2-38【クラウVSジルリーネ2】+用語その2
◇クラウVSジルリーネ2◇
村長は……いったい何を言いたいのだろうか。
警備団が大変?今のところは、大変も何も、そもそもする事が無いのだけど?
「私が全力を出せば、男たちは逃げて行きます。相手をしてくれるのは、弟のミオと……その友達のガルスくんだけです」
「……ふぅむ」
「?」
何が言いたいのかしら。
村長は髭を擦りながら、パパを見る。
パパはパパで、分かっているようにそれに頷いている。
ねぇ、要領よく教えてよ。
「……うむ、実はなクラウ」
そうして、村長が何かを言おうとした瞬間。
「――そ、村長!!」
バタン――!!と扉を開けて、村の男が入って来たのだ。
今、話し中なんですけどねぇっ!
「ど、どうしたモルソン……何かあったのか?」
この人はモルソン・ゾロサホ。
村の北側に住む、一人暮らしのおじさん。
本当に、普通のおじさん。
「――リ、【リードンセルク王国】の兵士がやってきて……ど、奴隷を返せと叫んでいますっ!」
「な、なんだと……!」
「……」
くっ……面倒臭いことになりそうだわ。
誰よ、こんなこと招いたの――って思ったのだけれど……よくよく考えたら、それはもしかしたら私かも知れない……と、心の中で思うのだった。
◇
私と村長、そしてパパが村の北側入口行くと、そこには鎧をまとった女がいた。
モルソンさんは、家に戻った……まぁ関わり合いになりたくないんでしょうね。
「……女性?」
銀色のキラキラと輝く長髪のロングポニーテール。
鎧の隙間からは白い肌が見えていた。
立ち姿が物凄く綺麗で……言ってしまえば、素人ではないと感じた。
でも、あれが兵士?それにしては豪勢じゃない……?
兵士……一般的に言う兵士と言うには、装備が豪華……俗に言う騎士ではないかしら。
あ、もしかして……この村の人には区別ができてないの?
「――来たか……わたしは!【リューズ騎士団】所属……自由騎士ジルリーネだっ!!【リードンセルク王国】にて起きた、拉致事件を追っている者だ!」
拉致事件?……もしかして、あの奴隷たちの事?
そうだとしたら、誤解してるわ。私とミオは――助けたんだから!
「ほむ、これはこれは……騎士殿でしたか……」
「――其方はこの村の村長か。では大人しく、奴隷にされた三人を、返還してもらおう……」
そう言って、騎士は腰の剣をシャラリ――と抜いた。
なっ!?剣を抜いた!?
「そ――」
パパが村長を庇って前に出ようとした。
が……その前に。
「――下がって!パパ、村長も」
私が前に出てしまった。
本能と言うべきか……咄嗟だった。
「……子供だと?」
あ――?今、子供って言った?
って言うか、何よその耳……コスプレかなんか?
なんだっけ……エルフ?だっけ?
私は詳しくはないけど、確かそんな感じの事を聞いた事はある。
確か……エッチな攻撃に弱い――って!!そんなわけないでしょっ!
「……」
「……っ」
駄目だ。このままでは、戦闘は避けられない。
じりじりと距離を詰めてくる、ジルリーネとか言う女騎士。
私が説明をするしかない。
パパは頼りないし、村長はこの女の行動の速さについて行けないわっ。
だから……私がやるしかない!
「――【クラウソラス】っ!」
「――なるほど、剣士だったか。ならば子供とは言えないな……剣で、語るのみだっ!!」
女騎士は手に持ったサーベルを私に向ける。
な、なんなのよっ!初めから戦う気だったんでしょ!?
自衛とは言え……こうして、私とこの人の戦いが始まってしまったのだ。
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・【澪から始まる】用語その2
【クラウソラス】。主人公ミオの二番目の姉、クラウの使う光の剣。
転生者の特典として貰った魔法の剣であり、剣身も柄も実態を持たない。
現状、精神や魔法を斬る事に特化しており、外傷を与えることは出来ないのだが、その分死因の特定を困難にさせる事ができる。
例えば、頭部を斬れば脳にダメージを、胸を斬れば心臓にダメージを与える事になる。腕や足を斬れば、痺れを与えたり、感覚を無くさせる事が出来る。
魔力によってその光力を自在に変える事が出来、出力によっては光の刀身が伸びたりする。
使い方によっては、鞭のように撓り、槍のように伸びるが、現在のクラウにはそこまでの応用は出来ないらしい。
派生スキルとして光魔法の使用を可能にしており、閃光や治癒を行える。




