表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

144/1304

2-56【夜の先行商談】



◇夜の先行商談◇


 その日の夜、スクルーズ家にミーティアさんを(まね)いた。

 ミーティアさん自身は昨日、村長の家で身分を話しているから、父さんだって頭の片隅では分かっている筈だ。た、多分……


「お邪魔いたします……」


「いらっしゃい……ミーティアさん、だったかしら」


 礼儀よく頭を下げるミーティアさんに、レギン母さんが言う。

 それに対して、ミーティアさんは笑顔で返した。


「はい、奥様。私はミーティア・クロスヴァーデンと申します……隣国【リードンセルク王国】で商会……【クロスヴァーデン商会】の長をしている、ダンドルフ・クロスヴァーデンの娘です……」


「あらあら、これはご丁寧に……」


 綺麗に頭を下げるミーティアさんに、レギン母さんも負けじとお辞儀(じぎ)をする。

 これあれだ、日本人あるあるだな……二人とも全然日本人じゃねぇけど。


「……ぷっ……くく……」


 あー、クラウ姉さんも同じ事考えてんな。

 肩を震わせて我慢してる……俺は顔に出さないけどさ。


「……今日はお招き、感謝致します……ルドルフ様は」


「こちらですよ、ミーティアさん」


 父さんが来た。おっ……くそ似合ってなかった(ひげ)を剃ったのか。

 偉いじゃないか、父さん。


「お邪魔いたします……無理を言ってお時間を頂戴しまして、申し訳ございません。今日は、取引の御相談に参りました……」


 やっぱりか……でも、本当にいいのか?

 親父さん、国の大商人なんだろ?娘が勝手にそんな事を言って、破談にでもなったら……俺等からの信用も、父親からの信頼もなくす可能性があるぞ?


「ええ。息子から話は聞き及んでおりますよ……お聞かせいただきたい」


「……」

(えらくクールじゃないか父さん。どうした?アボカド食っておかしくなった?)


「はい、では……失礼いたします」


 ミーティアさん、その立ち振る舞いが完全にどこかの令嬢なんだが。

 奴隷(どれい)として出会った時の弱々しい雰囲気(ふんいき)もないし、別人みたいだ。





 リビングでは、父さんとミーティアさんが対面。

 俺がミーティアさんの隣に座る形で、父さんは一人だ。

 (せま)い台所には、母さんとクラウ姉さんが。

 子供部屋ではレイン姉さんが、コハクを見ててくれている。


率直(そっちょく)に申し上げますと……【スクルーズロクッサ農園】のお野菜……大変すばらしいと思います。私は……奴隷(どれい)として捕まっていた身ですが、商人の娘として……素直に感動しました……」


「それはそれは……どうも」


 よし。出だしまずはいいな。


「個人的には……【クロスヴァーデン商会】と専属契約をして、国外に売りに出すべきと考えています」


「そ、そこまでですか……ですが、会長さん……ミーティアさんのお父上の事は……どうするのですかな?あなたは娘さんではあるのでしょうが、商会のお仕事をなさっているのですか?」


 父さんらしからぬ発言!意外としっかりしてんな……何度も(だま)された経験から来てんのか?もしかして。


「そう、ですね。私は若輩者(じゃくはいもの)です……ですが、目利きは持っていると自負しております。決して……スクルーズ様の損害になる事はありません……」


「……保証は?」


 そりゃそうだ。実は父さん、昔に一度、畑を(うば)われそうになったことがある。

 確か、俺が五歳の時だったから、相当前だな。


「……ありません」


 それじゃ話にならないのが、商談ってやつだ。

 言葉は全部用意していると思ったけど、まだこう言う所もあるのか……いや、これが普通か、十五歳なんだからな。

 ミーティアさんは少し(うつむ)きがちになるも、意を決すように言う。


「――ですが……自信はあります」


 自信?自分の目利きにか?

 大した自信だけど……それじゃあ理由にならないんだよ。

 これは、ミーティアさんにだって分かっている筈だ。

 どうする、ここから……話は始まったばかりだぞ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] う~ん 父親が来る前に話を決めようとする意味がわからない……………手柄の独占?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ