたんだなぁってさ。
『――はぁ?ふざけんるじゃないわよ。一緒にしないでよねっ』
いやいや、一緒だろ?
寸前でやらかすとかさ……お前やりそうじゃん。アイズ。
『お、名前覚えてたのね……偉いじゃない』
流石にな。で、今度はなんなんだよ。
夢に出て来たって事は、また前みたいにジャミングがどうとか言うのか?
言っておくけど、俺は何もしてないぞ?
『――そうね。あんたはね!』
俺は?……じゃあ、誰がやらかしたんだよ?
『え、えっと……それはまぁいいじゃない!』
お前なのかよ……まったく、今度は何をやらかしたんだ?
『今度じゃない!これは前の……あっ』
結局やらかしてんじゃないか。
『とにかく……黙って聞きなさい!あんたに、仕方がないからヒントをあげる!』
ヒント?なんのだよ。
『……そんなの――能力に決まってるじゃない』
――は?
◇
「――は?」
天井が見える。
目を、覚ましちまったらしい……おいおいおいっ!めちゃくちゃいい所で!
何やってんだよ俺は!!
「……でも、なんだ?この感じ……感覚」
もしかして、もうヒントを聞いてるのか?
やべぇ、忘れてんのか?俺……
身体の違和感。奥底から感じる……何か。
その何かは分からない。分からないんだが……確かにある。
胸に、感じるんだ。
「……あ、朝?」
気付けば、ここは俺の部屋……スクルーズ家の子供部屋だった。
ボロイ窓から差す光で、時間帯も何となく把握。
「――昼じゃないかっ!」
そう、まさに昼だ。
今日はエルフの女騎士、ジルリーネさんが馬車で戻ってくるはずの日。
皆が居ないのは……集会所に行ったという事か?
まさか……ミーティアさん、もう帰っちまったのか……?
「やばいっ……」
俺は急いで着替えて、家を出る。
昨日のような疲労感も倦怠感も一切ない。
健康そのものだ。身体も、やけに軽い。なんでだ?
「まだ。帰ってはいないみたいだな……」
急いで集会所に駆け付けると、建物の前に馬車があった。
たった三人を迎えに来たとしては、大きいような気もするが。
ど、どうするこれ……入ってもいいものか?
そんな俺が、わけのわからない葛藤をしていると……扉が開き。
「――あ、ミオにいちゃんっ!」
「コ、コハク……?」
扉から、ひょこッ――と顔を出す、スクルーズ家の癒し枠。
そして更に続いて。
「おお、ミオか……どうやら起きた様ですよ、お嬢様」
その綺麗な銀髪……特徴のある長い耳。
ジルリーネさんだ。
「……ジルリーネさんっ、その……もしかして、も、もう帰るんですかっ!?」
「ん?どうしたのだ?そんなに焦って。まずは中に入るといい……さぁ」
「は、はい……」
手招きするエルフのお姉さん。
寝起きで戸惑う俺は、その言葉に素直に従うしかなかったんだ。




