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1-11【出てったってさ】

※NTRではありません。



◇出てったってさ◇


 「お父さんは、少し帰ってこないわ」……その夜、レギンが子供たちに言ったのは、そう言う事だった。

 出て行ったんだ。あのオヤジ。

 これは俺の勝手な想像だけど、きっとママンに言い負かされたんだろう。

 それにしても、逃げ出すか普通。


 もしこれで(うわさ)のリュナって娘の所に行ってみろ、俺は一生軽蔑(けいべつ)するからな。


「お父さん、帰ってこないの?」


 長女のレインは、どちらにも気を遣えるとてもいい子だ。

 次女のクラウは、少し寡黙(かもく)かな?まだ三歳だし、分かんないけどさ。


「……」


 レギンは答えられない。

 自分でも自信が無いのだろう。

 確信が持てない事を、子供には言えない。いいお母さんだよ。

 無責任に「大丈夫」「心配ない」という奴よりも信用ができるさ。


 でも多分、子供はそう言われたいんだろうけどさ……

 安心出来る言葉を貰えるだけで、子供の心は落ち着くからな。


「そっか……」


 理解したのか?五歳の女の子が、夫婦間のトラブルを?

 いや……我慢(がまん)だなコレ。やせ我慢(がまん)だ。

 涙目で母親を見つめる大きな目には、今にも(こぼ)れそうなものが光っている。蠟燭(ろうそく)で照らされるその表情は、父親が居なくなったと言う事実を受け止めているように見えた。


 次女のクラウは、無言でレギンを見つめているが、その顔は暗い。

 やはり三歳でも分かるものは分かるんだな。そんな二人を、レギンは優しく抱きしめる。


「ごめんね……」


 俺は床で寝てるよ。大人しくさ。

 もしかしたら、戦犯(せんぱん)かもしれんしな……言うなよ。自分でも分かってるんだから。

 だから、何とかしないとな……赤さんなりにさ。





 あの日からさ、もう……ひと月だってさ。

 父親、ルドルフ・スクルーズが出て行って、ひと月だ。

 今から俺が言う事、(おどろ)くなよ?

 まぁ俺は(おどろ)いた……って言うよりは、(あき)れに近いかな。


 ママンに抱っこされながら散歩(さんぽ)をしているとさ……近所の人たちが(うわさ)してるんだよ。こそこそとだけど、聞こえるようにあからさまにさ。

 ルドルフの(うわさ)だと思うだろ?違うんだよ。

 村に出回っている(うわさ)は――レギンのものだった。


 若い男にうつつを抜かして、夫を裏切ったビッチ女。

 分かりやすいように言葉をチョイスしたのは俺だけど。


 そう……悪く言われているのは、母レギンだ。

 産後すぐに浮気を繰り返し、愛想(あいそう)をつかしてルドルフは出て行ってしまった。

 そんな(うわさ)の出所なんて……狭い村の中だ、すぐに分かる。


 オイジーの野郎、ずっと伏線張ってやがったんだ。

 毎日のように、ルドルフが仕事で居なくなってからやって来ては、甲斐甲斐(かいがい)しく人妻の世話を焼く。

 村長の息子であり、顔もいいイケメン。

 そんな好青年が、美人でスタイルの神ってる三人の子持ちの人妻のもとに通っているのを見たら、誰だって錯覚(さっかく)するだろう。

 オイジーのクソったれは、それを狙ったんだよ……レギンが悪く言われて、それを自分が助けてやれるような展開をさ。


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