2-39【クラウVSジルリーネ3】
◇クラウVSジルリーネ3◇
私、クラウとジルリーネと呼ばれたエルフは、お互いに剣を構える。
相手は鎧をまとった兵士……いや、騎士だろう。
武器は刀剣系のロングソード……種類で言えばサーベル、なのかな?
一方で私の剣は魔力の塊である光の剣だ……これで防御は出来ないから、避けるのみだ。
「……ねぇ、話を聞いて――」
「誘拐犯の話など、聞く耳持たないな……」
そんなに立派な耳をして!!
ピクリと揺れる長耳に、私は腹が立った。
「それなら!無理やりにでも聞いてもらうっ!!」
「ならば!わたしはお前を倒して……お嬢様を救うっ!!」
「お嬢様!?誰よそれっ!」
だから、まずは説明を先にしなさいよ!
剣をしまえぇぇぇぇ!!
「――参るっ!!」
「……こ、このっ!!」
聞く耳を持たない人に、何を言っても無駄な事は知っている。
会話は諦めるしかない。
先手はエルフの女騎士……ジルリーネだった。
そのスピードはとてもじゃないけど、目で追うのがやっとだった。
「は、速いっ……!」
「――はぁぁぁぁ!!」
長身ながら姿勢が低く、地を這う動物のようだった。
鎧を着ていてそこまで動けるの!?
しかし、この程度ならまだ私でも追える。
「ちっ」
私は一歩後ろに足を引き、反動を付けられるように力を籠める。
軸足を基準に、思い切り【クラウソラス】を振り抜く。
ブン――ッ!!
「――!?……なっ!」
寸でで避けられた!?紙一重!?
だけど……ギリギリまで引き付けられてる。
「――やばっ」
剣を空振って無防備になった私に、ジルリーネはサーベルを振るう。
「はっ!!」
狙いは……肩?
手加減していると言っているようなもの――ふざけてる!!
「このっ」
私は空振りの反動を生かして、軸足の反対を跳ね上げた。
すると、私の身体は簡単に宙に跳び、身体を回転させた。
宙で剣を振り抜く。
狙いは腕よ!痺れさせて剣を持てなくしてやるわっ!
ブン――!!
くっ……ここまで引き付けても避けるの!?
「……くぅっ!!」
ジルリーネは大きな身体を仰け反らせて、私の宙からの一閃を避ける。
そして、先程の私と同じ要領で私を蹴って来た。
「このっ!」
なら、私にだって考えがある!
【クラウソラス】で防御するふりをして……そのままダメージを与える!
貫通して私も蹴りを受けるだろうけど、ダメージを考えれば相手が上でしょ!
しかし、そんな私の考えを読んだのか。
ジルリーネは……途中で足をピタリと止めたのだ。
「――はぁっ!!」
噓でしょ……?
ジルリーネは再度反転をし、私が持っている【クラウソラス】に当たらない様に、腕に狙いを変えて来た。
ドガッ――!
「――痛っ!!」
豪快に吹き飛ぶ。
それでも何とか宙で回転し、着地。
ザザザ――と、土煙が舞った。
「いった……いわねっ」
直ぐに【クラウソラス】をジルリーネに向けるが……腕が痛い。
それはもう相当痛いわよ、泣きそうだわ。
「ほぅ、やるではないか……少女」
「……」
何も言えない。
もう私も気付いている……私とこの女では、レベルが違うと。
戦闘能力はもとより、経験も知識も、何よりセンスが違う。
それにこの女……【クラウソラス】の危険性を鋭く感知してるんだ。
だから、咄嗟の判断で受けないようにしたんだ。
「――その剣、魔法剣のようだが、まさかこんな辺境にもいるのだな……正直言って驚いた」
サラッとディスるじゃない。
真面目そうな……いや、堅物かな。
「なら、少しは話を聞く気になったかしら?」
「ふむ……そうだな、話は聞こう……だが、もう少し――遊ぼうじゃないか」
ジルリーネはにこりと笑う。
そんな笑顔で物騒な事は言わないで欲しいものね。
まぁでも、私だってこのまま終わるつもりないし……せめて絶対に、一撃くらい入れてやる――だから。
「……なら、後悔させるからっ!」
「ふっ、面白い……来なさい、人間の少女」
私は【クラウソラス】を再度構え直し、考える。
やはり、今の私には――物理攻撃が必要だ……と。




